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闘莉王で延命、闘莉王で終戦「自分の力不足」 名古屋の低迷は「予想していた」

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スタンドに向かって頭を下げるDF田中マルクス闘莉王

[11.3 J1第2ステージ第17節 名古屋1-3湘南 パロ瑞穂]

 名古屋グランパスの初のJ2降格が決まった。J2降格圏の16位で最終節を迎えた名古屋だが、ホームですでに降格が決まっている湘南ベルマーレに1-3で敗れた。

 チケットは前売り段階で完売。試合開始2時間前には入場を待ち切れないとばかりに、真っ赤な戦闘服に身を包んだ名古屋サポーターがパロマ瑞穂スタジアムの入り口に長蛇の列を作った。選手バスが到着する際には沿道で旗を振り、決戦を迎える選手たちを後押ししていた。しかし結果は惨敗。最後まで声援を絶やすことのなかったサポーターからも怒号が浴びせられた。

 救世主として迎え入れられた。クラブ未勝利記録を更新し続けた夏場に名古屋は、8月23日に小倉隆史前監督の休養を発表。ジュロヴスキー新監督は昨季限りで退団していたDF田中マルクス闘莉王をチームに呼び戻すことを決断した。

 “劇薬”投入は即、効果を発揮した。復帰戦となった9月10日の新潟戦で19試合ぶりの勝利を挙げると、10月1日の福岡戦では今季最多となる5得点で大勝。3か月ぶりに降格圏を脱出した。一時は奇跡とまで言われたJ1残留を、わずか1か月足らずで成し遂げようとしていた。

 しかし現実は甘くはなかった。名古屋にとっては初めてともいうべき本格的なJ1残留争い。2週間の中断を経て再開されたリーグ戦の磐田との一戦を引き分けると、再び降格圏に脱落。そして降格圏のまま最終節を迎えると、ホームで迎えた運命の決戦も落としてしまった。

 前半6分に湘南MF山田直輝に許した先制点は闘莉王に当たってコースが変わる不運なものだった。後半に入ってすぐにPKで1点差に迫ったあとには、闘莉王の痛恨のミスから、またも山田に決定的な3点目を奪われてしまった。まさに闘莉王で延命した名古屋が、闘莉王とともに今年の戦いを終えた。

 試合後は茫然自失の闘莉王。「この7試合に人生すべてかけて来た」と話すと、去就に関しての質問には「まだ自分の中で整理がつかない」と話すにとどめた。そして、「自分の力不足だと思っている。最後の最後まで希望があっただけに、サポーターに申し訳ない」と最後まで自らを責め続けていた。

 また闘莉王は年間9位に終わった昨季のホーム最終戦セレモニーでの発言に言及。闘莉王は「たくさんの噂が流れていますが、僕ら選手は何一つ分かっていません」とクラブへの不信感を堂々と話していた。「やっぱり去年、最後にあいさつした時にこうなるというのは予想していた」と悔いた闘将は、「そのままになってしまったことを自分も反省することはたくさんある。何を言っても言い訳になるだけ。とにかく今はこの7試合を戦った仲間、スタッフのみなさん、サポーターの皆さんに申し訳ないなという気持ちしかない」と声を絞り出した。

(取材・文 児玉幸洋)
●[J1]第2ステージ第17節 スコア速報

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