[4.29 J1第10節 浦和1-0横浜FM 埼スタ]

　背番号20はフリーになっていた。スコアレスで迎えた後半11分のCKの場面、思い切り良くゴール前に突入した浦和FW李忠成は、ゴールネットを豪快に揺らす。値千金の決勝点を奪ったストライカーは、狙いどおりの得点だったと振り返った。

　MF柏木陽介がCKを蹴る前に、ゴール中央に集まった選手たちは話し合いを行っていた。「誰がニアに入るのか、ファーに入るのか、真ん中に入るのか話していた。那須(大亮)さんや阿部(勇樹)ちゃんがニアに相手を引き連れてつぶれてくれたから、僕が走り込むスペースが空きました」。その言葉どおり、フリーでゴール前に走り込んだ李はヘッドでドンピシャのタイミングで合わせて決勝点を突き刺したが、「皆で取ったゴール」とお膳立てしてくれたチームメイトへの感謝を忘れなかった。

　前半から横浜FMのタイトな守備に苦しんだ。クサビのパスを引き出そうとも、日本を代表するCBであるDF中澤佑二やDF栗原勇蔵に体を寄せられて前を向いてプレーする機会は限られた。本人も「前半は我慢の時間帯が続いてきつかった。自分のところでボールを収められなかったので、そこでドッシリとキープできればもっとチームに貢献できると思う」と反省を口にしている。

　しかし「泣きそうでした(笑)。メッチャ疲れましたから」と話したように、攻撃面だけでなく90分間前線から相手を追い掛け回すなど守備面での貢献も光った。泣きそうなくらい走ったが、それが本人にとっては心地よいものだったようだ。「泣くぐらい走れたのが、正直うれしいですね。海外にいたときには試合に出ることができなかったから」。

　リーグ戦では第6節仙台戦での決勝点以来となる、今季2度目となる試合を決めるゴールに「決勝点はフォワードの醍醐味みたいなものです。もちろんチームメイトのおかげですが、すごくうれしいですね。今日は素直に喜びたいと思います」と笑顔で語った。

(取材・文　折戸岳彦)

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