なでしこジャパン 女子アジア杯メンバー発表 ニルス・ニールセン監督会見要旨
日本サッカー協会は12日、都内で記者会見を行い、3月にオーストラリアで開催される女子アジアカップに臨む日本女子代表(なでしこジャパン)メンバーを発表した。ニルス・ニールセン監督と佐々木則夫女子委員長が登壇し、質疑応答を行った。
●佐々木則夫女子委員長
「いよいよワールドカップの予選ということになった。予選があっての本大会。しっかりとアジアを勝ち抜いて、またW杯において皆さんに女子サッカー、なでしこジャパンから元気な場面を見せていくようにがんばっていきたい。いまは冬季オリンピックで、日本の選手たちがよくがんばっているのをテレビで見させていただいている。スポーツのすばらしさ、元気を、日本の皆さんに送る。そういった意味でもわれわれなでしこジャパンも、一人でも多くの少女がサッカーに興味を持ち、女子サッカーで日本にまた元気を送れればと思っている」
●ニルス・ニールセン監督
「去年のクリスマス前の記者会見でも伝えたが、目標としては変わりない。ついに重要なものが懸かった大会に臨める。監督のみならず、スタッフ、チームすべてがアジア杯を楽しみにしている。できるだけ皆さんに楽しいフットボール、興奮できるフットボールを見せたい」
──選手選考のポイントは何か。
ニールセン監督
「今回非常に多くの選手の中から選ぶことができるということで、怪我人も少なく、そこは難しい面ではあった。選ぶポイントは、ここ1か月、最近調子のいい選手を選ぶということと、非常に重要な大会になってくると思うので、どんなシナリオにも対応できるようなところ。同じような選手というよりは、ピッチにいるとき何か違うものを表現できるような選手を選ぶようにした。チーム内でも、コーチングスタッフの中でも議論はあったが、違いを出せる選手を基準に選んでいる。相手に関わらず、自分たちのプレーをするだけということが基準になった」
──W杯出場権は12チーム中6チーム。難易度は高くなさそうだが、この大会で大事になるポイントは。
ニールセン監督
「もちろん、W杯出場が懸かっていることはわかっている。だが、まず第一にこのトーナメントを勝ち切ることを考えている。その次にW杯出場権だということを考えたいので、まずは一つひとつ勝つことを考えているし、まだW杯出場権を得るまでには遠い道のりがあると思うので、まずはしっかりと主要な大会で勝ち切るということに焦点を合わせてやっていく。選手たちもW杯出場が懸かっていることはわかっているが、その話はせずに、まずはこのアジア杯を勝ち切るということに焦点を合わせたい。歴史的に見ても、日本の女子代表はアジア杯で勝つことが難しい歴史があるが、今のチームは新しい歴史を作っていくということで、トロフィーを手にする、しっかり大会を優勝するということを掲げている。それだけこの大会に集中することができれば、より勝つチャンスも増えていく。過去の大会を振り返ると、このアジア杯は非常に難しい大会であることは間違いないが、できるだけ新しい歴史を作っていきたい」
──成宮唯が11月に続いて選出された。土方麻椰も実質初参加。林穂之香はシービリーブスカップ以来。この3人にどのようなことを期待するか。
ニールセン監督
「非常に調子のいい選手が多く、呼べる選手が多い中で、特にMF陣に関しては激戦区。ただ、その中でも現在の調子だったり、非常にすばらしいプレーを見せていたことがある。この3人に関しては、常にコンディションが整っているイメージがある。どうやって常にコンディションを保っているのか。男子は一年間呼ばれていないとコンディションが整っていなかったりする。クリスマスなどの休暇もあったが、その3選手は常にコンディションを整えていた。何か秘密があるのか、あるとしたら海藻を食べているのかなという風に思っている」
「(土方について)これまでも選ぼうとしていたが、怪我のリハビリなどもあってなかなか呼べなかった。若く、素晴らしいパフォーマンスを見せている。試合中にインパクトを残せる選手。攻撃陣のなかでまた違ったタイプ。非常に勇敢にプレーしてくれる。ゴールが必要なときに頼りになる選手かなと。出たときにはインパクトを残してくれるかなと思っている」
