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先制FKの横浜FM MF中村「逆転ほどパワーを使うものはない」

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[3.2 J1第1節 横浜FM4-2湘南 日産ス]

 試合の流れを無視する一撃だった。前半40分、J1に昇格したばかりの湘南ベルマーレを相手に、完全に劣勢の試合展開を強いられていた横浜F・マリノスだったが、先制点を挙げている。決めたのはMF中村俊輔だった。左サイドで得たFKを、得意の左足で直接ゴールに決めた。宮崎キャンプでも鋭いFKを見せ、直接FKからのゴールを予告していた日本有数のプレースキッカーは「ニアを狙ったけれど、風でコースが変わった。リプレーを見ていないからよく分からないけど、GKもクロスを予想して早く動いたから入ったと思う」と、軌道には納得していないようだった。

 同じく気にしていたのが、2つの失点だ。「ミスからとマークのズレ。結構、相手に3-4-3の良さを出させてしまった。(同じ3-4-3の)サンフレッチェ(広島)や(浦和)レッズには相手に持たれると割り切って、引けばいいけど、またああいうフォーメーションのチームが増えてくると思うから、ズレをどう抑えるかが課題だと思う。ドゥ(ドゥトラ)がサイドでどうしても2枚見る形になるから、向こうにマークをさせるような攻撃ができるようになれば良いと思う」と、課題を口にした。

 それでも、J1に昇格し、勢いのある相手に対し、開幕戦で勝てたことは納得している。その理由について「昨年の札幌もそうだけど、最初にやりたくないよね。選手も分からないし、元気が良い」と中村は言う。その中でも、経験を見せることはできた。「開幕でJ2から上がってきて元気な相手に対し、これだけおっさんがいたらね(笑)。後半勝負じゃないけど、前半は相手の方が風も良かったし、まずは耐えようと。点が動いたときに向こうも間が空いてきた。そのタイミングで藤田(祥史)とか(齋藤)学が入って来たのは良かったと思う。昨年の鳥栖もだけど、夏まではどのチームも元気な相手をクリアーできなかったから。最初は肉弾戦というか、空中戦のセカンドボールで急にチャンスになったりする。そういう戦い方でも、ある程度今日は粘ってできたし、今後、湘南のようなチームに手こずるチームも出て来ると思う。そう考えると、ホームで勝てたので悪くはないと思います」と、振り返った。

 一時、1-2とリードを許したが、焦りは全くなかったという。「(焦りは)ないです。間が空いてきたし、逆転しても相手の勢いが逆になくなった気がする。決めるところで決めればと思っていました。(決定機で)マルキの左足が外れても、雰囲気が悪くならないように声を掛けてやれた」。湘南の選手たちは、横浜FMが試合中に鋭いドリブルを持つMF齋藤学を起用したり、4-2-3-1から4-4-2に布陣を変更してきたことで戸惑ったと口々に話していた。中村も、その点をポジティブに振り返った。「負けているときは、オレがボランチに入ったり、(齋藤)学が入ったり、2トップで藤田が入ったりして、フォーメーションだったり、人を入れ替えてなんとかすることを確認できたし、いろんなことを試しつつ、勝てたことは大きい。本当は2-0で勝てれば一番良いけど、いろんなことを試して勝てた。逆転するほどパワーを使うものはないからね。こんなにパワー使いたくないけど」。シーズン初勝利に安堵する中村は、そう言って笑顔でスタジアムを後にした。

(取材・文 河合拓)

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