転機は1年前のJ2移籍…A代表デビューの21歳宇野禅斗「成長の大きな要因になった」乾貴士との出会い
MF
EAFF E-1選手権第2戦・中国戦(◯2-0)でフル出場し、日本代表デビューを飾ったMF宇野禅斗(清水)が試合から一夜明けた13日、報道陣の取材に応じた。昨年の今ごろはJ1で上位争いを繰り広げる町田で出場機会を得られず、当時J2だった清水への期限付き移籍を決断した時期。たった1年間で大きく立場を変えた21歳は「移籍できたことが自分のキーポイントだった」と感謝を口にした。
宇野は昨年夏、町田からの期限付き移籍で清水に加入し、J2リーグ戦12試合出場でJ1昇格に貢献。今季は完全移籍の契約となり、J1で23試合中22試合に先発出場し、E-1選手権の日本代表入りを果たした。
「多くの試合に絡ませてもらって、今季もほぼ全試合スタメンで出させてもらって、試合に出続けることで成長できた」。その先に掴んだA代表デビュー。「清水がオファーを出してくれて、町田のクラブが送り出してくれたことが今につながっている」と在籍両クラブへの感謝を語った。
今季の飛躍につながった要因には精神面の充実を挙げる。「町田の時は正直、怪我が多かったこともあったし、メンタル的にも不安定さがあった。清水に来てからはメンタル的にも成長できているし、心の余裕が出てきて、ポジティブなメンタリティーで過ごすことができているのがすごく大きい。クラブの雰囲気、監督含めた選手たちの環境に助けられている」。試合に出続ける経験が心身の充実につながり、急速なキャリアアップに大きく寄与したようだ。
そうして迎えた12日のA代表デビュー戦では、同じくA代表初招集のMF田中聡とボランチコンビを組み、持ち味とする球際のバトルだけでなく、積極的な攻撃参加でも異彩を放っていた。田中がアシストを記録したため、「より得点につなげるところは聡くんとの差だった。得点に絡むところがまだまだ足りない」と課題も突きつけたが、清水加入後に目覚ましい成長を見せた攻撃能力はA代表の舞台でも大きなアピールポイントとなった。
■乾貴士の存在
そんな宇野の成長は清水のチームメートが引き出してくれた側面もある。
なかでも欠かせない役割を果たしたのが2018年のロシアW杯で2ゴールを挙げた実績を持ち、22年夏から清水に在籍しているMF乾貴士の存在だ。清水の試合を見ていると、宇野のチャレンジングな縦パスは乾の技術を信頼して出される場面が多く、乾がボールを持った瞬間に繰り出すフリーランも脅威。その影響力の大きさは宇野自身も「よく言っていただくことがあって、その通りだなと思っている」と認めるところだ。
「意図的にこの人からこうと考えながら過ごしていたわけではないけど、W杯経験者でA代表でずっとプレーされていた方が身近にいるのは間違いなく自分の成長の大きな要因になっている。その中でも貴士くんは性格的なものもあって、言いたいことはどんな状況でも絶対に言ってくれる人。できないからと言ってこいつに期待しないとかそういう感情ではなく、やってほしいことをズバズバ言ってくれる。自分は言われたことを基本的に聞き入れて実践する気持ちしかないので、貴士くんにどんな状況であれ要求してもらえているのは成長の要因だと思う」(宇野)
宇野によると、乾からは「前方を見るというところは口酸っぱく言われているし、前を見るだけじゃなく、誰を選択するかの判断も含めて言われている」とのこと。“誰と組んでも機能する”ことが求められる代表チームのプレーに好影響を及ぼしたのは想像に難くない。また「貴士くんは『できると思っているから言っている』とも言ってくれるので、要求に応えられるだけの幅を広げていきたい」と進むべき道筋も見えてきたようだ。
■ボランチから受ける刺激
さらに宇野は自らを活かしてくれる周囲の選手からだけでなく、自らと近いプレースタイルの選手からも多くのものを学ぼうとしている。
もともと守備力に強みを持っている上、機動力を生かして攻撃能力を広げつつある宇野だが、こうしたプレースタイルの拡張は現代サッカーの一つのトレンド。MF遠藤航(リバプール)、MF佐野海舟(マインツ)が世界的に評価を高めてきたほか、この夏は当初E-1選手権に選出されていたMF川崎颯太(京都→マインツ)も新たに欧州移籍を果たすなど、日本人選手が勢力を増している分野でもある。
