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かつてはJ屈指の“使い手”…JFA反町技術委員長がロングスロー論争に一石「守備に知恵を絞って」

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 日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長が14日、同日に開かれた技術委員会終了後にオンライン取材に応じ、全国高校選手権で巻き起こったロングスロー論争に一石を投じた。ロングスローは反町氏自身もJクラブ監督時代に有効活用していた戦術。「持てる武器を使うのはサッカー界の掟」と理解を示し、守備側の組織整備とカウンター技術のクオリティー向上を求めた。

 全国高校選手権では近年、各チームが強力なロングスローワーを擁し、敵陣深い位置でタッチラインを割ればただちに得点につながる大きなチャンスとなっている。今大会でも優勝した山梨学院高、準優勝の青森山田高を筆頭にロングスローから多くのゴールが誕生。一方、プロレベルではそれほど見られない光景に対し、SNS上を中心に賛否渦巻く議論が巻き起こっていた。

 これを受けてオンライン取材でも、報道陣から反町氏に見解を尋ねる質問が飛んだ。

 反町氏は監督として湘南ベルマーレ松本山雅FCを率いていた当時、Jリーグ屈指の名手であるMF岩上祐三らのロングスローを多用。自陣からのロングボールで圧倒し、敵陣深くでスローインを奪うという狙いも含め、チーム戦術としてロングスローを有効活用していた。

 そんな反町氏でも高校サッカー界におけるロングスローの流行には驚きもあったようだ。「驚いたのは投げられる選手が交代して、もうないだろうと思っていたら、また畳み掛けて投げられる選手がいる。それも1チームだけでなく他の高校も駆使しているのを見て、これってトレンドになっているんだなと正直、驚いた部分もある」と振り返る。

 それでもロングスロー戦術に自体には肯定的な見方を示した。「セットプレーですから配置換えもできて、青森山田はかなり点をとっていた。そのままダイレクトでドカーンと行くようなものもあった。ただ、それはCKもまったく同じ。ロングスローだけ切り取ってアリとかナシとか言う論争はおかしい」。そう見解を示した反町氏は「持てる武器を使うのはサッカー界の掟みたいなところがあるので」と指摘した。

 一方、物足りなく映ったのは守備側の対応だという。

 まずは手を使うことのできるGKの使い方。「GKの守備範囲を含めて狭いかなというのが僕の個人的な感想」。反町氏はゾーン対応とマンマークのミックス時を例に挙げて「ロングスローになった場合、僕はゴールエリアに飛んできた場合はGKに『勝負に行け』と言っていた。GKが出たところにはストーンが入るとか、そういうやり方をした試合も何試合かある。ただ、高校サッカーではGKがたじろいでしまって、下がって触られて一発でドーンというのがあまりにも多かった」とし、「そういうところの工夫がちょっとディフェンスのほうでなかった」と振り返った。

 また、相手のロングスロー時におけるカウンターの準備不足にも言及した。「逆に言うと後ろのやつが上がってくるから、GKがキャッチして逆サイドに流れればカウンターがすごく効くんですよ。GKのキャッチからのディストリビューションは、ボールを転がして出せば、ドリブルカウンターでもハーフラインを越えていくので。そこまでできていないのが現実だった」。反町氏はそうした工夫を積み重ねていくことで、全体のクオリティー向上につながっていく未来を期待している。

「今年はロングスローの攻撃が際立っただけで、これに対してはこういうことをやっていくというふうしたことで、サッカーのレベルが上がっていく。あくまでも一部分で切り取ったらの話ですけどね。なので、今回は攻撃が目立った大会になったけど、次はロングスローに対する守備に知恵を絞っているなという大会になってほしい。守備で攻略してカウンターでドーンと。山梨学院も一回か二回カウンターのチャンスを作れていた。そうやって向上していけばいい」と先を見据えた。

(取材・文 竹内達也)
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