「(林、千葉玲海菜について)最近は呼べていなかった。以前はクラブでもポジション争いなどで難しい面があり、インパクトを残せていなかった。しかし最近の2人の活躍は、ヨーロッパのクラブでも非常にインパクトを残せているということで今回選んでいる。迷いなく選べる選手」
「(成宮について)小柄ながらランニング能力が高く、インパクトを残せる選手。こういったアジアカップのようなトーナメントでは、相手が厳しいディフェンスをしたときに、彼女のようなランニング能力を持っていれば、相手も止めづらい。成宮も迷いなく選んだ」
──今回のチームでは16名がウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)に所属している。それはどう強みになるか。
ニールセン監督
「世界のリーグから興味を持ってもらえたり、最大のリーグであるイングランドで違ったタイプのフットボールを学べることは、選手にとってもいいこと。チームにとっても学んだことが頼りになる。もちろんWEリーグの選手も技術は高いが、それとは違ったイングランドのリーグの良さがある。フィジカルが強かったり、スピードが速かったりとか、そういうことを学んでいる。それは代表チームにとってはいいことだと思う。日本人選手がイングランドのチームに入ってしまうと、決定力のある仕事より、チームの流れをよくする仕事をすることが非常に多い。それは日本の選手がフットボールの賢さを持っており、イングランドのチームにとっても欠かせないほどだからだ。またパス能力が高いので、いいリズムを作ってくれる。だから、イングランドのリーグでも重用されているのかなと思う。日本代表チームでDFの選手も、イングランドに行くとMFになるということもある。代表チームに戻ってきたときに、いままでのポジションを取り戻したり、リズムを戻すのに時間がかかることもある。ただ、アジア杯のような大きな大会で、イングランドやアメリカ、ドイツのリーグでプレーする選手が多いことは、非常に助けになる。若くていい選手がWEリーグにいると、だいたい今は海外でプレーしている。いい流れができていると思う。ただこのまま行くと、海外のリーグにほとんどのいい選手が取られてしまう可能性もある。そこをWEリーグがどうしていくかを考えていく必要がある」
──日本人のFW不足がある。長谷川唯をトップ下とか2列目に使う手はないか。
ニールセン監督
「いいアイデアだと思う。ゴールが必要なときは高い位置でと考えている。どこで長谷川がチームにインパクトを与えられるかというときに、もちろんゴールを決めるときもあるが、彼女のいいところはどこに走ればチャンスを作れるかの見極め、賢さがあること。どうしてもゴールを背にしたりすると、スピードの面やサイズの面で難しさもある。ただフィニッシャーとしての能力はすばらしい。これまでは長谷川がパスの供給能力が高いことと、ほかの選手が得点を取る力が強かったこともあり、ボランチで使っていた。最近は、攻撃的なポジションでやることが多いとは思う。ストライカーまでいくと、彼女の良さを最大限まで引き出せないかなとも思う。比較的最近は、攻撃的MFの位置にしている」
──11月のカナダ戦では、直前で選手側からプレスの駆け引きに関して要望があってうまくいった。アジア杯でのチームの作り方は。
ニールセン監督
「質問に関しては両方。選手の自主性や戦術面の詳細、同じくらいのミックスになる。もちろんプレスやディフェンスのやり方は、相手の分析をしたうえで、ある程度読める部分はあるかなと思う。そこに関しては、細かく指示を出す可能性はある。もちろんそのためにトレーニングの詳細は詰めていく。ただゲーム中に関しては、選手が一番見えている。選手の力を信じているので、選手が感じたことを自由にやってもらいたいという面もある。特に、田中美南に関しては、非常にすばらしいものを持っている。予測がすばらしい。あと2ステップ前に出ることでプレスがかかる、ということを彼女であればわかっている。それによって自分たちのゴールチャンスを作れるということもある。そういった選手の自主性は奪わないようにしたいので、ミックスになると思う。最終的にこのような大会で優勝するのは、ミスが少ないチームではなくて、試合中に対応できたり、相手がしてきたことに対して順応できるチーム。今回もミックスで、できるだけ選手の自主性も踏まえながら、うまく戦術面も伝えていきたい」
