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“伝説の前育メンバー”田部井涼、飯島陸がいよいよプロへ「1年目から活躍しないと」

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 高校サッカー史に残る伝説の世代になろうとしている。4年前の第96回全国高校サッカー選手権で前橋育英高は悲願の初優勝を飾ったが、DF松田陸(G大阪入団)とDF渡邊泰基(新潟入団)、1学年下のFW榎本樹(松本入団)が高卒と同時にプロに進んだが、そのほかの多くの選手が大学で力をつけてプロ入りを勝ち取った。

 以下は4年前の高校選手権決勝、流通経済大戦を戦った前橋育英高のメンバー。現時点でスタメン11人中8人がプロ、控えメンバーだったFW宮崎鴻(駒澤大)も大学経由でプロ入りを決めている。

先発
GK湯沢拓也(3年) 立正大
DF後藤田亘輝(3年) 青山学院大→水戸内定
DF角田涼太朗(3年) 筑波大→横浜FM
DF松田陸(3年) 現ツエーゲン金沢
DF渡邊泰基(3年) 現ツエーゲン金沢
MF塩澤隼人(3年) 東洋大
MF五十嵐理人(3年) 鹿屋体育大→栃木内定
MF田部井悠(3年) 早稲田大
MF田部井涼(3年) 法政大→横浜FC内定
FW飯島陸(3年) 法政大→甲府内定
FW 榎本樹(2年) 現松本山雅FC
控え
GK松本瞬(3年) 駒澤大
DF山崎舜介(3年) 日本大
DF若月輝(2年) 慶應義塾大
DF山崎広大(3年) 産業能率大
MF高橋周(3年) 明治学院大
MF秋山裕紀(2年) 現鹿児島ユナイテッドFC
MF森田泰虎(3年) 明治学院大
FW宮崎鴻(3年) 駒澤大→栃木内定
FW高橋尚紀(2年) 国士舘大

 MF田部井涼が「在学中はそんなに感じなかったけど、大学で敵同士になったり、プロに行った選手の映像を見ると、レベルは高かったんだなと思った」と振り返れば、FW飯島陸も「(多くのメンバーがプロに進むことは)めっちゃ嬉しい。一回離れたけど、プロのピッチでやれるのは楽しみ。松田陸とか渡邊泰基とかとやるのが今から楽しみです」と胸を躍らせた。

■田部井涼「1年目から活躍しないと行く意味がない」

「横浜FCでもリーダーとして長いことチームの中心を担ってほしい」。会見に同席した強化部の池西希氏は主将として結果を残し続ける田部井のリーダーシップに大きな期待を寄せた。

 しかし今は我慢の時。今夏、田部井は総理大臣杯初戦のウォームアップ中に肉離れ。リーグ終盤に向け一度は復帰したが、なかなか痛みが取れなかったことで、横浜FCで再検査を行った。そこで複数箇所の怪我が新たに判明。ようやく練習に参加できるまでに回復しているが、インカレの出場は早くても準決勝以降となりそうだという。

 すべてはプロで1年目から活躍するためだ。水色のユニフォームに袖を通した田部井は「プロは観ている方に感動を与えないといけない。そういう特殊な仕事に就くので自覚や責任を改めて感じました」と決意を新たにする。「大卒の選手は即戦力。22歳で入団するので、1年目から活躍しないと行く意味がないと思っています」。

 田部井ツインズとしても常に注目されてきた。兄の早稲田大FW田部井悠も進路をJリーグ一本に絞って、最後のインカレで勝負をかけることになるという。「双子でサッカーをさせてもらっていて、2人でプロの舞台でやるというのが、両親や支えてくれた人への恩返しになる。そこは彼も思っていると思います。これからも切磋琢磨していきたい存在です」。夢の続きはある。心で繋がる2人は最後まであきらめない。

■飯島陸、「苦しかった」大学生活で気付いた「自分の武器」

 飯島陸は大学4年間を一言で総括した。「苦しかった、ですね」。偽りのない本音だった。

 前橋育英高の10番を背負った飯島は、高校選手権で7得点を記録。得点王に輝き、その名を全国区にした。直後に招集されたU-19日本代表スペイン遠征メンバーにも選出。世代のトッププレーヤーとして認められる存在になった。

 もちろん法政大にも1年目から活躍するつもりでやってきた。しかし現実はそんなに甘くはない。当時は1学年上に上田綺世(鹿島)がエースストライカーとして君臨。さらにFWディサロ燦シルヴァーノ(清水)やFW松澤彰(富山)といった選手も在籍しており、当然飯島にチャンスがやってくることは少なかった。

 飯島は「特に綺世くんには本当に圧倒された」という。さらに精神面でも追い打ちをかけられたと振り返る。「一番きつかったのは法政が試合をやっているのに、自分はその会場の駐車場警備をやっていたこと。その前を通るみんなが『あいつ得点王者じゃね?』みたいに見られてるんじゃないかと思うと、本当にきつかった」。プライドはズタズタだった。

 しかし悔しさをバネにしてきた自負もある。3年生の後半になってようやくコンスタントに出場機会を得ると、終盤にはゴールを量産。特例全国大会の#atarimaeni CUPでも決勝進出に大きく貢献した。「あの頃はサッカーがめちゃくちゃ楽しかった」。当時の笑顔に飯島陸の覚醒を疑う者はいなかった。

「自分は大学サッカーに来て良かったと思っている。高校卒でプロになっていたら潰されていた。自分の武器は周りとの連携がないと出せない。大学サッカーをやって改めて思った。個の力が大事と言われるけど、仲間とやることで個人の力を超えられるものがあると思っている。そこには寮での関係もそうですし、周りとの関係を大事しようと過ごしてきました」

 使われてこそ輝く才能。そこは自分でも一番理解しているポイントだ。その意味では甲府で同僚になる昨年の10番MF長谷川元希とのコンビネーションは楽しみでならないという。「コンビがめちゃくちゃ合う。去年はパス出てくるのが楽しくて仕方なかった」。タッグ再び。長山一也監督が「子供たちに夢を与える選手になってほしい」と期待を寄せる166cmFWが、J1昇格へ向けた最後のピースになる。

(取材・文 児玉幸洋)
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