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「サッカー人生にも大きく関わる…」今季磐田をJ1昇格へ導いた遠藤保仁、独占インタビュー

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プロ24年目のシーズンを戦う遠藤保仁

2021年11月14日、ジュビロ磐田がJ1昇格を決めた。昨年、ガンバ大阪よりレンタル移籍で加入した遠藤保仁もチームの主軸となり、今シーズン32試合に出場。攻撃をけん引し、昇格へと導いた一人だ。遠藤の著書『GIANT KILLING 名シーンで振り返る 戦い抜くメンタル』で語った、「ジュビロでJ1を目指す」「もっと自分のサッカーを表現したい」という思いが叶った瞬間でもある。J1昇格が決まった直後の遠藤に独占インタビュー。“戦い抜くメンタル”の重要性を語ってくれた。

――J1昇格おめでとうございます。まだ途中ではありますが、今シーズンの戦いを振り返っていただけますでしょうか。

 ありがとうございます! 今シーズンは自分たちが思うようなサッカーができ、それぞれが自信を深められたと思います。それがチームの雰囲気や結束力にもプラスの影響を与えたと感じていますし、ジュビロのサッカーを確立するためにもいいシーズンとなりました。

 鈴木(政一)監督に代わって、プレースタイルがより攻撃的になりましたよね。チームの方向性が定まって、そこに向かい皆が進み始めていた頃に僕が加入。自分の持ち味が発揮できればチームに貢献できるのではないかという感じはありましたが、ジュビロが強くなり、J1昇格を決めたのは、僕自身がどうこうしたからというわけではありません。

 サッカーは、技術も戦術ももちろん大事ですが、メンタルに大きく左右されるスポーツでもあります。しっかりと強いメンタルを持てば、おのずと大きな人に見えてくるもの。そう感じさせる選手が増え、後半戦の最後の方は特に、強い気持ちが伝わるプレーができていたのではないかと思います。

――遠藤選手個人としての手応えはいかがでしたか?

 僕自身は、怪我をして1ヵ月以上休んでしまったので納得はしていません。でも、チームには貢献できたと思っています。もちろん、「J1昇格」という目標を達成することもできたので、シーズンを通して楽しくプレーできました。

 勝ち点だったり、勝利数だったり、チーム全体の得点数だったり。数字だけを見れば、ある程度は自分を表現できたのではないかと思っています。できるなら、もっと圧倒的な勝利で見せつけられる試合を増やしたかったですけどね……。

 完全移籍ではないにせよ、加入するにあたって「頼むぞ」と思われていたとは思うので、言ってみれば僕は半分助っ人みたいなもの。チームとしての結果を出さなければいけないし、個人のパフォーマンスもいいものにしていかなければいけない。そういった中で迎えたシーズンでした。それなりに周囲からのプレッシャーもあり、自分のサッカー人生にも大きく関わるようなシーズンになりましたね。

――昇格が決まった際、「慌てずに戦えるようになったことが大きい」とお話されていましたが、「慌てず」「焦らず」に戦うために必要なこととは何でしょうか。

 僕が加入した昨シーズン、ジュビロの選手たちには、自分たちのサッカーに自信や確信を持てていないという感じがありました。ミスを怖がってプレーしている様子も多少なりとも見受けられた。“ミスのひとつやふたつ”と思ってプレーしないと、アグレッシブさが足りなくなります。メンタルを鍛えればもっといいチームになるのになと思っていました。要は気持ちしだい。「1点くらいどうぞ」という感じでプレーしていればいいんです。1点取られたら2点取り返せばいいだけの話ですから。「先に点を取られたらどうしよう」と思いながら戦うのとでは全然違います。

 でも、勝ちを重ねるうちに、点を取るスタイルや勝てるスタイルを見つけたんです。勝つことで自信がつき、チームとしての武器を手に入れ、それを皆が理解してプレーしていました。だからこそ最後まで、チームがバラバラになることなく戦い抜くことができたんだと思います。

リーグ最多得点の攻撃陣を牽引した


――来年、J1を戦う際には、どのようなプレーをしていきたいと考えていますか?

 今までどおりです(笑)。

――サッカーファンの皆さんが気になるのは、来シーズンに遠藤選手がどのチームでプレーすることになるか。遠藤選手が求めるチームの雰囲気、戦い方など、重要視するポイントを教えてください。

 来年のことはまだわからないですが、僕が重視する点は信頼感です。選手だけでなく、スタッフの方々がどれだけ自分を信用してくれているかというのはとても大事だと思っています。

――2022年からはJ1に属するジュビロですが、遠藤選手から見て、J1で戦うにあたってのチームの課題とは何だと考えていますか?

 たくさんあると思いますが、J1とJ2ではスピード感が違います。そのスピード感に対応する「目」と「判断力」を養うことが大事になるのではないでしょうか。多くの情報は目から入ってくるので、情報を取り入れるスピード、そして考えるスピードが必要になります。技術的にはそこまで大きな差はないと思うので、このふたつが鍛えられて、さまざまな状況に対応できるようになれば、ジュビロは面白い存在になると思います。

ジュビロ磐田は来季3年ぶりのJ1へ


――また来シーズンは、追われる立場から追いかける立場となりますが、格上のチームと戦う際に心がけるべきことを教えてください。

 ひと言でいうなら、相手をリスペクトしすぎないことですね。「すごい(強い)チームだ」「いい選手がいっぱいいる」など、そう思っている時点で自分たちは下にいます。スタンスを下にもっていかずに、同じフラットな立ち位置でスタートするということが大事だと思います。わざわざ一歩後ろからスタートする必要はない。前のめりくらいでスタートしちゃえばいいと思います。考えすぎずに在りたいですね。

――2022年に向けて、遠藤選手ご自身の目標を教えてください。

 個人的には、「健康第一」。これはもう毎年変わらないですね。昨年の年末は体調を崩してしまい、そして今年は怪我で長期間休んでしまいました……。サッカー選手でありながらサッカーができないという状況は本当につらかったです。健康であるからこそ楽しいサッカーができる。それを痛感した一年でした。自分が大好きなサッカーを、休みの日以外は毎日やりたい。それが僕の望みなので、そうすると目標は必然的に「健康第一」になってしまうんですよね(笑)。

 サッカー選手としては、もしジュビロにいるのならば、まず第一の目標は「J1に残留」すること。残留するのが最大の目標で、ひとつでも上の順位を目指すということになると思います。高望みするというより、まずは残留。そしてひとつでも上に。という感じじゃないでしょうか。

 ジュビロにとって2022年は非常に重要な年。優勝争いに絡んだら最高のシーズンになるでしょうし。タイトルがとれるようになれば、それはもうパーフェクトなシーズンになりますが……。高望みはしないほうがいいと思います。来年は軽めに(笑)。


<書籍概要>
■書名:GIANT KILLING 名シーンで振り返る 戦い抜くメンタル
■著者:遠藤保仁、ツジトモ
■価格:1,430円(税込)
■発行元:講談社
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