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「大きな判断が示された」Jクラブ親会社の税務扱いがプロ野球と統一化

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解釈変更を導いたJリーグの木村正明専務理事(オンライン会議アプリ『Zoom』のスクリーンショット)

 国税庁が今月14日、Jクラブの広告宣伝費に関する税務上の取り扱い方針を明示したのを受けて、Jリーグ側も19日、第7回理事会後のオンライン記者会見で見解を述べた。村井満チェアマンは「Jリーグを支えるスポンサーにとって、とても大きな判断が示されたということで大変ありがたく思っている」と前向きに受け止めた。

 国税庁の公式サイトで掲載されている資料によると、Jリーグは今月11日、木村正明専務理事名義で国税庁に税務上の取り扱いに関する照会文書を送った。

 ここで確認したのは、親会社の支出に関する以下の3点だ。なお、ここでいう親会社とは「直接の親会社だけに限らず、例えば、親会社と同一の企業グループに属する関係会社やスポンサー企業で、当該クラブの事業活動を通じて広告宣伝効果を受けると認められるものを含みます」としている。

①親会社が子会社にあたるクラブ運営会社に広告宣伝費を支出した場合、支出額は当該事業年度の損金額に算入される
②親会社が子会社にあたるクラブ運営会社の欠損金を補填するために支出した場合、支出額は当該年度の欠損金額を限度とし、特に弊害がない限りは広告宣伝費として取り扱われる
③新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、経営が困難となったクラブ運営会社を親会社が復旧支援の名目で融資を行った場合、融資は正常な取引条件に従って行われたものとして取り扱われる

 これを受けて国税庁が今月14日、課税部審理室長名義で返答。「個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります」と付記した上で「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答した。

 この日、オンライン会見に出席した木村専務理事によると、国税庁の回答は2つの意味を持つという。

 一つめはJリーグが今季もし全公式戦を完了できず、広告価値が下がってしまった場合の扱いに関係する。この場合、すでに受け取ったスポンサー料の余剰分は寄付か返還かという選択になるが、寄付の場合は損金扱いが認められない。一方、寄付ではなく広告宣伝費として扱われれば損金扱いとなって納税額を減らすことができる。今回は国税庁からの回答で「広告宣伝費として取り扱われる」という確認が行われ、損金算入が認められる形となった。

 もう一つは、親会社がJクラブの赤字補填や資金繰り対策などで、追加のスポンサー料を支払った場合の扱いだ。従前ではこの支払いは寄付金や損失補填にあたるとして、課税対象となる前提で税務申告がなされていたが、今回はこれも損金算入が認められるという回答が得られた。プロ野球チーム(職業野球団)には1954年に同様の通達がなされており、今後はJクラブも同様の基準が適用される見込みだ。

 サッカー界にとって、二つ目の解釈変更は画期的なものとなった。村井チェアマンは「昭和29年に野球界には通達が出ていたが、Jリーグも全く同じ解釈をいただいた。解釈が分かれていたものが統一化され、Jリーグを支えるスポンサーにとってはとても大きな判断が示されたということで大変ありがたく思っている」と説明。「木村さんと一人の若者で動いてきた結果だと認識している」と木村専務理事を称えた。

(取材・文 竹内達也)
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