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U-20日本代表に先制点もたらした坂本一彩、台頭のライバルFWは意識も…持ち味生かす「ずっと狙っていた」千金弾

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FW坂本一彩(岡山)

「自分がスタートって聞いたときは正直ビックリした」

 U-20日本代表FW坂本一彩(ファジアーノ岡山)は、最も大事な準々決勝で先発FWに指名されたときのことを、そう振り返る。

「絶対クマ(FW熊田直紀)がトップに入って、自分は途中からなんだろうなって感じだった」と率直に語りつつ、「それを聞いてモチベーションは上がったし、『やったろう!』という気持ちは強くなっていました」

 そもそも日本にとっての開幕戦でも先発FWは坂本だった。このときは「気持ちは入っていたんですが」と言うものの、実際は空回りする部分も多く、チーム全体が機能しなかったこともあって「チャンスはいっぱいあるのに決め切れなかった」(坂本)。続くキルギス戦は途中交代から1点を決めたものの、決定機を外すシーンもあり、本人の表情は必ずしも冴えなかった。

 その間にポジションを争う熊田は得点を重ねて評価を上げていく。思うところがなかったと言えば、ウソになるだろう。

「クマは今大会でもう4得点。それに負けないように、クマより点を取りたいって気持ちはある。やっぱり自分にとってクマは“いい存在”なので」(坂本)

 大型のセンターFWである熊田と、小回りが利く坂本はFWのタイプとしてはまるで異なるが、ゴールにこだわるストライカーとしてのメンタリティは共通する部分もある。だからこそ、この大一番で先発に指名されて奮い立ったし、均衡した試合を自らのゴールで打ち破った瞬間は「本当に気持ち良かった」。

 0-0のまま迎えた後半9分だった。「守備は持ち味なので」「後ろでちょこちょこする感じがあって狩りやすいと思ったので、ずっと狙っていた」と、猛プレスからボールを奪い取ると、北野颯太(セレッソ大阪)が左サイドを破るのを見ながらゴール前の“おいしい”ポジションを嗅ぎ分けて入り込む。

 鋭いマイナスのクロス、しかも「ちょっと浮いていた」という高難度のボールだったが、正確にミートしてゴールへと流し込んだ。

「いつもだったらいろんな余計なこと考えちゃうんですけど、あんまり考えることなく『枠内に収めよう』という感じでいったら、あのコースに決められた」(坂本)

 研ぎ澄まされたシュートも見事だったが、プレスからというのも“坂本らしさ”だろう。まさに冨樫剛一監督が先発FWとして坂本を起用した理由がそこにあった。

 もちろん、これで打ち止めにするつもりはない。準決勝、決勝でゴールを重ね、良きライバルである熊田と競い合いながら、日本を優勝に導くゴールラッシュを続けるつもりだ。

(取材・文 川端暁彦)


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