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「辞めちゃうんだと他人事みたいに…」現役引退の名古屋GK楢崎正剛、「理想に近付けなかった」24年間

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現役引退を発表した名古屋グランパスGK楢崎正剛

 昨季限りでの現役引退を発表した名古屋グランパスGK楢崎正剛が11日、名古屋市内で記者会見を行って胸の内を明かした。

 95年に奈良育英高から横浜フリューゲルスに加入した楢崎は加入初年度から定位置を確保すると、翌年以降も正GKを務めて96年と98年にはJリーグベストイレブンに選出された。98年限りで横浜Fが消滅すると、翌シーズンから名古屋に完全移籍。10年のリーグ初制覇に貢献して自らはリーグMVPを受賞するなど、長年、最後方からチームを支え続けた。

 そして、名古屋在籍20年目を迎えた昨季。「正直に言うと、考えが変わるかもしれなかったけど、開幕前に最後のシーズンだと思って臨んだ」という1年を迎えていた。しかし、リーグ戦で1度もベンチ入りすることなく決意を持って臨んだシーズンを終え、「やり切った気持ちがあるのか、自分の中で判断しかねるところがあった」ため、現役を続行するのか、開幕前に考えたように現役を退くのかを「少し考えた」ようだ。

 実際に「こういう年齢の自分でもオファーを頂くこともあった」と他チームから誘いはあったようで、「そういう話を聞きながら時間を過ごすうちにモチベーションもグッと上がるんじゃないかと期待していた」と自身を再び奮い立たせようとしたが、「それを、なかなか感じられなかった」。そして、「そういう中でオファーを受けるのは失礼だと思ったし、気持ちが切れたら続けるものではないと思っていたので、年末に決断した」と24年間のプロ生活にピリオドを打つことになり、今月8日に現役引退が発表された。

「発表直後から多くのメッセージを頂いたり、ニュースで僕の発表のことを目にしてから実感がわいてきた。『もう辞めちゃうんだ』と他人事みたいになってしまうけど、そういう思いになった」

 16年にはチームがJ2に降格し、自身の去就が注目されることもあったが、「自分が引っ張っていかないといけない自覚があったし、辞めている場合じゃない」とピッチに立ち続けた。17年終盤には先発の座を失ったものの、「もう一度J1のピッチに立つという大きな夢があり、それに向けて戦わないといけなかった」と明確な目標を持ってシーズンを戦い抜いた。だからこそ、「今回辞めることを決心した感覚と、過去2年の感覚とは違った」と振り返る。

 現役時代に一番大事にしていたものは「日々のトレーニング」だった。それは、「自信を持って試合に臨めるかは、日々のトレーニング次第」だと思っていたから。24年間、積み重ねてきた日々。「常に自分が理想に程遠いと思っていたし、どれだけ年を重ねてもまだまだだと思ってやっていた」ものの、「理想には近付けぬまま、終わることになってしまった」と、24年間の現役生活の中で自身が描く理想像に辿り着かなかったと答えた。

 今後については「辞めると決めてから時間が経っていなくて、具体的なことはこれから決めていく」と語りつつ、「僕はサッカーに育てられたので、サッカーに恩返しをしたい気持ちが一番強い。何かの形で、日本サッカー界の発展に貢献できればいいと思っている。これからゆっくり考えたい」とサッカーに携わっていく意向を示している。

 史上最多となるJ1リーグ通算631試合出場を果たし、J2リーグでも29試合に出場した。また98年にデビューを果たした日本代表では77試合に出場。98年フランス大会、02年日韓大会、06年ドイツ大会、10年南アフリカ大会と4度のW杯を経験し、00年にはオーバーエイジとしてシドニー五輪に出場した。

 輝かしい功績を残した守護神はスパイクを脱ぎ、新たな道を進んでいく。

(取材・文 折戸岳彦)
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