──コンディション調整について、1次リーグは中2日の過密日程であり、W杯出場が懸かる決勝トーナメントも大事。コンディションのピーキングをどう考えるか。
ニールセン監督
「コンディションについてはそれぞれ選手によって違うので、シーズン中の選手は休養が必要な場合もある。シーズン前ということでフィジカルのトレーニングをしている選手には、また違ったトレーニングになる。それはテクニカル、コーチングスタッフの中で選手のコンディションを見極めて、いいコンディションを作っていくことがチャレンジになる。ただ、われわれが考えているのは一試合ずつ勝っていくことで、しっかりと相手を警戒して勝っていくこと。後々の決勝トーナメントに行ったとき、3勝で突破できれば移動の面では助かる。そこはできるだけ一試合一試合集中して勝っていくことを考えている。もちろん優勝が懸かった試合や、準々決勝、準決勝でまったく体力がないことは避けたい。できるだけ重要なゲームで力を使い切れるように、選手のコンディションを見ながらローテーションで回していきたい。基本的には各ポジションに2、3人くらいオプションがある。特にグループリーグは90分の試合を中2日で戦わないといけない。1試合目、2試合目ではなかなか100%の力を出し切れない可能性もある。オプションがあるポジションは、しっかりと違う選手を使っていきたい。最終的に勝負が懸かるような重要なゲームで、ディフェンス面でもオフェンス面でもクオリティの高い選手を使いたい。どの選手が次の試合に出るかは、常に夕食の場でコーチングスタッフの中でも議題にのぼるのかなと思っている」
──ニールセン監督就任時に、評価のポイントとしてアジア杯があると言っていた。今回、技術委員会としてどのようなことを表現してもらいたいか。
佐々木女子委員長
「今年度の契約もあるが、日本で行われたカナダ戦2試合もよくなっていたし、それも含めて今回のアジア杯の戦い方にも評価的な要素は加わってくる。いずれにしても、大会が終わったなかで判断していきたい」
──これまで長谷川と谷川萌々子の共存があまりないが、今大会はどうか。
ニールセン監督
「谷川選手もコンディションの問題で100%でキャンプに来られなかったり、長谷川も怪我やコンディションの問題で参加できなかったり、2人が一緒にプレーできることが逆になかなかなかった昨年だった。もし2人とも完璧な状態であれば、非常にすばらしいプレーをしてくれたと思っている。基本的にはトレーニング中に準備ができている選手、調子がいい選手にチャンスを与えたい。1年前にいい状態でも、直前の練習で調子がよくなければ試合には出られない。2人ともすばらしい選手だが、なかなかそのときの状況がよくなかったと思う。谷川は非常にすばらしく、シュートレンジの長い両足を持っている。長谷川は戦術的に賢く、それはイングランドでもボール奪取率の高さが示している。2人とも今の日本代表にとって非常に重要な選手になると思っている。2人ともいい調子であれば、まったく問題なく共存できると思っている」
──高橋はなと古賀塔子はここまでCBとSBで起用されている。今大会はどうか。
ニールセン監督
「すばらしい質問。2人とも色んなポジションができる。2人は昨年もすばらしいパフォーマンスを見せてくれた。幸運なことに2人ともCBでもSBでも強みを出せるすばらしい選手。高橋は空中戦に強い選手。チームで一番ヘディングが強い。場合によっては前線に上げて得点を狙ってもらうこともある。それだけ複数のポジションができて、すばらしい選手だと思っている。古賀もすばらしい。理想をいえば2人ともCBで戦ってほしい。なぜならSBに北川ひかるや清水梨紗が怪我から復帰しているので、基本的には高橋と古賀にはCBでプレーしてもらいたい。何かあればSBもあるが理想はCB」
──優勝を目指すうえでチームで具体的に取り組みたいこと、この期間で成長してもらいたいポイントは何か。
ニールセン監督
