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決勝FKの広島MFパク・ヒョンジン「セットプレーは僕の武器」

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[7.6 J1第14節 F東京 0-1 広島 味スタ]

 試合はスコアレスのまま、後半のロスタイムに入っていた。サンフレッチェ広島はPAのすぐ外で、MF高萩洋次郎からのパスを受けたMF石原直樹が倒されて、FKを獲得する。ボールの側には、高萩と後半39分から出場したMFパク・ヒョンジンが立った。どちらも、FKには自信を持つ。このときのやり取りを、パク・ヒョンジンが明かす。

「洋次郎さんに『蹴るか?』と聞かれたので、蹴りたいと答えました。信頼してくれて、キッカーを譲ってもらいました」。高萩は、ただ譲っただけではない。後半ロスタイム、決めれば勝ち点3、外せば勝ち点1で終わるという状況で、3歳年下のMFのプレッシャーを軽減させていた。「洋次郎さんは『時間をたっぷりあるから。自分のタイミングで蹴ればいい』。そうアドバイスしてくれました」。

 もともと、パク・ヒョンジンもFKには自信があった。「自分の武器だし、自信はありました。練習や練習試合のときも蹴っていましたし、そのときは常に公式戦で蹴ることを想定しながらやっていました」。その持てる力を存分に発揮できたのも、高萩の言葉があったからだろう。パク・ヒョンジンが左足を振り抜くと、ボールはFC東京のゴールに吸い込まれていった。

「本当に狙ったとおりのところに蹴ることができました。このリーグ戦初ゴールが、決勝ゴールになったのは自信にもつながります。良いときも悪いときも使い続けてくれた監督に感謝したい。セットプレーは僕の武器ですし、もっともっと精度を高めて、チームに良い栄養を与えられるように頑張っていきたいと思います」

 得点後、チームメイトたちから手荒い祝福を受けて、首にひっかき傷が出来たという。だが、ミックスゾーンでは「今は痛みを感じないくらい、嬉しいんです」と、満面の笑みを見せた。この活躍を受け、周囲はスタメンへの飛躍を期待する。だが、韓国代表入りを目標に掲げる23歳のMFは、冷静だ。

「もちろん、スタメンは狙っています。でも、どんな時間帯から出ても、チームのために走るという僕の持ち味は変わりません。アウェーで勝ち点3を取れたことは重要だと思いますし、嬉しい。こういうプレーを続けていきたい」

 一度結果を出せたからと周囲に惑わされることなく、しっかりと足下を固めていく。昨季のJリーグ王者の中で、着実に次世代の選手は育っている。

(取材・文 河合拓)

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