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10か月ぶりにリーグ戦へと帰ってきた背番号8の躍動。横浜FC齋藤功佑が披露した“67分間”の決意表明

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横浜FCMF齋藤功佑(中央)は自らの先制弾に歓喜のジャンプ

[2.19 J2第1節 横浜FC 3-2 大宮 ニッパツ]

 その1ゴール1アシストの活躍は、自分がこのクラブを牽引していくことを高らかに宣言するような、“67分間”の決意表明だったのではないだろうか。

「本当に自分が貢献できなかったという去年の悔しさが今年の意気込みになっていますし、自分が試合に出て活躍して、結果的にチームの勝利に貢献できる形になれば一番嬉しいなと思います」。

 プロ7年目。アカデミーから数えれば、このクラブで過ごすのは今年で16年目となるチーム最古参の24歳。MF齋藤功佑が三ツ沢のピッチで輝いた。

 3年ぶりにJ2のステージで迎えた、横浜FCの2022年シーズン開幕戦。スタジアムはホームのニッパツ三ツ沢球技場。ただでさえ気持ちの入るシチュエーションに加え、昨シーズンの大半をケガで棒に振った齋藤にとって、実に10か月ぶりとなるJリーグの公式戦ということもあり、並々ならぬ決意で大宮アルディージャと対峙するピッチへと向かっていたことは、想像に難くない。

 だが、MF手塚康平とボランチの位置で並んだ背番号8は、弱い雨の降り注ぐピッチを楽しそうに泳いでいく。「正直彼らは攻撃が得意な選手だと思いますし、最終的には攻守両方できるレベルまでチームとして持っていけるようにしたいですけど、現段階で何を優先するかというところで、ボランチの選手には展開力、判断力を優先して、彼らをスタメンで使いました」とは、今シーズンからチームの指揮を執る四方田修平監督。横浜FCは左右への展開から、ゴールに迫るシーンを次々と創出する。

 スタンドが爆発したのは前半40分だ。相手のビルドアップに対して、一瞬のミスを見逃さなかったFW長谷川竜也が高い位置でボールカット。DF高木友也の短いパスが足元へ届くと、齋藤は右足でボールを前に押し出しながら、すぐさま左足一閃。軌道は右スミのゴールネットを鮮やかに貫く。

「右足よりは左足の方が自信があるというか、そういうこともあって左足で持って、思い切り振った結果がゴールになったので、良かったと思います」。あえて左足で打ち切ったキャノン砲。しかも相手のGKが、横浜FC在籍時には食事に行くこともあったという大先輩の南雄太だったから、また格別だ。「雄太さんは横浜FCで長い年数を一緒に戦った人ですし、自分もリスペクトしている先輩なので、その人から点を獲れたことは凄く嬉しかったです」。シーズンファーストゴールを力強くさらってみせた。

 これだけでは終わらない。後半開始早々の1分。左サイドでDF中塩大貴がボールを持った瞬間、複数人の意図が一気に絡み合う。「3人目の関係性はキャンプからやっている部分」という齋藤が動き出すと、中塩の横パスを受けた手塚はダイレクトで裏へ。その齋藤の左足クロスを、粘ったFW小川航基が執念でゴールネットへ押し込んでみせる。

「チームとしての狙いが本当に出たと思います。1個先を読んだ動きをすることによって、相手より優位に立つことができる、そういったプレーが集まったゴールになったかなと」。流れの中で巧みに“縦関係”を作った、ドイスボランチで演出した追加点。ここでも8番がきっちりと実力を発揮した。

 もちろん反省点もないわけではない。後半途中からは大宮の猛攻に遭い、続けざまに2点を献上。「個人としては、もう少し自分のところで時間を作って、落ち着いた攻撃もできれば良かったなとは思います」と振り返る齋藤は、22分にアカデミーの後輩に当たるMF安永玲央との交代でベンチへと下がっている。

 指揮官も「縦横無尽に動き回ってくれましたし、非常にコンパクトな相手の守備の中で、怖がらずに間で受けてくれて、ボールを散らすというところを後半の途中まではしっかりやれていたと思いますし、ゴールにも繋がるようなプレーが出てきたという意味では、今日は“出た時間”に関しては貢献してくれたなと思っています」と称賛も口にしながら、今後への課題も言葉の端々に滲ませていた。

 それでも、チームは後半終了間際にFWクレーベが決勝PKを沈め、3-2と劇的な開幕戦勝利を達成。「自分としても去年はなかなか試合に出られない中で、たくさんの人に支えてもらったので、こうやって自分が活躍して、勝利に貢献できたのが凄く嬉しいです」と口にした齋藤が、この日の主役の1人であったことに疑いの余地はない。

 小学校4年生でスクールに入ってから、ジュニアユース、ユースと階段を着実に駆け上がり、トップチームまで辿り着いた。今のアカデミーの選手に『参考にしている選手』『憧れている選手』を尋ねると、齋藤の名前が挙がることも少なくない。

「自分はこのチームに育ててもらいましたし、アカデミー時代があって今の自分ができていると思うので、活躍して恩返ししたいという気持ちもありますし、自分がこのチームで活躍するということは特別な意味があるというか、アカデミー生の希望になれるという恵まれている立場だと思うので、いろいろな意味を込めて活躍できるようにやっていきたいなと思います」。

 ならば、大いに希望となってもらおう。自分に託された『いろいろな意味』をハッキリと自覚している齋藤が、この日の“67分間”のようなパフォーマンスをこれからも続けていくのであれば、2022年はきっと大きな飛躍の年となっていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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