「まず取り組むことは、いまリーグで出場時間が長い選手にはしっかりリカバリーを取ってもらうこと。その後にまずはゲームモデルに取り組みたい。ただ、ある程度ゲームモデルは明確になっていて、対戦相手ごとにそれぞれ異なるポイントがあると思うので、そこに関して細かいところをしっかり調整して、いいゲームができるようになりたい。あとは自信を1か月の間につけること。先ほども一試合ずつ勝っていくと言ったが、試合に勝つことで自信がついていく。得点を取ることは難しいことなので、得点を取ることで自信をつけて、よりよいゲームをしていきたい。こういった大きな大会、トーナメントは生き物というか、非常に不確定要素も大きい。特に2チーム、北朝鮮とオーストラリアに関しては、まったく違ったチームになると思う。特にオーストラリアは母国開催なので、まったく違うようなチームになると思っている。このチームに関しては、また違った対策が必要かなと思う。あとは韓国、中国に関しては、歴史的に見てもアジア杯ですばらしい成績を残している。あと、だいたいこういう大会になるとダークホースというか、サプライズを起こすチームが出てくる。そこはどこかはわからないが。なので、一試合ずつ勝っていきたい。最終的にトロフィーを掲げて日本に戻ってきたい」
──シェフ帯同も含め、協会のバックアップ体制はどうか。
佐々木女子委員長
「もちろん、そういった相談やミーティングをしていく。いい準備をするに尽きると思うので、さまざまな分野があるので、最大のバックアップをしながら、厳しい戦いなので準備をしていきたい」
──就任後初の重要な大会となり、選手にもこれまでとは違った大きなプレッシャーもかかる。どうアプローチをしたいか。
ニールセン監督
「最大のパフォーマンスを出すために、心的安全性が重要になってくる。そういうところへのサポートができるような環境を作っていきたい。心的安全性があればより決断しやすかったり、選手が恐れなく、自分らしいプレーができると思っている。これは選手のみならず、スタッフにも言える。すばらしいスタッフでそれぞれ専門家が揃っているが、選手・スタッフをそれぞれ尊重して、いかに働きやすく、一緒に勝っていく雰囲気を作っていくかが重要だと思っている。もちろんトレーニングでもそうするし、ちょっとしたコメントや会話でも、今もよくなっているし、教室で話すような一方的な教える形ではなく、いかに作り上げていくかが重要になる。よりよいチャレンジができるようになり、最終的な目標を達成できるようになる。なでしこジャパンは、花のような存在。すばらしい花であれば、蜂が蜜を吸おうとたくさん周りに集まってくる。その蜂がしっかりと蜜を集めることによって、すばらしい蜜ができる。香りが強いものに惹かれる習性があるので、メディアやその読者、ニュースを見る人も、なでしこジャパンの一員。いかに協力してすばらしい蜂蜜を作るかというところで、協力できればと思っている。基本的には、選手に心的安全性、感情的な安全性が感じられれば、ミスをしても自信を持ってプレーできる。そういった安全性を監督としては提供していきたい。もし水中でおぼれた人がいたら浮き輪を投げると思うが、そのときに何もしないのではなく、チームや選手が見失ったことがあれば何かしら助けをかけてあげたい。なでしこという花があるので、周りに集まる蜂のように、皆さんと協力してすばらしい蜂蜜を作っていきたい」
──優勝できなかったE-1選手権のように、アジアは日本の良さを消してくる。どう対応したいか。
ニールセン監督
「E-1選手権ではたしかに得点が取れなかったり、プレーが遅くなったりしていた。言い訳になるかもしれないが、大会のフォーマットもあって3位になった。選手たちはすばらしいプレーをしてくれた。勝つために何が必要か、ピッチ上の選手たちがすべて見せてくれた。選んだ選手はどの選手も出たと思うので、1ゴールを奪えなかったが、1ゴールを奪えてさえいれば優勝の可能性もあったかもしれない。3位という結果には満足していないが、選手のプレーには非常に満足している。そこから学んだことは、勝ち切ることが大事ということ。アジア杯では一試合一試合しっかり勝って、次の準備と考えていきたい」
──最後に。
ニールセン監督
「就任してから常に伝えているが、選手、スタッフだけではなくて、メディアやファンがあってのチームだと思っている。いかにお互いに助け合いながら目標のタイトルを取れるか。タイトルを取るためにはみなさんの力が必要だと本気で思っている。できるだけ協力して、美味しいハチミツを作っていきたい。オーストラリアのサム・カーのように一人でもタイトルを取れるようなすばらしいチームもあるが、日本は一人のビッグなスターというよりは、みんなで力を合わせて解決策を見つけて支え合っていい雰囲気を作り出して、最終的に目標としているゴールに向かうところがある。今後とも必ず、皆さんの力が必要になる。いい協力関係を築いていけたら」
