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絶妙スルーパスで同点弾演出のDF菅原由勢「純也くんの足が単純にめちゃくちゃ速かった」偽SB役には課題も

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日本代表DF菅原由勢(AZ)

[3.24 キリンチャレンジ杯 日本 1-1 ウルグアイ 国立]

 2年半ぶりとなるA代表のピッチで爪痕を残した。日本代表DF菅原由勢(AZ)はキリンチャレンジカップ・ウルグアイ戦でA代表初先発。デビュー戦となった2020年10月の国際親善試合・カメルーン戦(△0-0)では終盤のみの出場だったが、この日は89分間のプレータイムを獲得し、武器とする右足のスルーパスで同点ゴールの起点にもなった。

 長所が発揮されたのは0-1で迎えた後半30分だった。右サイドで前を向いた菅原はMF伊東純也が相手の背後に走り出すのを確認すると、絶妙な回転のスルーパスを配球。相手に走り勝った伊藤が深い位置からグラウンダークロスを送り、これがFW西村拓真の同点弾につながった。

 菅原は「ボールを持って顔を上げるタイミングで純也くんが走り出すのは分かっていたし、ヨーイドンしたら今日の左サイドバックなら純也くんのほうが速いのは試合中に分かっていた。あとはDFの走り方、純也くんへの対応の仕方を見て、どういうボールの質を蹴ろうかというところで、意図したところにボールが送れた」と手応え。「純也くんの足が単純にめちゃくちゃ速かったので、そこに助けられている部分もあるけど……」と謙遜して報道陣を笑わせたが、「結果的に得点につながったのはポジティブだった」と収穫を得ていた。

 菅原は前半22分にもFW浅野拓磨(ボーフム)の決定機をもたらす右サイド裏へのスルーパスを配球し、この日の日本の攻撃パターンとなっていた。「拓磨くんの良さはあそこだと思うし、僕の強みも相手の嫌なところにボールを通していくところでもある。試合に向けて調整していく中でいろいろ話し合っていた部分なので、それが一つ体現できてよかったと思う」。ボール保持で多くのトライが見られた一戦だったが、ゴールに直結する攻撃は不可欠。「ボールを繋いでいてもああやってシンプルに一発で突くことがないと、相手への対策にならないので、一発見せられたのはよかった」と前向きに振り返った。

 もっとも、菅原の試合を通じた自己評価は控えめだった。「代表チームはまず今日の試合に勝てなかった時点であまり評価されないと自分では思う。日本代表を背負っているわけなので、どんな状況でも勝つことが第一の宿命。その点を見ると不合格だと思う。内容を見てもまだまだ自分の良さをチームに還元できるし、自分の強みでチームのプラスアルファになれると思う。まだまだだと思う」。強豪ウルグアイ相手だとしても、1-1のドローという結果に満足はなかった。

 またこの日のメインテーマとなっていたボール保持にも悔いを残していた。菅原はこの日、サイドバックの位置からやや中央寄りの高い位置を取り、ボランチのような位置でビルドアップに参加。相手の守備ブロックをかいくぐるための“偽SB”とも言われるポジショニングだが、森保一監督が試合後の会見で「サイドバックの選手は攻撃のところでボランチのポジションの高さだったり、内側のポジションを取ってビルドアップに関わるということをトレーニングでもやってきたので、この試合でも攻撃の関わりの部分でチャレンジしてほしいと伝えた」と述べたように、第2次体制で新たにトライしている部分だった。

 しかし、この取り組みはなかなかうまくはいかなかった。菅原が「律くんに入った時、CBがボールを持った時は特にいま僕らが新しくトライしている部分」と振り返ったように、右サイドハーフのMF堂安律(フライブルク)が大外の位置を取り、役割分担をしていたのは明白だったが、堂安がボールを持っても最終ラインに戻して組み立て直すことが多く、菅原を使った組み立てまではほぼ見られなかった。

 菅原は「チームとした新しいやり方をトライしていたのはあるけど、右足のパスは自分の強みだったので、もっとビルドアップに関わるべきだった。積極的に相手のスペースを見つけてそこにボールを配球したりとか、自分のサイドバックのところから発信できたらよかった」と悔やみつつ、「律くんが後ろ向きにボールを持つのは律くん本来の得意な形ではないのは間違いない。あそこをもう少し前向きで余裕を持って、選択肢を持った状態でボールを持てるようにというのはまだまだ改善できると思う」と堂安との連係改善も誓った。

 もっとも、名波浩コーチの指揮で行われていたというこの取り組みは、試合2日前の戦術練習から始めたばかり。菅原は「それが代表チームの宿命だとは思うけど、できるだけ詰められるだけ詰めないといけない」と準備面の反省点を口にしつつも、「1試合1試合、一つ一つという感じ」と今後の改善に期待感を示す。

「初めてというところでかなり課題が出ているけど、映像を見返していろんなディスカッションを重ねて、より良くできることは間違いない。1試合目で課題がたくさん出ているのは今後に向けてポジティブなことでしかない」。

 菅原自身はこの取り組みを通じ、自身のプレーの幅を広げていきたい構え。「サイドバックである以上、なんでもできることに越したことはない。これがいま日本代表で求められているサイドバック像だとも思う。それに向けてチャレンジできているので、自分自身それにどう考えながらプレーできるか」と新たな役割に向き合おうとしていた。

(取材・文 竹内達也)

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