「日本人選手のことはよく見ているし、自分と似たような特徴を持っている選手のことはすごく参考になっている。自分が超えていかないといけないという目線でも見ている。遠藤航さん、海舟くん、川崎颯太さんもそうだし、(今回のメンバーも)聡くんもそうだし、(稲垣)祥さんもそういうタイプ。自分の指標になるような選手がいるのは、誰もいないよりは目指しやすいと思う」(宇野)
この分野において宇野はただ参考にするのではなく、明確なライバル意識を持って立ち向かおうとしている。
「目指しているだけでは変わらないので、その選手たちの違いを見せないといけないし、そういう選手たちがいることで、『守備面においても俺だよね』と言われるようなパフォーマンスを発揮しないといけないという点にもつながる」
そうした現状認識が、中国戦のパフォーマンスの自己評価に反映されているようだ。「まだまだ足りない。より全てにおいて正確に、確実にしないといけない。昨日の試合でも潰し切らないといけないシーンがあった中、自分の特徴と言っているからには100%潰す場面で潰し切れるだけのパフォーマンスを見せたい」。攻撃面で結果を求めるだけでなく、守備面ではより高いハードルを自身に課している。
A代表初招集というだけでなく、世代別代表の経験も2019年のU-19日本代表でモーリスレベロトーナメントに出場した一度きりだった宇野。今回の活動は自身の現在地を認識する機会となったのみならず、自身の視座を上げる機会ともなった。
「自分は小学校の時からW杯に出ることが夢でサッカーをしている。W杯を見て育ったし、海外の試合を見て育っているので、海外への意識は小さい頃からあるけど、今は漠然としたイメージよりも、より身近にいろんな国の試合が見られる環境にあるし、こうして国際大会に連れてきてもらえたことで自分が目指している場所がどういう場所なのかというイメージが濃くなっていると思う」(宇野)
すなわちA代表での大きな一歩も、長いサッカーキャリアの通過点。「昨日の試合もそうだし、自分が出ていなかった香港戦も、チームメートのパフォーマンスにレベルの高さを感じたし、日頃の意識レベルから変えていかないといけないと思った。もちろんやってきたこと、積み上げてきたものが出た部分もあるので、そこはポジティブに捉えているけど、より自分が戦っていく場所がどういう世界なのかをいま明確に持てているのでしっかり持ち帰ってからも頑張りたい」。上々のA代表デビュー戦を、次は今後のステップに活かす。
(取材・文 竹内達也)
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宇野は昨年夏、町田からの期限付き移籍で清水に加入し、J2リーグ戦12試合出場でJ1昇格に貢献。今季は完全移籍の契約となり、J1で23試合中22試合に先発出場し、E-1選手権の日本代表入りを果たした。
「多くの試合に絡ませてもらって、今季もほぼ全試合スタメンで出させてもらって、試合に出続けることで成長できた」。その先に掴んだA代表デビュー。「清水がオファーを出してくれて、町田のクラブが送り出してくれたことが今につながっている」と在籍両クラブへの感謝を語った。
今季の飛躍につながった要因には精神面の充実を挙げる。「町田の時は正直、怪我が多かったこともあったし、メンタル的にも不安定さがあった。清水に来てからはメンタル的にも成長できているし、心の余裕が出てきて、ポジティブなメンタリティーで過ごすことができているのがすごく大きい。クラブの雰囲気、監督含めた選手たちの環境に助けられている」。試合に出続ける経験が心身の充実につながり、急速なキャリアアップに大きく寄与したようだ。
そうして迎えた12日のA代表デビュー戦では、同じくA代表初招集のMF田中聡とボランチコンビを組み、持ち味とする球際のバトルだけでなく、積極的な攻撃参加でも異彩を放っていた。田中がアシストを記録したため、「より得点につなげるところは聡くんとの差だった。得点に絡むところがまだまだ足りない」と課題も突きつけたが、清水加入後に目覚ましい成長を見せた攻撃能力はA代表の舞台でも大きなアピールポイントとなった。
■乾貴士の存在
そんな宇野の成長は清水のチームメートが引き出してくれた側面もある。
なかでも欠かせない役割を果たしたのが2018年のロシアW杯で2ゴールを挙げた実績を持ち、22年夏から清水に在籍しているMF乾貴士の存在だ。清水の試合を見ていると、宇野のチャレンジングな縦パスは乾の技術を信頼して出される場面が多く、乾がボールを持った瞬間に繰り出すフリーランも脅威。その影響力の大きさは宇野自身も「よく言っていただくことがあって、その通りだなと思っている」と認めるところだ。