(取材・文 石川祐介)
●女子アジアカップ2026特集
●佐々木則夫女子委員長
「いよいよワールドカップの予選ということになった。予選があっての本大会。しっかりとアジアを勝ち抜いて、またW杯において皆さんに女子サッカー、なでしこジャパンから元気な場面を見せていくようにがんばっていきたい。いまは冬季オリンピックで、日本の選手たちがよくがんばっているのをテレビで見させていただいている。スポーツのすばらしさ、元気を、日本の皆さんに送る。そういった意味でもわれわれなでしこジャパンも、一人でも多くの少女がサッカーに興味を持ち、女子サッカーで日本にまた元気を送れればと思っている」
●ニルス・ニールセン監督
「去年のクリスマス前の記者会見でも伝えたが、目標としては変わりない。ついに重要なものが懸かった大会に臨める。監督のみならず、スタッフ、チームすべてがアジア杯を楽しみにしている。できるだけ皆さんに楽しいフットボール、興奮できるフットボールを見せたい」
──選手選考のポイントは何か。
ニールセン監督
「今回非常に多くの選手の中から選ぶことができるということで、怪我人も少なく、そこは難しい面ではあった。選ぶポイントは、ここ1か月、最近調子のいい選手を選ぶということと、非常に重要な大会になってくると思うので、どんなシナリオにも対応できるようなところ。同じような選手というよりは、ピッチにいるとき何か違うものを表現できるような選手を選ぶようにした。チーム内でも、コーチングスタッフの中でも議論はあったが、違いを出せる選手を基準に選んでいる。相手に関わらず、自分たちのプレーをするだけということが基準になった」
──W杯出場権は12チーム中6チーム。難易度は高くなさそうだが、この大会で大事になるポイントは。
ニールセン監督
「もちろん、W杯出場が懸かっていることはわかっている。だが、まず第一にこのトーナメントを勝ち切ることを考えている。その次にW杯出場権だということを考えたいので、まずは一つひとつ勝つことを考えているし、まだW杯出場権を得るまでには遠い道のりがあると思うので、まずはしっかりと主要な大会で勝ち切るということに焦点を合わせてやっていく。選手たちもW杯出場が懸かっていることはわかっているが、その話はせずに、まずはこのアジア杯を勝ち切るということに焦点を合わせたい。歴史的に見ても、日本の女子代表はアジア杯で勝つことが難しい歴史があるが、今のチームは新しい歴史を作っていくということで、トロフィーを手にする、しっかり大会を優勝するということを掲げている。それだけこの大会に集中することができれば、より勝つチャンスも増えていく。過去の大会を振り返ると、このアジア杯は非常に難しい大会であることは間違いないが、できるだけ新しい歴史を作っていきたい」
──成宮唯が11月に続いて選出された。土方麻椰も実質初参加。林穂之香はシービリーブスカップ以来。この3人にどのようなことを期待するか。
ニールセン監督
「非常に調子のいい選手が多く、呼べる選手が多い中で、特にMF陣に関しては激戦区。ただ、その中でも現在の調子だったり、非常にすばらしいプレーを見せていたことがある。この3人に関しては、常にコンディションが整っているイメージがある。どうやって常にコンディションを保っているのか。男子は一年間呼ばれていないとコンディションが整っていなかったりする。クリスマスなどの休暇もあったが、その3選手は常にコンディションを整えていた。何か秘密があるのか、あるとしたら海藻を食べているのかなという風に思っている」
「(土方について)これまでも選ぼうとしていたが、怪我のリハビリなどもあってなかなか呼べなかった。若く、素晴らしいパフォーマンスを見せている。試合中にインパクトを残せる選手。攻撃陣のなかでまた違ったタイプ。非常に勇敢にプレーしてくれる。ゴールが必要なときに頼りになる選手かなと。出たときにはインパクトを残してくれるかなと思っている」
「(林、千葉玲海菜について)最近は呼べていなかった。以前はクラブでもポジション争いなどで難しい面があり、インパクトを残せていなかった。しかし最近の2人の活躍は、ヨーロッパのクラブでも非常にインパクトを残せているということで今回選んでいる。迷いなく選べる選手」
