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広島首位返り咲き!登場わずか2分…元日本代表MF山岸の“劇的すぎる”決勝弾「鳥肌がたった」

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[10.17 J1第2ステージ第14節 広島2-1川崎F Eスタ]

 諦めなかった。引き分け決着も見えた後半アディショナルタイム3分、クロスボールのこぼれ球がゴール前に詰めていたMF山岸智の足元に入る。「バウンドは難しかったが、枠に飛ばさないとと思った。いいところに飛んでくれた」。ゴールネットが揺れるのを確認すると、無我夢中でゴール裏のサポーターの前に駆ける。「何を考えていたかもわからない。気づいたらサポーターの方に走っていた。僕自身も鳥肌がたった」。復活弾はサンフレッチェ広島を年間首位の座に返り咲かせる貴重な決勝弾となった。

 今季は故障との戦いだった。キャンプで左ふくらはぎを負傷すると、しばらくして太もも裏などの古傷を再発。思うようにコンディションを上げられないまま、優勝争いを繰り広げるチームをしり目に、32歳はベンチにも入れない日々を過ごした。「必ず必要になるときが来る」。その思いだけが元日本代表を支えていた。

 前節のFC東京戦に途中出場して今季リーグ戦初出場。そしてこの日も声がかかったのは終了間際の後半アディショナルタイム1分だった。だが歓喜の瞬間はやってくる。出場から2分後のアディショナルタイム3分、同じく途中出場だったFW浅野拓磨の突破から得たチャンス。サッカーの神様は、本能のままゴール前に走り込んでいた山岸の足元にボールをこぼしてみせた。

「嬉しかった。チームの力になれて嬉しかった。みんなもよかったねって言ってくれた。みんな、僕の辛さを分かっていたから。こういう状況でも気持ちを切らさないでやることが大事だと思った」

 折れなかった心。チームメートもどんな待遇でも腐らなかった山岸の姿を尊敬のまなざしで見つめていた。FW佐藤寿人は「故障が癒えてもなかなかメンバーに入れない中でも、彼はプロフェッショナルとして過ごしていた」と感心。「(チームとして)いろいろ修正点はあるが、ヤマが大きい仕事をしてくれた。結果を見ればヤマがゴールを決めてくれてよかった」と喜んだ。

 奇しくも復活ゴールを決めた相手は、2008年から2年間在籍した川崎Fだった。タイトル争いのために必死で向かってきた古巣を沈める劇的弾。「フロンターレ時代はいいことも満足できないこともあった。でも後悔はしていない。経験として生きているから」。

 様々な思いが凝縮された劇的すぎる決勝弾。佐藤は力強く話した。「優勝を自力で決められる位置に来た。もしこのまま優勝が決まれば、ヤマのゴールは間違いなく語り継がれることになる」。

(取材・文 児玉幸洋)
●[J1]第2ステージ第14節 スコア速報

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