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「ハンド」がまた変わる!! IFABが21-22新ルール発表、Jリーグでは夏から適用へ

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 国際サッカー評議会(IFAB)は5日、第135回年次総会をオンラインで開催し、2021-22シーズンに向けたサッカー競技規則の改正案に合意した。近年になって改正が相次いでいたハンドのルールにおいて、またしても大幅な見直しが行われている。

 IFABはサッカーのルールを定める唯一の機関。イギリス4協会とFIFA(加盟国からの投票で意見を決定)によって構成されており、ここで取り決められた競技規則は全世界のサッカー競技会で適用される。

 2021-22シーズンに向けた競技規則の改正において、最大のトピックは「ハンド」の反則だ。IFABは例年、年次総会から一定期間を置いて新たな条文を公開しているため、改正の全容は明らかになってはいない。それでも公式サイトを通じて要旨を発表しており、一部を知ることができる。

■「手に当たった=ハンド」ではない
 まず、ハンドに関する条文には「競技者の手や腕にボールが当たった場合のすべてが反則になるとは限らない」という文言が付け加えられるようだ。これは既存のルールでも採用されている一大原則だが、VARによるレビュー時には手や腕との接触有無がフォーカスされるため、誤解を防ぐために明文化しておく必要があると判断したとみられる。

 またハンドかどうかの基準を定める条文にも、大幅な変更が加えられているようだ。IFABの発表では、ハンドの反則が取られるケースが以下のように記されている。

・手や腕で意図的にボールに触れる。たとえば、手や腕をボールに向かって動かす。

・競技者の身体を不自然に大きくした手や腕でボールに触れる。その際、プレーヤーが特定の状況で身体を動かした結果ではなく、またその動かし方が正当ではないと判断されるなら、競技者が手や腕を不自然に大きくしたと考えられる。プレーヤーがそうした位置に手や腕を動かした場合、ハンドの反則を取られるリスクがある。

・ゴールキーパーも含めて、偶発的にであっても、手や腕から直接得点をする。

・偶発的にであっても、ボールが手や腕に触れた直後に得点をする。

■どこが変わった?
 これらの条文を2020-21シーズンまでの競技規則と比較すると、大きな変更点と言えるのは以下の2点だ。

①「手や腕を用いて体を不自然に大きくした」事象の明確化
 ハンドに関しては2019-20シーズンの競技規則改正で大規模な変更が行われた。そこでは「手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした」「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにあった」場合に反則とする、という主旨の条文が新設。すなわち、ハンドかどうかを判定するかの基準の一つとして、手や腕の“位置”が重んじられるようになっていた。

 だが、2021-22シーズンに向けた今回の改正条文では「プレーヤーが特定の状況で身体を動かした結果ではなく、またその動かし方が正当ではないと判断される」場合において「競技者の体を不自然に大きくした」とする、という定義づけが新たになされた。つまり、選手の動きと手や腕の位置との“関係性”を重視するという方向性だ。

 この変更は、選手がジャンプやスライディングを行う際などに、不作為的に手や腕が上がったり広がったりしてしまうケースを想定したものとみられる。これまでどおり“位置”に応じた基準では、予備姿勢や反動で上がった腕にボールが当たった場合において無条件にハンドとされていたが、新たに設けられた“関係性”による基準だと、選手の動きに応じて「不自然ではない」(=ハンドなし)と判断される可能性が出てくる。

 IFABは今回の発表リリースで「手や腕の位置が正当だったかを決定する際、主審は特定の状況における選手の動きとの関係性について判断し続けるべきだ」と指摘している。したがって、ハンドの有無が判断される際、今後は主審の裁量に委ねる範囲がより広く取られる見込み。近年はVAR導入の影響でファクト(事実)重視の改正が続いていたが、そこに揺り戻しがかかったと言えそうだ。

②「手や腕に偶然ボールが当たった」あとの得点
 2019-20シーズンの大規模な競技規則改正では「偶発的にであっても、ボールが手や腕に触れた後にボールを保持して、またはコントロールして(中略)相手競技者のゴールに得点する。得点の機会を作り出す」ような事象があった場合に無条件にハンドとなる、という主旨の条文も新設されていた。「サッカーでは、たとえ偶然であっても手や腕を用いて得点することは受け入れられない」という、足でボールを扱う競技の理念を反映させた形だ。

 この項目は2020-21シーズンの競技規則改正で再び見直しが行われ、「偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に、相手競技者のゴールに得点する。得点の機会を作り出す」という条文に変更された。「直後」という時間的な制約が明記されたことで、ハンドの反則にあたる範囲が狭められる形となった。

 そして2021-22シーズンに向けた今回の改正でも、この条文に手が加えられている。変更点は「得点の機会を作り出す」「味方競技者の手や腕」という文言の削除。したがって、①偶発的に手や腕にボールが触れた直後に得点機会が作り出される②偶発的に手や腕にボールが触れた直後にチームメートが得点を決める、という二つの事例については、ハンドの反則にはあたらないことになった。

 IFABの発表では、この変更について「ゴールを決める機会を得たり、チームメートがゴールを決めたりする際の偶発的なハンドは、今後は反則とはみなされません」と説明している。

■いつから適用?
 施行日は2021年7月1日。例年は6月1日だったが、「選手・コーチ・関係者が変更に慣れる期間を長くするため」として1か月延ばされた。もっとも例年は適用に一定の猶予期間が設けられており、秋春制の欧州各国リーグでは新シーズンの開幕から、春秋制のJリーグでは毎年7月末から新たなルールが導入されている。
※5月13日追記 Jリーグでは6月19日から導入されることが決まった。

(文 竹内達也)
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