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“修羅場”味わった清水、乗り越えた苦闘のシーズンを「もっと上のステージで繋げていかなければ」

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[12.6 J1第34節 清水 0-0 甲府 アイスタ]

「不甲斐ない1年だった」とMF本田拓也は振り返る。静岡の雄、清水エスパルスにとって降格圏から勝ち点1差のJ1残留は納得のいくものではなかった。それでも負ければJ2降格の可能性もあった最終節で清水は引き分けという最低限のノルマを果たし、自力でJ1残留を果たした。

 かつて一度もJ2に降格したことのない名門・清水にとってはまさに“崖っぷち”の戦い。ただ本田が「(竹内、平岡、ヤコヴィッチと本田の)真ん中の4枚で失点しないことを話した」と振り返り、FW大前元紀が「少なからずチームは勝とうと思っていたけれど、失点しなければ残留できるとみんな頭のなかにあったと思う。一人ひとりがサボらず、守備をしてゼロで抑えた結果が残留できたと思う」と説明したように、清水は攻撃的な姿勢で臨みながらも失点しないこと、負けないことに注力した。

 サイドの大前やFW高木俊幸が運動量を増やし、ゴール前ではわずかにできたギャップにスルーパスを通そうとしてくる甲府の攻撃をCB平岡康裕やCBヤコヴィッチが阻止。そしてGK櫛引政敏がゴールを捉えて来るシュートを冷静にストップしていく。攻撃はいつも以上にロングボール中心となり、後半開始直後に大前が迎えた決定機も決めることはできなかった。それでも19,824人が駆け付けたサポーターの声を後押しにチームは戦い抜く。「アップからモチベーションというか気合も入りましたし、勝たなきゃいけないと思っていました。チーム全員がいつもより、戦っていた」(MF竹内涼)という清水はハードワークを徹底して我慢強く戦った。

 それでも後半の流れは甲府に傾き、特に終盤は押し込まれ、相手アタッカーたちに仕掛けられる回数が増えた。1点取られれば絶体絶命という状況。清水の大榎克己監督も「ジュビロのこの前の参入戦のことが凄く頭をよぎりました。同点で行っている時に最後の3分ですかね。よぎりましたね。ピンチもありましたけれど、良く集中してくれていました」とJ1参入戦で磐田が終了間際の失点によって千葉に敗れたシーンが頭をよぎったことを説明していたが、最後はU-19日本代表のCB三浦弦太も投入して全員で守り切った。

 もちろん、15位と言う結果に満足はしていない。だが、この苦しいシーズンは今後への糧となるはずだ。竹内は「(この日の試合は)何とも言えない雰囲気でしたけれど、個人としてはそこに立っているのは幸せだと思いましたし、なかなかこういう経験はしたくないですけど、この経験を乗り越えられた。自分としては結構大きな修羅場だったと思うし、Jリーグ全体から見たらただの残留争いかもしれないですけど、当事者になってみて初めて感じることだったり、すごいプレッシャーの中でサッカーをする経験はもっと上のステージで繋げていかなければいけないなと思いました」。また櫛引は「結果を出さないとJ2降格ということもあったので、(きょうは)凄い気持ち入っていたし、でもこういうプレーができるんで、普段からこういうプレーをしていけばもっといいチームになれるのかなと思います」。苦しいシーズンの中で学んだことを来季必ず活かして上位、優勝争いに食い込む。

(取材・文 吉田太郎)

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