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「外から見たら夢のある話」地域Lで育ったGK松原修平、湘南デビューは“対南米王者”

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湘南ベルマーレで初出場を果たしたGK松原修平

[8.7 王者決定戦 湘南0-4A・パラナエンセ BMWス]

 南米カップ王者との映えあるタイトルマッチ、湘南ベルマーレの門番を任されたのはJ1未出場の26歳だった。「GKとしてチームの勝敗に大きく関わるポジションなので、4失点はすごく悔しい。そこしかないです」。結果は0-4の完敗。ようやくたどり着いたピッチの感慨よりも、役割を果たせなかった悔しさがあふれ出た。

 J2リーグ1試合、J3リーグ32試合——。1992年生まれのGK松原修平がこれまで9年間で積み重ねてきたJリーグでの通算出場数だ。

 地元の札幌U-18を卒業した2011年、J2岡山でプロ生活をスタート。ところが活躍の場は、もっぱらアマチュアリーグだった。セカンドチームの「ファジアーノ岡山ネクスト」に登録され、中国リーグとJFLで活躍するも、計6年間の岡山生活ではJリーグ出場ゼロ。その後、17年のJ2讃岐(当時)、18年のJ3群馬でようやく上記の数字を重ねるに至った。

 そうして辿り着いた初めての国内トップカテゴリ。挑戦心を持って来たのは間違いないが、入団当初は困難ばかりだったという。

「入ってきた1〜2か月は苦しい思いというか、練習をやるのが精一杯という感じで、メンタル的にもフィジカル的にも本当にきつい時期を過ごしていた」。その後、控えに出場機会が回るルヴァン杯も出場なし。「ベルマーレは練習が大事。そこで良いプレーができなくて、出場機会を逃したんだろうなというタイミングもあった」と振り返る。

 それだけにシーズン半ば、8月の連戦に訪れた出番に燃える気持ちは隠せなかった。なにせ相手はコパ・スダメリカーナの王者アトレティコ・パラナエンセ。Jリーグの公式戦ではないとはいえ、南米のビッグタイトルを制した相手のレベルを踏まえれば、自身の実力を見せるには絶好の機会だ。

 だからこそ、試合には普段どおりに入ろうと心がけたという。「初の公式戦だったけどそういうことは考えず、チームとしてこの試合にどう勝つかを考えてプレーした」。そうした心がけの甲斐もあってか、試合の入りは良好。左サイドに開いたFWホニのシュートを立て続けにブロックし、相手のプレスにも屈さず長短のパスも通した。

 もっとも、その中でも力量差は感じていた。「相手にボールを持たれても、プレッシャーはかけられていた。ただそうは言っても、シュートまで行かれている場面は多かったし、こっちはシュートの手前で止められる場面が多かった」。前半30分のピンチは松原が身を挺して救ったが、41分にはノーチャンスのヘッドで先制のゴールを割られた。

 0-1で迎えた後半、湘南は主力選手を次々に投入したものの、強烈なサイド攻撃とゴール前でのパスワークから続けざまに2失点。ここにターニングポイントを見出した松原は「後半の2、3点目が勝負どころだったので、そこを止めていれば勝機はあったと思う。そこで自分が止められなかったし、チームでも守れなかった」と悔やんだ。

 待ちに待った初陣は0-4で終了。これまでのキャリアを振り返れば大きな一歩だが、そうやって前向きに受け入れられるような結果でなかったのも事実だ。「J3から来て初めて出る相手が南米王者というのは、たしかに外から見たら夢のある話だと思う」。そう切り出した26歳は次のように一戦を総括した。

「J3で一緒にやって来た選手、これまで対戦してきた選手にも、ここでいいプレーをして勝って希望を見せたかったけど、自分の力のなさをすごく感じた。GKとしてチームの勝敗に大きく関わるポジションなので、4失点はすごく悔しい。そこしかないです」。

「ここで出番を掴めたのは自分にとっては大きな一歩だけど、だからこそ一歩目を勝ちたかった。南米王者に勝ったら自分にとってもアピールにもなるし、普段は試合に出ていない選手が多かったけど、その人たちのアピールにもなっていたので……」。

 ただ、そうこうしているうちにも次の練習日は訪れるし、次の試合もやってくる。カテゴリが変わろうが、相手のレベルが変わろうが、そのルーティーンはこの世界にいる以上は変わることがない。だからこそ、プロ入り9年目、Jデビュー3年目、そこからJ1初出場を目指す26歳はなおも前を向く。

「自分の姿勢だったり、試合に向かう一生懸命さ、そういった気持ちは100%出した。持っている力は100%出した。湘南には陽太さん(GK秋元陽太)がいるし、トミくん(GK富井大樹)もいるし、僕はそこに当たっていかないといけない。先輩2人に良い刺激になっているかはわからないけど、リーグ戦で出られるように頑張りたいです」。

(取材・文 竹内達也)
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