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「J1に上げるために帰ってきた」7年ぶり復帰の中村北斗が劇的昇格弾

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[12.6 J1昇格プレーオフ決勝 福岡1-1C大阪 ヤンマー]

 迷いなく右足を振り抜いた。DF中村北斗の弾丸シュートがアビスパ福岡を5年ぶりのJ1復帰に導いた。1点ビハインドで迎えた後半42分、左サイドをオーバーラップしたDF亀川諒史の折り返しがファーサイドに流れると、猛然と走り込んだ中村が右足を一閃。角度のない位置から左のサイドネットに突き刺した同点ゴールが、値千金の昇格決定弾となった。

「逆サイドを狙って、冷静だった。1点取るしかなかったので、思い切り振り抜いた。ちょっと抑えながら、アウト気味に狙ったけど、意外とまっすぐだった」。ゴールネットが揺れるのを見届けると、ゴール裏のサポーターの下へ一直線。次々とチームメイトが駆け寄り、歓喜の輪が広がった。

 今季、大宮から完全移籍で加入。国見高から入団したルーキーイヤーの04年から08年までプレーした古巣に7年ぶりに復帰した。「(J1に)上げるために帰ってきたというのもある。(チームが)良くなってから戻るのではなく、良くなる前に戻って、土台作りから自分がいるのが理想だった」。復帰1年目でのJ1復帰。キャプテンのMF城後寿も「福岡のために帰ってきた選手が最後の最後で決めてくれて本当にうれしく思う」と心から感謝と賛辞を送った。

 井原正巳新監督が就任した今季はまさかの開幕3連敗。第3節終了時点で22チーム中、22位という最下位からのスタートだった。しかし、指揮官はブレることなく、キャンプから取り組んできたことを継続した。

「やり方を変えずにやったのがすごいなと。普通ならイジって、どんどん悪くなるのに。(井原監督は)経験していることが違うので、ビビらないし、開幕3連敗で最下位になったときも、『この下はないから』って。それで僕らもリラックスできた」

 3月29日の第4節・熊本戦。1-0で勝って就任初白星を挙げた指揮官に「おめでとうございます」と声をかけると、「ここから先が長いから」と、淡々とした反応だったという。一喜一憂しないメンタルの強さと経験値は、間違いなく選手にも好影響を与えていた。

 来季、5年ぶりのJ1挑戦となる福岡だが、06年、11年と、最近2度の昇格時は1年でJ2に逆戻りしている。「来年すぐ落ちたら意味がない。すぐに落ちるなら、上がらなくていいぐらいに思っている」。そう表情を引き締めた中村北は「守備の目から言うと、危機察知能力はもっと早くしないといけない。玉田さんとかがJ1では普通のレベル。今日も軽くやられたけど、あれが当たり前になる」と厳しい口調で指摘した。

「ライバルだけど、鳥栖みたいに土台を作れば、(J1に)い続けられる。見習う部分は多少あると思うし、そういうところはまた来年、もっともっと成長していかないといけない」。J1復帰で満足するつもりはない。福岡をJ1に定着させてこそ、古巣に戻ってきた本当の意味がある。

(取材・文 西山紘平)

●2015 J1昇格プレーオフ

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