かねてから「大学4年目でJリーグデビューしたい」と野望を語っていたFW森海渡(3年=柏U-18)の念願が叶った形だ。「ゆくゆくは海外に行って、A代表に入ることが目標。そこから考えると、来季から行く方が成長に繋がると思ったので決断しました」。大型ストライカーは途中退部を許してくれた筑波大の理解に感謝しながら、柏レイソルでのプロ生活をスタートさせる。

　少しでも早くJリーグデビューをしたいという思いで過ごしてきた。入学式前に行った関東リーグの開幕戦でハットトリックを決めるなど、順風満帆の船出を切った大学生活だったが、勉学も怠ることはなく、3年生終了時で卒業に必要な単位は所得済み。あとは卒業論文を残すのみという状況にあるという。

　柏レイソルにはこれまで、ジュニアからユースまでの9年間在籍。その素質は小学生の時から認められ、「将来は必ずプロ」。周囲も疑うことなく森と接してきた。しかし高校3年生の夏、トップチームのキャンプに参加したが、「何も出来なかった」。“昇格試験”は不合格。人生で初めてとも言える「挫折」を味わった。

「あの時に挫折というか、現実を目の当たりにしました。当時は伊東純也選手とかがいて、異次元というか、これがプロなんだなと感じました。このままプロに行っても何も出来ないなと。上がれないのが当然だと感じました」

　しかし昇格見送りを「当然」と感じられたことで、すぐに頭を切り替えることもできた。「そのあと筑波大学に行って、三笘(薫)選手とか高嶺(朋樹)選手がいて、大学はいいな、レベルが高くて、雰囲気も熱いし、ここで4年間やったらプロになれると直感があって、決めました」。

　大学では1年生の冬に前十字靭帯を断裂する大怪我を経験したが、三笘が4年生で在籍したルーキーイヤーも含めて、在籍した3シーズンはすべてチームトップスコアラー。目標としていた大学OBの中野誠也らが持つ関東大学1部リーグ記録の20得点の更新こそ叶わなかったが、フルシーズンを戦った今季は初の二桁ゴールとなる14得点を決めた。

「今思えば怪我をして良かった。リハビリは長かったですけど、いろいろと考える時間に充てることができました。サッカー以外にも陸上の先生にトレーニングを見てもらいました。効果はスピードの数字にも表れているし、結果的に得点王になれなかったけど、あそこまで繋がったと思っています」

　プロを始めるならやはり柏で。クラブと本人の想いは一致していた。「他のクラブも少しは話があったし、練習参加もしました。でもこれまでお世話になったクラブに恩返しがしたかった。(三協フロンテア柏スタジアムの)あのピッチに憧れていて、あのピッチとの距離感、あそこでやるんだという思いで小さい頃からプレーしていた。そこへの気持ちは強かったです」。

　もちろん1年目から即戦力でプレーするつもりでいる。目標については「5得点」と控えめだが、「そこは最低ライン」と思ってプレーしたいという。「ドウグラス選手に細谷(真大)もいて、争いは厳しいと思うけど、スピードや得点感覚は負けていないと思っている。開幕スタメンを狙って、例えばドウグラス選手のいいところを盗んで、成長に繋げていきたいです」。高校時代のプレミアリーグ、そして大学リーグと開幕戦で必ずゴールを決める勝負強さ、大舞台での勝負強さは、知る人ぞ知る森海渡の武器。来季は開幕戦から要注目だ。

(取材・文　児玉幸洋)

---

★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2021シーズンJリーグ特集ページ
●“初月無料”DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!!