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秋田監督も「選ばざるを得ない選手」と最大級の賛辞…「一度挫折した」MF宮市剛、岩手にJ2初勝利もたらす決勝弾!!

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いわてグルージャ盛岡MF宮市剛

[2.19 J2リーグ第1節 千葉 0-1 岩手 フクアリ]

 プロ9年目を迎えた。時にはJFLに戦いの場を移したこともあった。しかし、一歩ずつ、しっかりと歩を進めてきた。いわてグルージャ盛岡MF宮市剛は、クラブの記念すべきJ2初戦でチームに勝利をもたらす鮮やかなゴールを叩き込んだ。

 昨季のJ3リーグで2位となった岩手は、クラブ史上初となるJ2昇格を果たした。そして、迎えたJ2初戦。宮市は3-4-2-1の右ウイングバックの位置で先発出場を果たすと、前半26分にチームに大きな歓喜を呼び込む。

 右サイドで得たFK。MF中村太亮が蹴り出したストレート系の鋭いFKがファーサイドまで到達する。フリーで反応したのが「サインプレーで大外を狙っていた」という宮市だった。「ストレートボールだったので、僕からはボールが止まっているように見えた」。右足ダイレクトで合わせたシュートは、GK新井章太に触れられながらも、ゴールネットを揺らしてクラブのJ2初ゴールとなる先制点が生まれた。

 ネットを揺らしたことを確認した宮市は両手を広げて歓喜を爆発。次々と飛び込んでくるチームメイトと喜びを分かち合った。その後も持ち場の右サイドで激しいアップダウンを続け、粘り強い対応で守備でも奮闘。90分間ピッチに立ち続け、1-0の完封勝利、クラブのJ2初白星獲得に貢献した。

 決して順風満帆なプロ人生を歩んできたわけではない。14年に中京大中京高から湘南に加入。しかし、思うように出場機会をつかみ取れず、15年に水戸、16年に鳥取、17年途中からはJFLのMIOびわこ滋賀への期限付き移籍を経験した。そして、18年に盛岡(現岩手)に期限付き移籍すると、19年からは完全移籍へと移行した。

「僕自身、一度挫折したと思っている」

 そう振り返ったように、思い通りにいかない日々もあった。だが、現在も岩手の指揮を執る秋田豊監督と出会い、「サイドハーフで身長がある選手はなかなかいない。高さがあり、スピードがある選手は貴重だということを言われ、FWからサイドへとコンバートされた」ことで新境地を開くことに。しかし、「去年はすごく苦しんだ」と振り返ったように、昨季はオスグット症候群の影響もあって、ピッチに立ったのはシーズン終盤の1試合、8分間のみに終わる。だからこそ、今季に懸ける思いは人一倍強かった。

「去年は全然試合に出られなかった。そういった意味も込めて、キャンプからしっかり体作りをしてきた。J2という舞台だったので、楽しみの部分もあった」

 そして、キャンプから続けた必死のアピールを指揮官が見逃すはずがなかった。宮市の決勝点でJ2初陣を飾った秋田監督は言う。「本当に、よく仕上げてきた」と。

「彼自身、去年は思うようにコンディションが整わず、痛みが取れない状況で苦しい1年間を過ごしてきた。今年は勝負の年だという位置づけで彼は臨み、キャンプがスタートしてから最高のコンディションを作ってくれた。良さである運動量やスピード、高さを最大限に生かし、練習のゲームでも本当に良かった。選ばざるを得ない選手になっている、というのが正直なところ。強いメンタリティを持った選手なので信用できるし、ここまできたら彼はドンドン上に行けるんじゃないかなと思う」

 選ばざるを得ない選手――。最大限の賛辞に結果で応えた宮市。「コンバートされて、新しい宮市剛が誕生したと思っている。昔の、若かった頃のFW時代の悔しさがあったからこそ、今があると思う」。悔しさを糧に一歩ずつ歩を進めてきた。26歳を迎えた男は「去年、怪我で1年間を棒に振ったので、怪我をせずに残りの41試合に出られるように準備していきたい」とJ2の舞台で大暴れしようとしている。

(取材・文 折戸岳彦)
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