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A代表初招集FW中村敬斗、左サイド争う三笘に敬意「まだ比較対象にない」

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FW中村敬斗(LASKリンツ)

 オーストリアの地で今季公式戦14ゴール7アシストを挙げ、飛躍のシーズンを過ごしてきた22歳は、初のA代表で爪痕を残していくつもりだ。

 キリンチャレンジカップ2試合に向けた日本代表合宿3日目の22日、報道陣の取材に応じたFW中村敬斗(LASKリンツ)は「カタールW杯が終わって、今季自チームで活躍して、夏に移籍してステップアップして、その後に代表かなと思っていた」と以前のビジョンを振り返りつつ、「こういうタイミングで呼んでいただいてめちゃくちゃ嬉しいし、なんとか生き残れるように頑張りたい」と意気込みを語った。

 高校3年生への進級を前に、三菱養和SCユースからガンバ大阪に鳴り物入りで加入したのが2018年春。あれから約5年、中村は長い下積み経験を積んできた。

 G大阪では開幕当初から出場機会を掴み、翌19年夏にオランダのトゥエンテで海外挑戦のチャンスを獲得したが、活躍したのは序盤のみ。徐々に出場機会を失うと、20年夏にはベルギーのシントトロイデンに期限付き移籍したが、満足に出場機会を得られず、21年2月にはオーストリア2部のFCジュニアーズでプレーすることになった。

 しかし、この選択がサッカーキャリアの大きな転機となった。オーストリア2部でリーグ戦14試合5得点の活躍を見せると、21年8月にトップチームにあたるLASKリンツとの契約が決定。昨季は22試合6ゴール、今季もここまでリーグ戦で20試合11ゴール(公式戦では24試合14ゴール)の大活躍を見せている。そして今月、念願の代表入り。2年間で見事なステップアップを遂げた形だ。

 もっとも中村はオーストリア2部に移籍した決断を「今までプレーしてきたリーグよりもレベルは下がったけど、這い上がったという感覚はない」とあっさり振り返る。「まず試合に出ることを優先して選んだ道だったので、結果としていまこうして代表にいられているのでそれが正解だったのかなと思う」。下剋上めいた物語よりも、一つ一つ積み重ねてきた努力の跡を誇った。

 以前の中村に足りなかったのはリーグのレベルではなく、出場機会とゴールの感覚だったようだ。G大阪への加入以降「プロになってなかなか数字として出ていなかったので、厳しい世界だなと感じていた」という中村。いまでは「自分はゴールにつながるようなプレーやチャンスメーク、クロスに入っていくところ、ペナルティエリア付近でのプレーが魅力なので、そこに磨きをかけられた。それが結果につながっている」と手応えをのぞかせた。

 もっともオーストリアで結果を残しているからといって、A代表で通用するとは考えていないという。「どれだけレベルが高いのかわからなかったので緊張していた」と率直な思いも明かした中村は「(レベルについては)試合をやってみないとわからない」と浮き足立つことなく、謙虚にポジション争いに挑もうとしている。

 それもそのはず。中村が主戦場とする左ウイングは現状、プレミアリーグで圧倒的な存在感を放っているMF三笘薫(ブライトン)がライバルになるからだ。

 中村は「三笘選手は世界一のリーグであるプレミアリーグで、得点やアシスト、それ以外のプレーでも違いを見せられている。その選手と自分はちょっとまだ比較できない。比較対象にない。ライバルという感覚はない」と冷静。「まずは自分が代表に次も呼ばれるように、今回チャンスをもらえれば何かを少しでも残したい」と、あくまでも自身の結果にフォーカスを当てている。

 それでもA代表の舞台でチャレンジしていくにあたっては、前向きな要素もある。今回のチームにはMF久保建英、DF瀬古歩夢、DF菅原由勢ら2017年のU-17W杯に共に出場した“00ジャパン”のチームメートも複数選出。そのことに話が及ぶと「やっぱり今回こうして来る時には正直めっちゃ緊張してきたので、00(ジャパン)でやってきた仲間たちが少しでもいるのがすごく嬉しい」とこの日一番の笑顔を見せた。

 自らをよく知る同世代の選手たちとも切磋琢磨しつつ、A代表のサバイバルレースへ。まずは24日のウルグアイ戦でのA代表デビューを見据えた中村は「安パイなプレーをしてミスなしで行くより、チャレンジしてミスになったとしてもトライしていきたい」と強気に意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)

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