beacon

福岡ルーキーFW鶴野怜樹、度重なる負傷乗り越え初のパリ代表候補入り「まだか、まだかと…」名将お墨付きのゴールゲッター

このエントリーをはてなブックマークに追加

初代表のアビスパ福岡FW鶴野怜樹

 類稀な得点感覚を持つ九州産ストライカーが、初めてパリ五輪の代表候補リストに名を連ねた。「東京五輪が終わって次のパリはギリギリ年代的に入れると分かった時からずっと意識していた」。本大会まで残り1年余り。2001年早生まれで世代最年長にあたるアビスパ福岡FW鶴野怜樹は本気でフランスの地を目指す。

 熊本県南部の津奈木町に生まれ、越境入学した立正大淞南高ではエースとして2度の全国高校選手権出場を経験。福岡大では前十字靭帯損傷やハムストリング肉離れなど数々の怪我に苦しみながらも、限られた出場時間でも得点力を発揮し、エリートリーグで帯同していた福岡への加入内定を大学3年時に勝ち取った。大学最後のインカレも負傷の再発により不完全燃焼に終わったが、入念なケアでコンディションが回復。プロ1年目の今季からJリーグでコンスタントに出場機会を得ている。

 持ち味は福岡大の乾真寛監督から「鶴野は1回で仕事をする千両役者」と称されるゴールセンスだ。3月8日のルヴァン杯新潟戦では先発プロデビューを果たすと、後半14分に味方のスルーパスから決勝点となるプロ初ゴールを記録。また同19日の湘南戦に途中出場でJ1デビューし、4月9日の京都戦でもチャンスを得ると、味方のシュートが自身の頭に当たって決勝点につながった。公式記録ではFWウェリントンのゴールとされる不運もあったが、さすがの得点感覚はプロの舞台でも際立っている。

 そして今月21日、キャリアを通じて初めてとなる代表入りが発表。福岡大で負傷に悩んでいた時期に乾監督から「年代的にギリギリ入れるぞと言われていた」という鶴野にとって、悲願の吉報だった。

「早生まれでギリギリ入れるのは分かっていたし、Jリーグとかルヴァン杯で活躍すれば声がかかると思っていた。これまでは『まだか、まだか』と思いながらも怪我をしていて、入れずに悔しい思いをしていたけど、リーグでアシストしたり、ルヴァン杯で点を取ったりしていい出だしができて、声がかかった時は『やっとか!』と思った」

 それでも合流初日の24日、気持ちはすでに変わっていた。「声がかかることが目標じゃないので浮かれずにやっていきたい」。アピールの貴重な機会となるトレーニングキャンプはわずか3日間。「一緒にやっている選手は自分を見てくれるし、上手いし、欲しいタイミングで出してくれる選手ばかり。もっともっと自分の長所を教えたり、ピッチで表現することで、もっと点を取ったりアシストすることができる」と周囲とも連係し、自身の得点力を発揮していく構えだ。

 またそのためには周囲とのコミュニケーションにも取り組む。「自分はあまりみんなの前で喋ったりできないので、とにかく喋れる選手を作るのが大事」という人見知りだが、全日本大学選抜でチームメートだった常連組のFW木村勇大らをつてに交友関係を模索中。コミュニケーション面でも「誰かのアシストが欲しいです」と冗談めかしながらも「どんどん輪を広げていけたら」と意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)

TOP