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日本代表・長谷部誠コーチ、同じ“W杯優勝”目指し敗れた苦い記憶も「当時との大きな違いは監督がその目標を示しているところ」

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長谷部誠コーチ

 日本代表長谷部誠コーチが5日、就任後初めて報道陣の取材に応じ、自身の現役時代と現在の日本代表チームとの違いを語った。

 2010年から18年にかけて日本代表のキャプテンを務め、3度のW杯出場経験を持つ長谷部氏は昨年8月、日本代表のコーチに就任。普段は欧州に拠点を置いてフランクフルトU-21のコーチを務めながら、週に1〜2回の日本代表コーチミーティングにオンラインで参加し、日本代表の全活動に各地で帯同している。

 日本代表のトレーニングでは主に試合に出場しなかった選手の高強度メニューを指揮。また齊藤俊秀コーチと共に守備のメニューも担当している。とはいえ、森保一監督や名波浩・前田遼一両コーチらとも積極的にコミュニケーションを取っており、「基本的な役割としては守備がメインではありますけど、攻撃に関しても自分の意見を言わせて頂くこともあるし、いろんなことに口を突っ込ませて頂いています」という。

 長谷部コーチ自身は18年夏のロシアW杯で日本代表を引退し、現役を引退した昨夏までの6年間は代表チームから離れていた。就任から1年。この日、報道陣から自身の現役時代の代表チームとの違いを問われると、次のように答えた。

「個人的にはあまり比較をしないので、今がどうかということがすごく大事で、もしいま何かと比較するのであれば世界の強豪国と比較する部分が大事だと思う。でもそういう意味で言えば、いまの選手たちは世界のトップリーグでプレーする選手もすごく多くなってきたし、世界トップクラブでプレーする選手ももちろんいる」

 長谷部コーチも2008-09シーズンにボルフスブルクでブンデスリーガ制覇を成し遂げ、翌シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグに出場。10シーズンを過ごしたフランクフルトでも2021-22シーズンにUEFAヨーロッパリーグ優勝を果たし、翌年に欧州CLの舞台に返り咲くなど華々しい実績を残してきたが、移籍当初は異なるメンタリティを持っていたという。

「僕が例えばドイツに行った当時なんかはチームメートにブラジル代表の選手が一人いたんですけど、ブラジル代表の選手がチームメートにいるってなったら、自分の中では『ワーオ!』なんですよね。俺、ブラジル代表の選手と一緒にプレーしちゃってるの?みたいな。でも今の選手たちはそれがノーマル。それは比べるまでもなく、日本サッカーはそういうフェーズまで来ているんだと思います」

 その進化は選手を取り巻く環境面でも同様。「代表チームのオーガナイズであったり、サッカー協会としての目指すべきところであったり、そういうものは自分が代表から退いて何年も時間が空いているけど、この1年間にわたってここに携わらせて頂いて、選手だけじゃなく全ての面で成長していると感じますね」と話した。

 そんな日本代表チームは現在、MF遠藤航キャプテンのもとで「世界一」を目標に掲げ、来年夏の北中米W杯に立ち向かおうとしている。

 ところが、そこで思い出されるのは長谷部コーチも出場したブラジルW杯の記憶だ。当時は本田圭佑、長友佑都、香川真司といった世界有数のビッグクラブでプレーする選手たちが中心となり「W杯優勝」を目標を掲げ、チーム内外の視座を上げる発信を積極的に行っていたが、本大会では1分2敗のグループリーグ敗退に終わっていた。

 しかし、長谷部コーチは当時と今のチームの違いを明確に感じているという。

「当時との大きな違いは、やはり監督がその目標を示しているところじゃないですかね。当時、W杯優勝という発言する選手も多くいて、ただザッケローニさんは『自分たちの世界での立ち位置をしっかり考えなさい』と。『もちろん自分も全部勝って優勝したい』と。『だけどしっかりと地に足をつけて自分たちはやっていかないといけない』と。もちろんそれは一つのやり方であって、ザッケローニさんのやり方だったので僕はもちろんいいと思う。でも今は監督もはっきりと優勝というのを公言しているし、選手もみんながそれを共有してやっているという意味でそこが大きく違うと感じています」

「でもだからと言って今の代表チームが夢を見ているかというとそういうわけではなく、やはり彼らが、我々がW杯で優勝するために何をしないといけないか。それを監督がすごく逆算してやっているなというのを間近で見させてもらってすごく感じている。よく監督も口にするけど、11人だけじゃ絶対に優勝できないし、そういうことを考えた時にたとえば9月シリーズの戦い方であったり、W杯優勝というのが大前提にあるからああいうメンバーでの戦い方をするというのを考えている」

「逆に今はケガ人が少し多くなってきているけど、それも逆にプラスという言葉が合っているかはわからないけど、それがチャンスだと思っていると思う。優勝から逆算した時、多くの人がより成長していかないといけない。その中でこういうケガというイレギュラーなことが起きた時、他の選手にとってはそこで成長するチャンスなんだというふうに捉えている。そういうところは全く別物だなというふうに中にいて感じさせてもらっています」

 W杯本大会まであと8か月。その中で長谷部コーチは「自分自身がもっともっと入っていかなきゃいけないと感じている。この9月、10月になってチームに自分の何かを入れていきたい」と先を見据えている。

 その内容については「自分の頭の中にはあってそれを進めている。よりピッチの中で戦術的なところもそうだし、そうじゃないところでも、より入っていくというところはいま少しずつやっているところ」としながらも、最後は「難しいな。数か月後に話せることがあるんじゃないかなと思うので、あっためておきます(笑)」と煙に巻いた長谷部コーチ。10月、11月の活動で新たなチャレンジが進むことに期待したいところだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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