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知将同士の駆け引き合戦…声枯らした大分・片野坂監督「お互い狙いがある試合になった」

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喉に不調を抱えたまま会見場に現れた大分トリニータ片野坂知宏監督

[8.18 J2第29節 東京V0-0大分 味スタ]

 開始5分のアクシデントが指揮官を苦しめた。大分トリニータ片野坂知宏監督は声がガラガラになっている状態で試合後の記者会見に登場。試合中は周囲からのど飴やのどスプレーを借りて急場をしのいだようだが、「選手にも指示が通らなくて……」と苦笑いを浮かべていた。

 ボールポゼッションを武器とするチーム同士の対戦は、お互いの狙いが垣間見えつつのスコアレスドロー。戦術的な見どころは多くあり、両指揮官に意図を問いかける質問が相次ぐはずだったが、普段以上になごやかなムードで会見が始まった。

「すみません、聞き取りにくくて……」。先に登場したアウェーの片野坂監督は、満足に声を張ることができないコンディション。司会者にマイクのボリュームを上げてもらい、着席すると「前半の5分あたりで、叫んだらこういう声になってしまって、そこから声が出なくなった」と理由を明かした。

 それでも、試合の流れは懇切丁寧に説明した。「立ち上がりはわれわれが狙いを合わせて主導権を持てたが、先制点を奪えず、逆にヴェルディさんが落ち着いてできるようになり、焦ったところをひっくり返されてピンチになる展開だった。後半は落ち着いて、我慢強くやることを選手にいいながら、主導権をお互いが取り合うゲームになった」。

 この日の東京Vは普段の4-1-4-1(4-3-3)とは異なり、5-3-2(3-1-4-2)のフォーメーションを採用。「より大分を苦しめられると思った」(ロティーナ監督)という狙いでFW藤本寛也をウイングバックで起用していた。だが、世代別代表招集や夏の移籍によって2人のメンバー変更が決まっていたため、片野坂監督は「どういう形で入ってくるかを見よう」と柔軟な準備をしていたという。

「僕が見る限りでは5-3-2。われわれのシステムに合わせた戦いをしてきて、想定内ではあった」。そう明かした指揮官は、互いの布陣がかみ合うミラーゲーム的展開を回避せず。「こうなった時にどちらが我慢強く、攻撃も守備もやれるか」と真っ向から対人戦を挑んでいく戦い方を選択した。

 実はこの両チーム、データ上の『攻撃回数』では大分が22位、東京Vが21位と最少グループに位置している。ボールを大事にするチームのほうが攻撃時間が長いため、逆説的に攻撃の回数が少なくなるものだが、まさにそのデータをお互いに裏付け合うかのごとく、ボールの奪い合いが少ない展開となった。

「相手が構えてきた中で攻撃のチャレンジはできた。だが、ヴェルディさんはこちらの守備のスイッチを変化をうまく使い、お互い狙いがある試合になった」。この一戦をそのように振り返った指揮官は、両者のトランジションが少くなっている理由を以下のように分析した。

「カウンターの切り替えの部分、局面でのところはお互い切らさずやっていた。相手がこちらの変化を突いたチャレンジをしてきたなかで、われわれもチャレンジをしながらリスクをとって、ボールを持たれないように、こちらがボールを持とうとしたので、そういう展開になったと思います」。

 攻撃の回数こそ少ない大分だが、ここまで稼いできた得点数50はリーグトップ。指揮官も「監督として3年目になり、積み上げてきた攻撃の形がある」と手応えを感じている様子だ。「お互いが狙いを合わせて、拮抗した展開になった。勝ち点3が欲しかったが、アウェーでの勝ち点は悪くない。目標を達成できるよう頑張りたい」。この日は無得点に終わったが、強敵相手にチームの狙いを表現できたのはポジティブな要素。2012年以来のJ1昇格に向け、残り3分の1をこのまま走り抜ける構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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