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医療現場からスポーツ界に突きつけられた新型コロナの脅威「どんなに気をつけていても…」

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賀来満夫教授(左上)、三鴨廣繁教授(右上)、舘田一博教授(左下)、村井満チェアマン(写真はいずれもオンライン会議アプリ『Zoom』のスクリーンショット )

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と日本野球機構(NPB)がつくる『新型コロナウイルス対策会議』は23日、第6回会議を開催した。終了後、Jリーグの村井満チェアマンは「あらためて新型コロナウイルスの恐ろしさを再認識した」と厳しい表情。オンライン記者会見に出席した専門家からも、ウイルスのもたらす脅威が鮮明に語られた。

 三鴨廣繁教授が勤務する愛知医科大病院(愛知県長久手市)では今月19日以降、病棟看護師2人と退院患者1人の感染が判明した。現状では病院内クラスターではない見立てだが、外来と入院患者の新規受け入れを5月3日まで中止。そうした医療現場の最前線を知る同氏は次のように語った。

「地域医療に非常に大きな影響を与えていることをお詫びする。ただこのことで分かるように、こうした現象は各地で起きている。感染が市中に広がっていることを表している。われわれは医療従事者ですが、どんなに気をつけていても感染が起こってしまうという現実が表れている。何らかの落ち度があるのかもしれないが、それだけ気をつけていても広がってしまうのがこの感染症の怖さ。あらためて身を以て体験している」。

 また連絡会議の座長を務める東北医科薬科⼤の賀来満夫教授も厳しい見通しを述べた。「感染している患者の数は鈍化傾向、減少傾向にあることは認められるが、関東を中心とした医療がものすごい状況になっている。院内感染の多発も含め大変厳しい状況にある。医療従事者が市中感染をしたり、まったく想像していない患者が陽性だったこともある」。こうした現実を踏まえ、政府の緊急事態宣言は5月6日以降も継続すると見込んだ。

 もっとも、そうした中でも三鴨教授は野球界とサッカー界の対応に目を見張った。「球団、チームが開幕、再開に向けて準備いただいていることに頭が下がる。選手の健康管理は医療関係者以上に努力している。頭が下がる。見習わないといけないくらいやっていただいている。球場、スタジアムの整備に関しても本当にしっかりやっていて、準備が整っている。また選手、スタッフへの啓発も本当に熱心にされている」。

 ただ、それでも活動を再開すれば感染リスクが潜んでいるのが現実。そうしたウイルスの脅威を踏まえ、さらに徹底した対策を行うための「啓発ツール」の作成に踏み切った。三鴨氏によると、模範となるのは各地で医療支援に従事しながら一人も感染者を出していない自衛隊の例だ。ビデオでこれを参考にした感染予防のアドバイスを行いながら、選手やスタッフからの質問にも答える仕組みになるという。

 政府専門家会議にも出席している日本感染症学会理事長の舘田一博教授(東邦大)は「蔓延の真っ只中に入っている状況」と危機感を示し、「医療機関での院内感染が見られている。対策のプロが集まる状況でも抑えることができない。誰もが感染するリスクがある。誰もがいつの間にか感染し、知らない間に感染させてしまうリスクがある。それがこの感染症の怖さ」と注意を喚起した。

 一方で、世界で最も感染者・死者の多いアメリカでもスポーツ再開に向けた動きが出ていることを前向きに受け止め、「われわれは真っ只中にいて、今すぐ再開できる状況ではないが、将来必ず来る出口を意識しながら、それに向けた道筋を用意していくことが重要だと感じている」と指摘する。「早く一般の方々にスポーツを通して夢と勇気と希望を与えられるように努力していかないといけない」(舘田氏)。厳しい現実の前でも、スポーツ再開に向けた議論は進んでいる。

(取材・文 竹内達也)
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