beacon

U-17日本代表に初招集された新興チームの無名逸材・高崎天史郎、数合わせで発見された“尖った原石”が代表定着狙う

このエントリーをはてなブックマークに追加

MF高崎天史郎(QUON FD)

 まさに才能の原石だ。MF高崎天史郎(QUON FD)は、昨年の代表合宿で急きょ数合わせにトレーニングパートナーとして招集されると、プレーが認められて今回正式にU-17日本代表初招集。無名の逸材がアルジェリア遠征で大きな一歩を踏み出す。

 森山佳郎監督のもとには、未招集の選手の情報が映像で集められる。その中でも高崎のプレー映像は脳裏に刻まれていたという。「普通の選手は、いい場面ばかり集めているよね……という感じ。だけど高崎に関しては、それにしてはちょっと切れ味があるぞと」(森山監督)。

 昨年のパラグアイ遠征出発直前に国内で練習試合が組まれると、人数が足りない。そこで森山監督が思い出したのは高崎の姿。所属するQUON FDが近所ということもあり、招集できるか打診してみると、急きょ高崎の参加が決定する。そのプレーを目の当たりにした指揮官は「スピードも一番速かったり、仕掛けもU-20日本代表の永長(鷹虎/川崎F)みたいな感じ。こいつはちょっと面白いなと」。Jクラブのキャンプにも参加しており、そこにも森山監督は足を運んだ。「これは完全に呼べるレベルだなということで今回呼びました」。

 U-17日本代表は18日からアルジェリア遠征をスタートさせた。同日夜に日本を発つ前に、昼には流通経済大と40分×2試合で練習試合を実施。高崎は1本目に先発すると、4-4-2の右サイドハーフで起用された。

 左足のタッチから仕掛けるドリブルは大学生相手にも通用した。味方にパスを要求されても慌てることなく、まずマークを確実に剥がしてから配球する技術と冷静さを見せる。「一人外すことによってほかの選手がフリーになるので、そういうのは日ごろから意識しています」(高崎)。試合序盤から果敢に攻め立て、何度も相手ゴールを脅かした。

 40分の1本目が終わると、高崎の出番は終了。「前半40分出て、1点も決められなかったのは課題」と振り返りつつ「積極的に仕掛けられたのは、ちょっといいところが出たかなと思います」と手応えも語った。

 中学では数々のプロ選手を輩出した大阪の名門・千里丘FCでプレーした。高校からは、2021年度からクラブチームとして活動をスタートさせたQUON FDの1期生に。海外でのプロ選手育成を目指す新興チームに入った理由を「留学したいという目的があったから」と語る。

 話を聞くと「取材は自分でいいんですか」と緊張した様子。日の丸の重みを問われると、しばらく言葉を探しつつ「ほど遠かったので、まだわからないですね……とりあえずがんばりたいという感じです」と正直に語る。「すごい嬉しいんですけど初招集なので。これから(アルジェリア遠征で)3試合するんですけど、もっと自分が点を決めて勝たせないとだめだなと思います。出た試合は絶対にゴールを決めようと。まず勝利を絶対に掴みたいと思います」。たどたどしくも、力強く決意を口にした。

 森山監督は「前を向いたら、きょうのような大学生でもなかなか取れない」と高く評価する。「やれること自体はドリブルの仕掛け、突破、シュートというところ。それ以外のところはまだまだできない。できることは少ない。だけど、特長の尖り具合が普通と違う。僕らのプラス要素になり得るな、というところですかね」。U-17日本代表は6月にW杯出場を懸けてU17アジア杯に臨む。高崎が新戦力として輝けるかは、これからの急成長に懸かっている。

(取材・文 石川祐介)

TOP