「(成宮について)小柄ながらランニング能力が高く、インパクトを残せる選手。こういったアジアカップのようなトーナメントでは、相手が厳しいディフェンスをしたときに、彼女のようなランニング能力を持っていれば、相手も止めづらい。成宮も迷いなく選んだ」
──今回のチームでは16名がウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)に所属している。それはどう強みになるか。
ニールセン監督
「世界のリーグから興味を持ってもらえたり、最大のリーグであるイングランドで違ったタイプのフットボールを学べることは、選手にとってもいいこと。チームにとっても学んだことが頼りになる。もちろんWEリーグの選手も技術は高いが、それとは違ったイングランドのリーグの良さがある。フィジカルが強かったり、スピードが速かったりとか、そういうことを学んでいる。それは代表チームにとってはいいことだと思う。日本人選手がイングランドのチームに入ってしまうと、決定力のある仕事より、チームの流れをよくする仕事をすることが非常に多い。それは日本の選手がフットボールの賢さを持っており、イングランドのチームにとっても欠かせないほどだからだ。またパス能力が高いので、いいリズムを作ってくれる。だから、イングランドのリーグでも重用されているのかなと思う。日本代表チームでDFの選手も、イングランドに行くとMFになるということもある。代表チームに戻ってきたときに、いままでのポジションを取り戻したり、リズムを戻すのに時間がかかることもある。ただ、アジア杯のような大きな大会で、イングランドやアメリカ、ドイツのリーグでプレーする選手が多いことは、非常に助けになる。若くていい選手がWEリーグにいると、だいたい今は海外でプレーしている。いい流れができていると思う。ただこのまま行くと、海外のリーグにほとんどのいい選手が取られてしまう可能性もある。そこをWEリーグがどうしていくかを考えていく必要がある」
──日本人のFW不足がある。長谷川唯をトップ下とか2列目に使う手はないか。
ニールセン監督
「いいアイデアだと思う。ゴールが必要なときは高い位置でと考えている。どこで長谷川がチームにインパクトを与えられるかというときに、もちろんゴールを決めるときもあるが、彼女のいいところはどこに走ればチャンスを作れるかの見極め、賢さがあること。どうしてもゴールを背にしたりすると、スピードの面やサイズの面で難しさもある。ただフィニッシャーとしての能力はすばらしい。これまでは長谷川がパスの供給能力が高いことと、ほかの選手が得点を取る力が強かったこともあり、ボランチで使っていた。最近は、攻撃的なポジションでやることが多いとは思う。ストライカーまでいくと、彼女の良さを最大限まで引き出せないかなとも思う。比較的最近は、攻撃的MFの位置にしている」
──11月のカナダ戦では、直前で選手側からプレスの駆け引きに関して要望があってうまくいった。アジア杯でのチームの作り方は。
ニールセン監督
「質問に関しては両方。選手の自主性や戦術面の詳細、同じくらいのミックスになる。もちろんプレスやディフェンスのやり方は、相手の分析をしたうえで、ある程度読める部分はあるかなと思う。そこに関しては、細かく指示を出す可能性はある。もちろんそのためにトレーニングの詳細は詰めていく。ただゲーム中に関しては、選手が一番見えている。選手の力を信じているので、選手が感じたことを自由にやってもらいたいという面もある。特に、田中美南に関しては、非常にすばらしいものを持っている。予測がすばらしい。あと2ステップ前に出ることでプレスがかかる、ということを彼女であればわかっている。それによって自分たちのゴールチャンスを作れるということもある。そういった選手の自主性は奪わないようにしたいので、ミックスになると思う。最終的にこのような大会で優勝するのは、ミスが少ないチームではなくて、試合中に対応できたり、相手がしてきたことに対して順応できるチーム。今回もミックスで、できるだけ選手の自主性も踏まえながら、うまく戦術面も伝えていきたい」
──コンディション調整について、1次リーグは中2日の過密日程であり、W杯出場が懸かる決勝トーナメントも大事。コンディションのピーキングをどう考えるか。
ニールセン監督
