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唾液採取は有効?陽性者の復帰はいつから?感染症のスペシャリストがJリーグ&NPBに提言

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愛知医科大の三鴨廣繁教授(オンライン会議アプリ『Zoom』のスクリーンショット)

 Jリーグと日本野球機構(NPB)でつくる『新型コロナウイルス対策連絡会議』は8日、第9回会議を開催した。会議の中では感染症の専門家が両団体に対し、選手・関係者を対象とした一斉PCR検査に関する提言を実施。終了後、愛知医科大の三鴨廣繁教授らが報道陣向けのオンライン説明会でその概要を説明した。

 Jリーグはすでに今月27日の公式戦再開に向け、リーグ組織内にPCR検査センターを発足させている。ここでは選手、スタッフ、審判員、マッチコミッショナー全員の3680人規模に対し、2週間に一度のPCR検査を義務付け。陰性が確認された者のみ試合に参加できるという制限を敷くことで、試合中の感染リスクを小さくしていく狙いがある。

 スポーツ団体が再開にあたって定期検査を行うことについては、三鴨教授も「必要だ」と強調する。一方、日本国内では無症状者を対象とした大規模検査は行われておらず、確立されたノウハウは存在しない。したがって検査体制や陽性者の措置に関する制度設計を、一から構築していく必要性がある。

 まずは検査体制。Jリーグでは現状、唾液による検体採取でPCR検査を進めていく方針を示している。これまでは鼻腔から採取した鼻咽頭ぬぐい液を使う方式が一般的だったが、政府は今月2日に唾液採取の方法を認可。一度に迅速かつ多数の検体をさばけるため、大規模な検査体制の実現が期待されている。

 もっとも、政府が公的に効果を認めている唾液採取の対象は「発症から9日間」の患者のみ。無症状者の検査は現状では認められていない。それでも三鴨教授は「北海道大学やわれわれの愛知医科大でも検討したところ、唾液と鼻腔での検査はほぼ同等だとわかっている」と新たな知見を提示。保険対象外ながらも正確な検査が可能だと太鼓判を押した。

 検査の実施にあたり、三鴨教授は「公平性が重要であり、公平性を考えて同一の機関を選ぶのが本当は妥当」としながらも、民間の検査体制が逼迫するリスクに鑑みて「きちんと精度管理が行われた複数の機関で行うのが妥当であり現実的」と指摘。公平性の担保については「どういう方法で、どういうマシンを使って、どういうキットを使って検査していくかをしっかり開示していくことが大事」との提言を行った。

 さらには全員を対象とした「定期検査」に加えて、「緊急対応検査」の体制を構築する必要性も指摘された。選手から感染が疑われる症状が出た場合、有症状者との濃厚接触が疑われる場合など、2週間に一度の検査ではカバーできないような緊急的な事案に対応するための手続きだ。その場合は医師によって検査が行われ、検体採取は唾液でも鼻咽頭ぬぐい液でも良いとされた。

 緊急対応検査を受けた選手は検査結果が出るまでの間、チームから離れて待機措置を行うべきだとされている。またこうした緊急事態は遠征先で起こる場合もあることから、チーム関係者はホームグラウンドに近い大学病院などの医療施設に対し、速やかに検査が受けられるよう事前に交渉しておくことも求められた。陽性者との濃厚接触者についても、これと同じ流れで隔離措置と検査受検が推奨されている。

 定期検査や緊急対応検査で陽性が判明した者や、陽性者との濃厚接触が疑われる者はただちにチームを離脱する。なかでも緊急対応検査の受検者については、検査受診が決まった時点で隔離措置が取られる。隔離中の者は一定の観察期間を置き、陰性と判断された者のみが復帰。ここでの観察期間は現状14日間とされているが、三鴨教授は「1週間を過ぎるとウイルス発散が少なくなると言われており、行政も短縮を考えている」とし、柔軟に対応したい意向を示した。

 なお、無症状の陽性者に関しては復帰基準がさらに問題となる。現状、日本国内では有症状者のみがPCR検査を行っているため、十分な治療を行うことを前提に14日間の観察期間が取られているが、無症状者の場合はより短期間でもウイルスの発散がなくなることが見込めるためだ。三鴨教授は「われわれも厚労省に働きかけている」と基準の再検討を求めた上で、「24時間以上の間隔を置いて2回連続で陰性が出た場合」を一つの基準とする方針を示した。

 東邦大の舘田一博教授は検査に関する手続きについて「新型ということでみんなが初めての感染症。手探りをしながら走りながら変えていかないといけない。流行期、蔓延期、キャパシティが足りない時、何をしたらいいかを考えながらやってきた。これからも変わってくる」と柔軟な対応の重要性を指摘。そのうえで無症状者のPCR検査について「いままでは患者にしか使えなかったのが、徐々に健康診断としても使えるようになってきた。患者の検査と同時に社会をどう動かすかという意味でも使えるようになってきた」とし、民間でも同様の検査体制が整っていく見通しを示した。

 また舘田教授と東北医科薬科大の賀来満夫教授はサッカー競技における「濃厚接触」の定義にも言及。現状は「1mの距離でマスクをつけずに15分間向かい合って話した場合」という運用がなされているなか、「サッカーの試合は濃厚接触にあたらないと思っている」(舘田教授)という見解も。もっとも、サッカー競技はボディコンタクトを伴う競技であることから、賀来教授は「チームドクターともどういう時に濃厚接触という判断をすべきかを議論している」と述べ、今後も議論を続けていく方針を示した。

(取材・文 竹内達也)
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