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神奈川ダービーで手応えと課題を得た湘南

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[3.2 J1第1節 横浜FM4-2湘南 日産ス]

 3シーズンぶりとなったJ1の舞台で、湘南ベルマーレは手応えと課題がしっかり見えた。後半16分にはFWキリノが、この試合2点目を挙げるなど、昨シーズンのJ1で4位にいた横浜F・マリノスを追い込んだ。しかし、90分を終えて勝利をモノにしたのは、横浜FMだった。

 横浜FMのMF中村俊輔は「1-2に逆転されたのに、(湘南の)勢いが弱まったから不思議だった」と、首をひねる。さらに「そこでメッチャ守られて、速攻でキリノとかに行かれたら嫌だったけど、それで安心したのかな?」と言い、「ボランチとブラジル人が良かったよね。それが弱まると、後ろまで響く感じを受けた。でも、(自分たちにとっても)大きい。あのまま勢いがあったら、負けていたかもしれないからね」と、湘南の力を認めている。

 試合について「選手たちは100%ないし、120%の力を出してくれた」と、敗戦にも胸を張る曺貴裁監督だが、リードしてからの試合運びについて反省している。「みなさんも誰もあの展開でウチが2-1でリードするとは予想されなかったと思います。選手も、そういう所でどうしようかと迷ったのかもしれません。私の伝え方、マネジメントが不足していたと思っています」。

 だが、選手たちの意図は明確だったようだ。MF高山薫が「うちは守りに入ることはしないと思います。1点リードしても、もう1点取りに行く」と言えば、キャプテンのMF永木亮太も「リスクを背負って、前に行くのが湘南のサッカー」と、同調する。ただし、その意図を結果につなげられなかったため、永木は「リードしてからの戦い方は経験のないチームだなと思いました」と振り返っている。

 また、相手の違いも大きかった。高山は試合中に横浜FMが見せた変化に脱帽した。「J2でも千葉なんかは、選手を代えて流れを大きく変えてきましたが、J1はそれが普通で、それ以上になってくる。今日も齊藤学が入ってきて、中に切り込まれてシュートも決められた。交代の選手でああいう選手が入ってくるのは、初めてだった」と、舌を巻く。また、永木は「向こうが2トップになってから、うちの3バックがやりにくそうだった。さらに運動量が低下して(パスを)受けられなくなり、マイボールの時間が減ってしまった」と唇を噛んだ。

 攻撃時も、守備時も前へ前へと、爆発的に飛び出していく湘南のサッカーは、消耗が激しい。「後半は終始、ボールを回された」と高山が振り返るが、技術の高い選手がそろうJ1で戦う上で、どうゲームコントロールをしていくかは、湘南の大きなテーマになる。永木も「全部を全部、急いでしまうと、ボールを失くす可能性が高い。手数を掛けない速攻が狙いですが、ボランチが1枚落ちてボールを回すなど、保持する時間を長くすることも必要になると思う」と、2013シーズン初戦を終えて振り返っている。

 それでも選手たちに、悲観している様子はない。むしろ目を輝かせている。永木は言う。「できたという感触と、まずいなという感触、両方あります。まちがいないのは、ウチに90分を戦うゲーム体力がなかったということ。今日は良い経験になりました」。目標としていたJ1の舞台で戦うことで、さらなる成長ができると確信した選手たちは、今後どう進化していくか。

(取材・文 河合拓)

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