「コンディションについてはそれぞれ選手によって違うので、シーズン中の選手は休養が必要な場合もある。シーズン前ということでフィジカルのトレーニングをしている選手には、また違ったトレーニングになる。それはテクニカル、コーチングスタッフの中で選手のコンディションを見極めて、いいコンディションを作っていくことがチャレンジになる。ただ、われわれが考えているのは一試合ずつ勝っていくことで、しっかりと相手を警戒して勝っていくこと。後々の決勝トーナメントに行ったとき、3勝で突破できれば移動の面では助かる。そこはできるだけ一試合一試合集中して勝っていくことを考えている。もちろん優勝が懸かった試合や、準々決勝、準決勝でまったく体力がないことは避けたい。できるだけ重要なゲームで力を使い切れるように、選手のコンディションを見ながらローテーションで回していきたい。基本的には各ポジションに2、3人くらいオプションがある。特にグループリーグは90分の試合を中2日で戦わないといけない。1試合目、2試合目ではなかなか100%の力を出し切れない可能性もある。オプションがあるポジションは、しっかりと違う選手を使っていきたい。最終的に勝負が懸かるような重要なゲームで、ディフェンス面でもオフェンス面でもクオリティの高い選手を使いたい。どの選手が次の試合に出るかは、常に夕食の場でコーチングスタッフの中でも議題にのぼるのかなと思っている」
──ニールセン監督就任時に、評価のポイントとしてアジア杯があると言っていた。今回、技術委員会としてどのようなことを表現してもらいたいか。
佐々木女子委員長
「今年度の契約もあるが、日本で行われたカナダ戦2試合もよくなっていたし、それも含めて今回のアジア杯の戦い方にも評価的な要素は加わってくる。いずれにしても、大会が終わったなかで判断していきたい」
──これまで長谷川と谷川萌々子の共存があまりないが、今大会はどうか。
ニールセン監督
「谷川選手もコンディションの問題で100%でキャンプに来られなかったり、長谷川も怪我やコンディションの問題で参加できなかったり、2人が一緒にプレーできることが逆になかなかなかった昨年だった。もし2人とも完璧な状態であれば、非常にすばらしいプレーをしてくれたと思っている。基本的にはトレーニング中に準備ができている選手、調子がいい選手にチャンスを与えたい。1年前にいい状態でも、直前の練習で調子がよくなければ試合には出られない。2人ともすばらしい選手だが、なかなかそのときの状況がよくなかったと思う。谷川は非常にすばらしく、シュートレンジの長い両足を持っている。長谷川は戦術的に賢く、それはイングランドでもボール奪取率の高さが示している。2人とも今の日本代表にとって非常に重要な選手になると思っている。2人ともいい調子であれば、まったく問題なく共存できると思っている」
──高橋はなと古賀塔子はここまでCBとSBで起用されている。今大会はどうか。
ニールセン監督
「すばらしい質問。2人とも色んなポジションができる。2人は昨年もすばらしいパフォーマンスを見せてくれた。幸運なことに2人ともCBでもSBでも強みを出せるすばらしい選手。高橋は空中戦に強い選手。チームで一番ヘディングが強い。場合によっては前線に上げて得点を狙ってもらうこともある。それだけ複数のポジションができて、すばらしい選手だと思っている。古賀もすばらしい。理想をいえば2人ともCBで戦ってほしい。なぜならSBに北川ひかるや清水梨紗が怪我から復帰しているので、基本的には高橋と古賀にはCBでプレーしてもらいたい。何かあればSBもあるが理想はCB」
──優勝を目指すうえでチームで具体的に取り組みたいこと、この期間で成長してもらいたいポイントは何か。
ニールセン監督
「まず取り組むことは、いまリーグで出場時間が長い選手にはしっかりリカバリーを取ってもらうこと。その後にまずはゲームモデルに取り組みたい。ただ、ある程度ゲームモデルは明確になっていて、対戦相手ごとにそれぞれ異なるポイントがあると思うので、そこに関して細かいところをしっかり調整して、いいゲームができるようになりたい。あとは自信を1か月の間につけること。先ほども一試合ずつ勝っていくと言ったが、試合に勝つことで自信がついていく。得点を取ることは難しいことなので、得点を取ることで自信をつけて、よりよいゲームをしていきたい。こういった大きな大会、トーナメントは生き物というか、非常に不確定要素も大きい。特に2チーム、北朝鮮とオーストラリアに関しては、まったく違ったチームになると思う。特にオーストラリアは母国開催なので、まったく違うようなチームになると思っている。このチームに関しては、また違った対策が必要かなと思う。あとは韓国、中国に関しては、歴史的に見てもアジア杯ですばらしい成績を残している。あと、だいたいこういう大会になるとダークホースというか、サプライズを起こすチームが出てくる。そこはどこかはわからないが。なので、一試合ずつ勝っていきたい。最終的にトロフィーを掲げて日本に戻ってきたい」
