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中学3年時は公式戦出場ゼロ。大きな選手を打ち負かすために“絶品”の技術力身につけた静岡学園MF玄理吾が徳島内定!!!

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徳島ヴォルティス内定の静岡学園高MF玄理吾

 徳島ヴォルティスは10日、静岡学園高(静岡)MF玄理吾(3年)の22年シーズンからの加入が内定したことを発表した。玄は身長171cm、61kgと特別なサイズはないものの、“精密時計”とも表現される技巧を備えたボランチ。「(サポーターには)ボールを失わないところとか、トラップ・パスでチームにリズムを生み出すところとかを見て頂きたいなと思います。徳島ヴォルティスでより活躍して世界に、と思っています」と意気込みを語った。

 玄は昨年からボランチで先発するなど、サッカー王国の名門で徐々に台頭。MF大島僚太(現川崎F)やMF渡井理己(現徳島)ら名手を指導してきた川口修監督も「歴代の中で見ても、技術レベルは確かに高いと思う」と認めるボールスキルは“絶品”だ。

 複数のJクラブから関心を寄せられていた玄は、5月に徳島へ練習参加。ボールタッチと失わない力に自信を持つ玄は、自分のストロングポイントを出すこと、また守備や切り替えの部分も意識してプレーしたという。特に自分の武器は、J1クラブの中でも十分強みにできることを確認。手応えを感じて練習参加を終えた。

「スカウトの方からは練習参加が終わった後に『ボールを動かす部分やポゼッションとかは余裕を持ってやれていたね』、という話をしてもらいました。フィジカルがある方ではないですが、それでも『ボールを奪う能力があるとこの練習会で思った』という話をされたので、意識してやって良かったなと思います」。徳島はすぐにオファーを決断。玄も静岡学園のスタイルに近く、自分の良さをより発揮できるクラブとして徳島入りを決めた。

 玄は異質の経歴の持ち主だ。「自分が中学校3年生の時は大会に出ていないです。公式戦はゼロです」。玄は小学生時代、FC Libre(リブレ、兵庫県神戸市)のスクールに通い、中学校ではFC Libreのジュニアユースチームへ進んだ。中学3年時、同学年は玄を含めて2人だけ。下級生時は先輩たちに混ざって公式戦へ出場していたというが、3年時には1試合も公式戦を経験していないというから驚きだ。

 FC Libreの指導陣は静岡学園OB。"芯のある選手を育てるクラブ"をモットーに基礎技術やひらめき、アイディアの向上を目指している。玄は平日の午後5時から7時までのスクールの練習に途中参加し、その後7時から9時までジュニアユースの練習でドリブルスキルの向上やミニゲームに取り組んだ。小柄な自分が上のステージに立つためには技術が必要。彼は公式戦に出場することよりも、先を見据えて自分のレベルアップに中学3年間を費やした。それには明確な理由があった。

「小学校の時とかは地域の強いチームに入っていたんですけれども、トレセンとかはいくら技術があっても大柄選手が選ばれることがあったり、めっちゃ悔しくて。ですから、技術を磨いて、そいつらを打ち負かしてやろうというのはずっと強い思いがあって、それで中学のチームを選んで、信じてやってきました」。ジュニアユースは年下含めてもわずかな人数で練習場所は小さな公園。競争はなく、土日は公共の公園を利用させてもらっているため落ち葉の掃除から始めていたというが、それでも試合をイメージして練習した力が現在の原動力になっている。

 FC Libreのジュニアユースに進んだ理由は、静岡学園へ進学するためでもあった。練習会でアピールし、憧れの静岡学園へ。当初は試合経験が全く無かったことが影響し、苦労したというが、「自分は吸収力にも長けていると思っていて、自分よりもこの人上手いなと思った選手のポジショニングとか盗んで一つ一つのプレーを見て学んだりしました」。自分に対して真剣に向き合ってくれる指導者たちの下、一つ一つ学びながら成長。「中学生の時に磨きを掛けたボールタッチを高校でさらに磨きを掛けて取り組みましたし、今一番の自信になっているのはトラップ・パスの部分ですけれども、そこは高校入ってからグッと伸びたと思います。(静岡学園で)人間性の部分とかも鍛えられたと思っていて、凄く感謝しています」という高校3年間で自分の技術を特別なものへと高め、またその力をピッチで表現できる選手へ進化した。

 今や相手の強烈なプレッシャーの中でも簡単に逆を取り、いなして前進するなど、同世代の大柄な選手を打ち負かすほどの選手に。今夏のインターハイでは大阪桐蔭高(大阪)との3回戦でスーパーゴールを決めるなどチームの3位に貢献し、大会優秀選手に選出されている。だが、宿敵・青森山田高(青森)に完敗し、よりレベルアップする必要性を実感した。

 徳島でも近い年代で目標とする選手がいるという。U-22日本代表のMF藤田譲瑠チマだ。「迫力があってコミュニケーション能力とかも凄いなと思って、どんだけ年上の人でも関係なく自分から積極的にコミュニケーション取ったり、守備の能力とか、ボール持った時ももちろんそうなんですけれども、自分に足りないものを凄く備わっていて、(練習参加した際は)この一週間で盗めるだけ盗もうと思いました」。こだわって自分の技術を磨いてきたMFは、これからも自分よりも強い相手、先輩を超えることを目指していく。

 玄は「1年目からすぐ試合に出て活躍したいという気持ちがありますし、ボランチなので頼りになる存在にすぐならないといけない、というのはあって、先輩方の良いプレーとか、私生活の部分とか盗めるところは全部盗んで吸収して、それを自分の糧にしてどんどん成長していきたい」。再び壁に当たることもあるだろう。それでも、玄は自分を信じて努力を続け、武器や課題をより強化し、プロでも異質の存在となる。

すでに仮契約。徳島での飛躍を誓う

(取材・文 吉田太郎)
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