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原口元気×関根貴大 浦和の新旧24番による特別対談

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 昨夏、浦和レッズからブンデスリーガのヘルタ・ベルリンへ移籍したFW原口元気。昨季、浦和のトップチームに昇格し、今季から原口が背負ってきた24番を受け継いだMF関根貴大。ともに浦和の下部組織で育ち、小学生のころから原口が「あこがれの存在」だったという関根。そんな後輩を何かと気にかけ、浦和の“顔”になってほしいと語る原口。4歳違いの2人のサイドアタッカーによる貴重なロング対談をお届けする。

2人のドリブラーが語る
お互いの“共通点と違い”


―関根選手から見て、原口選手はどんな先輩ですか?
関根「今も昔もあこがれの存在です。小学生のころに元気くんが出場していた全日本少年サッカー大会や全日本少年フットサル大会も見ていました。そのときから元気くんのドリブルが大好きでしたね」

―原口選手はいつごろ関根選手の存在を知りましたか?
原口「いつだったかなあ……。でも、クラブのスタッフから『お前みたいなヤツがいる』と言われていて。そうしたら、こんなヤツでした(笑)」

―2人がちゃんと初めて話したのはいつごろでしょうか?
関根「元気くんがユースのときに一度だけ話したことを自分は覚えています。元気くんは覚えてないと思いますが、自分が中1で、元気くんが高2でした」
原口「覚えてないですね……。でも、(関根のことは)よく聞いていたので。『原口2世』と言われていましたから」
関根「僕もそういうふうに言われていました」
原口「でも、タイプは違いますからね。ドリブルが好きという共通点はあるし、前へ行くというのも共通点ですけど、ドリブルの特長は違いますし、そこまで似ているとは思わないですね」

―ドリブルの種類が違うということですか?
関根「ドリブルの仕方は本当に違うと思いますね」
原口「間合いも違いますね。タカは縦に速いタイプですけど、僕はロングドリブルというか、長い距離をドリブルしていくほうが得意ですね」
関根「元気くんは結構、繊細に行きますけど、自分はゴリゴリなので(笑)。そこも違うと思いますよ」
原口「右サイドのほうがやりやすいの?」
関根「いや、左のほうがやりやすいです」
原口「この間、レッズの試合を見ていたら、右サイドのほうが仕掛けやすそうにしていたから。そんなことない?」
関根「ああ……。でも、本当は左のほうが行きやすいんですよ。右足でボールを持てますし」

―サイドによってボールをコントロールする足も変わるんですか?
関根「右サイドでは左足で持つことが多いですね」
原口「俺はどちらのサイドでも右足かな。でも、縦に行きたいときはアクセントとして左足で持ち出したりしますね」

―原口選手はヘルタで右サイドでの出場も多かったですが、左右のサイドが変わると、意識するプレーも変わりますか?
原口「あまり変わらないですね。左サイドで出ているときはシュートを狙いやすいけど、それは右足と左足のシュート精度に差があるというだけ。右サイドで出ても、お互いに左足でもシュートを打つタイプだと思いますし、特に違いはないですね」
関根「元気くんのカットインからのシュートというのは真似したいですね。そこは自分にまだまだ足りない部分だと感じています」
原口「縦のほうが行きやすいの?」
関根「中へのほうが行きやすいんですけど、縦に行きますね。よく『縦に行け』と言われているので」
原口「そうなんだ」
関根「『中に行っても、お前は(シュートを持って)ないでしょ』と思われているので。だから、そういうプレーをしたいなと思っています。それができれば、もっと怖い選手になれるのは自分でも分かっていますし、右サイドから中に切れ込んで左足でシュートというのは絶対に必要になってくると思うので」

―原口選手は縦に行くときと中に行くときの使い分けについてどのように考えていますか?
原口「そこは相手との駆け引きなので、どちらかというのはないですね。ただ、僕は中に行くほうが面白みを感じますね。一人目をかわして、次の一人が出てきたときに面白いことができるんじゃないかなと。縦は行こうと思えば行けるんですよ。でも、面白いのは中に行ったときですね。ただ、(ヘルタでは)あまりそういうシーンがないんです。なかなか高い位置でボールをもらえないので、ロングドリブルが多いですし、浦和のときのようにサイドに開いてボールを受けて『さぁドリブル』というシーンがあまりない。そういうシーンが増えてきたら、僕自身もっと特長が出せるんじゃないかなと思っています」

―関根選手は中に入ったときの怖さがないと話していましたが、原口選手は左足のシュートに関してどんな意識で取り組んできたんですか?
原口「そこはノリで打っちゃえばいいと思いますけどね」
関根「まあ、そうですよね」
原口「別に(関根に)パワーがないわけではないし、(コースが)いいところに行けば入りますから。左足って器用に蹴れないんですよ。だから勢いが大事」
関根「確かに勢いで行ったほうが力が抜けて、いいシュートが打てるときもありますね。狙うというより、振り抜くほうが……」
原口「振り抜いたほうがいいと思うよ」

背番号24への思い
いずれは14番に?