──シェフ帯同も含め、協会のバックアップ体制はどうか。
佐々木女子委員長
「もちろん、そういった相談やミーティングをしていく。いい準備をするに尽きると思うので、さまざまな分野があるので、最大のバックアップをしながら、厳しい戦いなので準備をしていきたい」
──就任後初の重要な大会となり、選手にもこれまでとは違った大きなプレッシャーもかかる。どうアプローチをしたいか。
ニールセン監督
「最大のパフォーマンスを出すために、心的安全性が重要になってくる。そういうところへのサポートができるような環境を作っていきたい。心的安全性があればより決断しやすかったり、選手が恐れなく、自分らしいプレーができると思っている。これは選手のみならず、スタッフにも言える。すばらしいスタッフでそれぞれ専門家が揃っているが、選手・スタッフをそれぞれ尊重して、いかに働きやすく、一緒に勝っていく雰囲気を作っていくかが重要だと思っている。もちろんトレーニングでもそうするし、ちょっとしたコメントや会話でも、今もよくなっているし、教室で話すような一方的な教える形ではなく、いかに作り上げていくかが重要になる。よりよいチャレンジができるようになり、最終的な目標を達成できるようになる。なでしこジャパンは、花のような存在。すばらしい花であれば、蜂が蜜を吸おうとたくさん周りに集まってくる。その蜂がしっかりと蜜を集めることによって、すばらしい蜜ができる。香りが強いものに惹かれる習性があるので、メディアやその読者、ニュースを見る人も、なでしこジャパンの一員。いかに協力してすばらしい蜂蜜を作るかというところで、協力できればと思っている。基本的には、選手に心的安全性、感情的な安全性が感じられれば、ミスをしても自信を持ってプレーできる。そういった安全性を監督としては提供していきたい。もし水中でおぼれた人がいたら浮き輪を投げると思うが、そのときに何もしないのではなく、チームや選手が見失ったことがあれば何かしら助けをかけてあげたい。なでしこという花があるので、周りに集まる蜂のように、皆さんと協力してすばらしい蜂蜜を作っていきたい」
──優勝できなかったE-1選手権のように、アジアは日本の良さを消してくる。どう対応したいか。
ニールセン監督
「E-1選手権ではたしかに得点が取れなかったり、プレーが遅くなったりしていた。言い訳になるかもしれないが、大会のフォーマットもあって3位になった。選手たちはすばらしいプレーをしてくれた。勝つために何が必要か、ピッチ上の選手たちがすべて見せてくれた。選んだ選手はどの選手も出たと思うので、1ゴールを奪えなかったが、1ゴールを奪えてさえいれば優勝の可能性もあったかもしれない。3位という結果には満足していないが、選手のプレーには非常に満足している。そこから学んだことは、勝ち切ることが大事ということ。アジア杯では一試合一試合しっかり勝って、次の準備と考えていきたい」
──最後に。
ニールセン監督
「就任してから常に伝えているが、選手、スタッフだけではなくて、メディアやファンがあってのチームだと思っている。いかにお互いに助け合いながら目標のタイトルを取れるか。タイトルを取るためにはみなさんの力が必要だと本気で思っている。できるだけ協力して、美味しいハチミツを作っていきたい。オーストラリアのサム・カーのように一人でもタイトルを取れるようなすばらしいチームもあるが、日本は一人のビッグなスターというよりは、みんなで力を合わせて解決策を見つけて支え合っていい雰囲気を作り出して、最終的に目標としているゴールに向かうところがある。今後とも必ず、皆さんの力が必要になる。いい協力関係を築いていけたら」
(取材・文 石川祐介)
●女子アジアカップ2026特集



