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アジア4強終戦のU-20日本代表…PKキックの信頼と120分疲労の“ジレンマ”、指揮官はPK敗戦に「指名した監督の責任」

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PK戦で敗れたU-20日本代表

「すべてを経験した大会でした。すべてをね」

 U-20日本代表・冨樫剛一監督はPK戦の末に敗退の決まった準決勝終了後、開口一番そう漏らした。

 コロナ禍に伴って国際経験の巨大な空白ができてしまった世代にとって、ウズベキスタンで行われた大会は簡単なものではなかった。慣れないピッチに苦しみ、レフェリングや外国人審判とのコミュニケーションに戸惑い、日本とは異なる基準でコンタクトしてくる相手選手とのデュエルに四苦八苦した。

 そして迎えた準決勝では、「大会に入ってからずっと準備してきた」(冨樫監督)PK戦に臨み、そして敗れることとなった。

 練習後にPKを蹴り込むことで選手個々が感覚的にも得られたものがあり、GK陣も技術的に積み上げてものはあったはずだが、結果は無情のものだった。2番手キッカーに指名された佐野航大(ファジアーノ岡山)は「練習で一度も外していないし、キックに自信を持っている」(冨樫監督)選手である。グループステージでは試合の中でのPKを成功させている名手でもあるのだが、相手GKの守備範囲内へ蹴ってしまい、痛恨の失敗となった。

「データとしても120分を戦った選手はキック精度が落ちるというのは分かっていた」という冨樫監督は、5人のキッカーのうち4人については途中出場の選手を指名している(蹴る前に試合の終わった5番手のキッカーはMF松木玖生=FC東京)。その上で、先発陣から唯一佐野を指名した。それだけ佐野が信頼されるキッカーだからこそなのだが、あらためてPK戦の難しさを痛感する結果となった。

「キッカーを指名したのは監督なのだから監督の責任です」

 そういう趣旨の発言を繰り返した冨樫監督は、「もしもU-20W杯でPK戦を迎えたのなら、この経験をわれわれスタッフも活かさないといけない」と唇を噛んだ。

 3月31日にはU-20W杯の抽選会が行われる。試合終了のホイッスルは次の試合へのキックオフの笛である」という『日本サッカーの父』デットマール・クラマー氏の言葉を借りるまでもない。松木主将が「この借りは世界大会で返します」と言い切ったように、悔しさをぶつける舞台はすぐにやってくる。

(取材・文 川端暁彦)
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