―原口選手がドイツへ移籍する前に、大原の練習場で2人で1対1の勝負をしたそうですね。
原口「単純に面白そうだったので誘ったんですよ。(関根は)速いし、いい勝負ができるかなと思ってやったんですが……。余裕でしたね(笑)。守備ができない」
関根「僕はずっと『守備ができない』と言われていたんですが、本当にこてんぱんにやられました。元気くんよりドリブルがうまい人はいないですし、良い経験になりました」
原口「でも、やっぱり攻撃の部分は速かったから、やられそうになった部分もあったし、やられたときもあったけど、守備がひどい」
関根「そうですね。ひどかったですね(苦笑)」
原口「でも今年のレッズの試合を見ていると、改善している部分もあったし、簡単にはやられなくなったなというのは見ていて思いましたね。そっち(守備)も大事ですから」

―関根選手は1年目こそ背番号26でしたが、今季から24番になりました。24番と言えば、原口選手が長年付けていた番号ですね。
関根「24番は1年目から意識していました。(1年目も)24番は空いていたので、もらえるかなと思っていたんですが、もらえなかったので……。今年は自分から『24番を付けさせてください』と言いました。今シーズンは新加入の選手が11人くらいいたので、その中のだれかが付けることになったら手遅れだなと思ったので。そうしたら大丈夫でした」
原口「2代目もちゃんと活躍してくれているので、うれしいですね。出世番号みたいになってほしいですね」

―原口選手にも関根選手に24番を付けてほしいという気持ちがあったんですか?
原口「強い思いがあったわけではないですけど、付けてくれたらいいなとは思っていましたね」
関根「『24番、付けたいんですよね』という話はしていました。今年、24番になったときにも連絡しましたから。『他のだれかが付けるならお前に付けてほしかった』と言ってもらえたので、その言葉はすごく覚えています」

―原口選手はもともと24番に思い入れがあったんですか?
原口「いや、浦和で付けるようになってからですね。ユースのとき、何番だった?」
関根「14です」
原口「俺も14」
関根「14番が好きなので、代表のときも14番を付けています」
原口「俺もユース代表のときはそうだったな」
関根「14番がダメだったら24番みたいな流れがあるので(笑)」
原口「俺もそうだよ(笑)」

―原口選手は浦和での最後の半年間、9番を付けました。関根選手も将来、浦和の9番というのはどうですか?
原口「それこそ将来的には14番を付けたらいいんじゃない? 俺はヒラさん(平川忠亮)がいたから14番は付けられなかったけど、いずれは14番を付けたら似合うんじゃないかな。9番は、ちょっと違うかな……」
関根「特別な番号ですからね」

―原口選手が9番を付けていた半年間、やはり感じるものはありましたか?
原口「そうですね。やっぱりチームが一番大事にしている番号なので。その責任感というか、純粋にモチベーションが上がりますよね。埼スタに行って、ロッカールームに入って、9番のユニフォームがロッカーにかかっているのを見ると、やっぱり違いますね」

―関根選手は第1ステージで4ゴールでしたが、原口選手が同じ年齢のときに記録したシーズン9ゴールという数字を意識しているそうですね。
関根「今シーズンが始まる前に元気くんから言われたんですよ。年齢的には元気くんの3年目が今の自分と一緒なんですが、元気くんはそのとき9点取っているので、その9点を上回れば、数字的には元気くんを超えたということになるのかなと」
原口「そうなったらお前の勝ちだよ」
関根「そこはやっぱり目標ですね。今年は2ケタ取るのが目標なので」
原口「最初、5点が目標って言ってなかった?」
関根「最初は5点って言ってましたね」
原口「だから『俺はお前の年齢のときに9点取っていたぞ。それを超えなかったら俺の勝ちだから』と言ったんですよ」
関根「できれば前半戦が終わったときに5点取りたかったんですけど……」
原口「その1点は違うね(笑)」
関根「やっぱりここ最近は得点が取れてないですし、得点を取る難しさをあらためて感じています」
原口「でも、ゴール前に入ってくるタイミングが速くなったよね? ゴール前にちゃんと入っているし、あれは(点を)取れるなと思うよ。左でうまく崩しているときに、いいタイミングで右から入ってきているから。あれをやり続ければ、点は取れるんじゃないかな」

