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昇格決める先制ヘッド!徳島DF千代反田「苦労した1年が報われた」

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[12.8 J1昇格PO決勝 京都0-2徳島 国立]

 1年間の思いを乗せた渾身の一撃だった。徳島ヴォルティスは前半39分にMFアレックスの右CKからDF千代反田充がヘディングシュート。MF秋本倫孝を振り切り、フリーで叩き込んだ。

「前半やっていて、厳しいかなと思っていた。どうやって攻撃したらいいのかなと」。チームのファーストシュートは前半33分。京都に押し込まれていた時間帯につかんだセットプレーのチャンスだった。

 CK時のチームの約束事は、千代反田とDF橋内優也のうち一人がゴール前でブロックし、それによって空いたスペースにもう一人が走り込むというもの。しかし、この場面では千代反田、橋内の2人がそれぞれマーカーとの駆け引きからゴール前に飛び込んだ。

「うちはセットプレーでずっと点が取れていなかった。僕もハシ(橋内)もマークを外すのは得意だし、そこは2人とも自信がある。あの場面では『2人で走って行こう』と話した」。選手間での臨機応変な“奇策”が相手の裏をかき、貴重な先制点につながった。

 今季、磐田から完全移籍で加入した千代反田にとっては特別な感情があった。福岡、新潟、名古屋、磐田でプレーしてきたCBは「磐田とも契約が残っていたし、本当は今年、徳島にいなかったかもしれない」と言う。福岡時代の05年以来、8年ぶりのJ2挑戦。「精神的にもJ2に行くというのはきつかったし、自分が思っていた以上に(J1とは)違った。いろんな苦労もあったし、いろんなことを考えさせられた」。悩んだ末の決断は、現実としてピッチの内外で想像以上に厳しいものがあった。

「よく耐えたかなと。1年間、何とか踏みとどまることができた。あのゴールで、苦労した1年が報われたのかなと思う」。クラブ史上初のJ1昇格は、四国勢の悲願でもあった。「徳島にとっては新しい1ページになる。それはよかった」と笑みをこぼす千代反田だが、来季に向けては相当な覚悟と我慢が必要だと考えている。

「J2の4位ですから。断トツの18位でもおかしくない。ガンバなら戦えるかもしれないけど、過去を見ても2位、3位、4位で上がったチームは苦労している。それを分かったうえで何がやれるか。それを考えたうえでみんなでやるしかない」

 昨季の昇格プレーオフを制してJ1に復帰した大分も今季のJ1ではわずか2勝に終わり、最下位でのJ2降格が決まった。歓喜に沸く一方で、純粋に喜んでばかりもいられない。「J1は厳しいと思うけど、みんなで何とかもがいて、少しでも最後に『今年もいいシーズンになったね』と言えるようにがんばりたい」。来季を見据え、千代反田は表情を引き締めた。

(取材・文 西山紘平)

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