「意図的にこの人からこうと考えながら過ごしていたわけではないけど、W杯経験者でA代表でずっとプレーされていた方が身近にいるのは間違いなく自分の成長の大きな要因になっている。その中でも貴士くんは性格的なものもあって、言いたいことはどんな状況でも絶対に言ってくれる人。できないからと言ってこいつに期待しないとかそういう感情ではなく、やってほしいことをズバズバ言ってくれる。自分は言われたことを基本的に聞き入れて実践する気持ちしかないので、貴士くんにどんな状況であれ要求してもらえているのは成長の要因だと思う」(宇野)
宇野によると、乾からは「前方を見るというところは口酸っぱく言われているし、前を見るだけじゃなく、誰を選択するかの判断も含めて言われている」とのこと。“誰と組んでも機能する”ことが求められる代表チームのプレーに好影響を及ぼしたのは想像に難くない。また「貴士くんは『できると思っているから言っている』とも言ってくれるので、要求に応えられるだけの幅を広げていきたい」と進むべき道筋も見えてきたようだ。
■ボランチから受ける刺激
さらに宇野は自らを活かしてくれる周囲の選手からだけでなく、自らと近いプレースタイルの選手からも多くのものを学ぼうとしている。
もともと守備力に強みを持っている上、機動力を生かして攻撃能力を広げつつある宇野だが、こうしたプレースタイルの拡張は現代サッカーの一つのトレンド。MF遠藤航(リバプール)、MF佐野海舟(マインツ)が世界的に評価を高めてきたほか、この夏は当初E-1選手権に選出されていたMF川崎颯太(京都→マインツ)も新たに欧州移籍を果たすなど、日本人選手が勢力を増している分野でもある。
「日本人選手のことはよく見ているし、自分と似たような特徴を持っている選手のことはすごく参考になっている。自分が超えていかないといけないという目線でも見ている。遠藤航さん、海舟くん、川崎颯太さんもそうだし、(今回のメンバーも)聡くんもそうだし、(稲垣)祥さんもそういうタイプ。自分の指標になるような選手がいるのは、誰もいないよりは目指しやすいと思う」(宇野)
この分野において宇野はただ参考にするのではなく、明確なライバル意識を持って立ち向かおうとしている。
「目指しているだけでは変わらないので、その選手たちの違いを見せないといけないし、そういう選手たちがいることで、『守備面においても俺だよね』と言われるようなパフォーマンスを発揮しないといけないという点にもつながる」
そうした現状認識が、中国戦のパフォーマンスの自己評価に反映されているようだ。「まだまだ足りない。より全てにおいて正確に、確実にしないといけない。昨日の試合でも潰し切らないといけないシーンがあった中、自分の特徴と言っているからには100%潰す場面で潰し切れるだけのパフォーマンスを見せたい」。攻撃面で結果を求めるだけでなく、守備面ではより高いハードルを自身に課している。
A代表初招集というだけでなく、世代別代表の経験も2019年のU-19日本代表でモーリスレベロトーナメントに出場した一度きりだった宇野。今回の活動は自身の現在地を認識する機会となったのみならず、自身の視座を上げる機会ともなった。
「自分は小学校の時からW杯に出ることが夢でサッカーをしている。W杯を見て育ったし、海外の試合を見て育っているので、海外への意識は小さい頃からあるけど、今は漠然としたイメージよりも、より身近にいろんな国の試合が見られる環境にあるし、こうして国際大会に連れてきてもらえたことで自分が目指している場所がどういう場所なのかというイメージが濃くなっていると思う」(宇野)
すなわちA代表での大きな一歩も、長いサッカーキャリアの通過点。「昨日の試合もそうだし、自分が出ていなかった香港戦も、チームメートのパフォーマンスにレベルの高さを感じたし、日頃の意識レベルから変えていかないといけないと思った。もちろんやってきたこと、積み上げてきたものが出た部分もあるので、そこはポジティブに捉えているけど、より自分が戦っていく場所がどういう世界なのかをいま明確に持てているのでしっかり持ち帰ってからも頑張りたい」。上々のA代表デビュー戦を、次は今後のステップに活かす。
(取材・文 竹内達也)
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