―原口選手は浦和在籍時にタイトルを取れませんでしたが、今シーズンの第1ステージ優勝を見てどうでしたか?
原口「うらやましいですよね。僕には浦和でタイトルを取るという縁がなかったですけど、後輩が頑張ってくれたので。タカみたい選手がもっと出てきてほしいと僕は願っています」
関根「まだ第1ステージなので。そういった意味ではまだチーム全員が満足していないですし、去年は2位という結果に終わりました。年間勝ち点1位になって、チャンピオンシップで優勝してこそ、去年味わった悔しさも晴らせると思うので、しっかり戦い続けたいと思います」

「追い付きたいし、追い越したい」(関根)
「浦和の看板選手になってほしい」(原口)


―関根選手はリオデジャネイロ五輪を目指す世代ですが、手倉森誠監督からはなかなか招集の声がかかりません。原口選手もロンドン五輪のメンバーから漏れる悔しさを味わいましたが、年代別代表に選ばれることの難しさや意味というのはどう考えていましたか?
原口「僕の場合はA代表との兼ね合いもあって、最後にアピールしたいタイミングでA代表に呼ばれたというのもありました。それも今となっては良い経験になっていますが、もちろんオリンピックには出られたほうがいいに決まっていますし、タカにとってもオリンピックは一つの目標だと思います。選ばれる力はあると思うので、必要とされるときが必ず来ると信じてやり続けるしかないですね。今のパフォーマンスを続けることがオリンピックにもつながると思います」
関根「オリンピックにはもちろん行きたいですけど、選ばれていないのは、まだまだだということだと思います。選ばれる選手はどんな監督でも選ばれると思うので、自分もそれだけの実力を付けていかないといけないと思っています」
原口「こういうタイプの選手は最後にいきなり呼ばれても大丈夫ですから」

―2人の共通点としてナイキの『マーキュリアル』を履いていますね。
原口「僕たちの特長に合っているスパイクだと思いますね。軽いですし、より速くなれそうな感じですね」
関根「これを履いているときはイメージも速くなりますね。この生地(素材)が好きなんです。馴染んでくると気持ちいいんですよ。履き心地が好きですね」

―原口選手はスパイクにこだわりはありますか?
原口「結構、気にしますね。試合のときは、馴染んでいる2つのスパイクを持って行って、最後の最後までどっちを履くか悩んだりします。アップはこっちだったけど、やっぱり試合ではこっちにしようとか。同じスパイクなんですけど、履いた回数によって微妙に違うので。ピッチ状態を見て、どっちがいいか決めることもありますね」

―スパイクのコンセプトにもなっていますが、サッカーにおける個の力の重要性についてはどう考えますか?
原口「ドイツに行ってから、個の重要性はより感じています。そこが一番大事なポイントじゃないかなと思いますね。僕たちは自分で仕掛けられなかったらダメなので、そこへのこだわりは強く持っていますし、向こうに行ってからさらにそう思うようになりましたね」
関根「組織も大事ですけど、なぜJリーグのクラブが外国籍選手を取るかと言ったら、やっぱり個の力が大事になってくるからだと個人的には思うんですよね。自分はドリブルで局面を打開するタイプですが、最終的に個の力が強ければ、自分一人の力で試合を決めることもできますし、そういうところにこだわりながらやっています」

―最後にお互いへエールをお願いします。
関根「また新しいシーズンが始まりますが、元気くんには試合にいっぱい出てもらわないと。それを見て自分も良い刺激を受けているので、高いハードルでいてほしいですね」
原口「なるほど。そうだよね(笑)」
関根「いずれは追い付きたいし、追い越したい存在なので。元気くんが活躍しないと不安というか、“元気くんでもダメなのか”って正直思ってしまいますし、だからこそ結果を残して、示し続けてほしいですね」
原口「そこを目指しているわけじゃないけどね。ヘルタで主役にならないといけないと思っているから。タカには浦和で一番の看板選手になってほしいですね。浦和といったら関根みたいな。そのためにも今シーズン、10点は取ってほしい。ピッチ内でもピッチ外でも、どんどん存在感を出していってほしいですね」

(取材・文 西山紘平)

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