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古巣の新潟相手に強烈な2ゴール。「自分の仕事」を遂行し続ける大宮FW河田篤秀のJ2得点王宣言

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追加点を決めてサポーターにガッツポーズを見せる大宮アルディージャFW河田篤秀

[2.26 J2第2節 大宮 2-2 新潟 NACK]

 ビッグスワンで浴びた声援のことは、いつだって忘れたことなんてない。Jリーガーへの道を切り拓いてくれたクラブへの感謝も、いつだって忘れるはずがない。だからこそ、今の自分にできることは成長した姿を、自分の最も得意な“仕事”で見せることだけだ。

「新潟がJリーグのプロキャリアの最初のクラブだということは、どれだけ時間が経っても変わることはないですし、Jリーガーにしてもらったチームに感謝しつつ、知ってくれている関係者の方も凄く多いチームなので、自分としてはすごく気持ちが昂りますし、新潟戦というのは活躍したい試合です」。

 大宮アルディージャの新10番。河田篤秀は強烈な2ゴールで、両チームのオレンジサポーターへ自らの存在を強烈にアピールしてみせた。

 阪南大高時代から、その才能は際立っていた。1月の高校選手権で得点王に輝き、一躍脚光を浴びた鈴木章斗(湘南ベルマーレ)であっても、両者を育てた同校の濱田豪監督にしてみれば「僕は凄いフォワードを見ているので」と、事あるごとに河田との比較を口にするほど。阪南大でもその得点感覚を披露し続けていたが、Jクラブからのオファーは届かず、大学卒業後はアルビレックス新潟シンガポールへ加入。異国の地でプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせた。

 シンガポールでは2年間プレーし、2017年に新潟へ“逆輸入”とも言うべき移籍を果たす。「シンガポールに行った時は、その後にJリーグに行くことは考えていなかったので、そこから行けるようにしてもらったのは、シンガポールのチームと新潟に関係があったり、シンガポールの社長だった人が新潟の社長になったり、自分の実力よりも他の力の方が大きかったと感じているので、やっぱりプレーさせてもらった新潟への感謝は大きいです」。加入2年目の18年にはJ2で39試合に出場し、9得点を記録。シーズン16位と苦しむチームの中で、ストライカーとして何度もサポーターに歓喜の瞬間を届けてみせた。

 特別な“古巣対決”に「もうゴールを獲って嬉しい要素がたくさんあるので、楽しみです」と試合2日前のオンライン取材で笑顔を見せた河田。ホーム開幕戦。見渡す限りオレンジに染まったスタンドの中で、NACK5スタジアム大宮のピッチへ歩みを進めていく。

 最初の“仕事”は前半7分。いったんは失ったボールへ素早く寄せて奪い返した小野雅史が、矢島慎也とのワンツーで左サイドを抜け出しながら上げたクロスが、ニアへ入ってくる。素早くポイントに潜った10番は、慌てず、騒がず、右足のアウトサイドでグサリ。「チームが形を作ってくるのを信じて、僕はゴール前にひたすら居続けて、チャンスをしっかり決めたいなと思っています」と言い切るストライカーが新潟サポーターの目の前で、先制ゴールを鮮やかにさらう。

 続いての“仕事”は後半19分。左サイドで柴山昌也が中央を見やると、河田は既に相手両CBの間でボールを呼び込んでいた。「基本的に味方がクロスを上げられる状態になったら、一番ゴールに近いところに飛び込むというのは考えていて、あの状況では相手より先に触れる位置取りが既にできていました」。

 完璧なクロスが送り込まれると、飛び出したGKの鼻先で10番の頭が軌道を捻じ曲げる。「正直キーパーは見えていなくて、ただボールに一番速く辿り着けるコースを走って、しっかり当てただけです。あそこに来ると信じて僕は先に走っていて、柴山もしっかりイメージ通りのボールを蹴ってくれたので、凄く良いゴールだったと思います」。今度は大宮サポーターの目の前で、自分の価値を存分にアピールする。

 だが、2点のリードを奪ったにもかかわらず、チームは勝ち切れない。4分間で2つの失点を立て続けに許し、結果は2-2のドロー。「途中まで2-0とリードできたんですけど、終盤に体力が落ちてきた時とか、上手く行っていない時間帯の攻守ともにうまくできなかったので、2点リードしていただけに反省点が凄く強く残るところです」。自身は今季初ゴールを手にしたものの、チームの今季初勝利はまたも次節以降へお預けとなった。

 試合前に河田が対戦を楽しみにしている選手として挙げていたのが、新潟在籍時にも一緒にプレーした、同じ1992年生まれの高木善朗だ。「プレーがというより、単純に善朗は同い年で、仲も良かったので、『どんなプレーをするのかなあ』とか、『どっちが活躍できるか』という個人的な楽しみが一番ある選手です」と話していた河田。この日は高木もチームの追い上げムードを高める得点を記録。もちろんゴールを獲られた悔しさもありながら、ピッチ上で再会した嬉しさも言葉に滲む。

「やっぱりまず対戦できたのが嬉しくて、楽しくて、個人的に凄く気持ちよくサッカーができました。ただ、ポジションが違うので、僕の方が獲っていないといけないですし、むしろ並ばれていると“負けた感”が強いので(笑)、善朗も良かったと思います」。次の対戦が組まれているのは9月25日のビッグスワン。個人としても、チームとしても、決着を付ける機会は思い出のスタジアムで残されている。

 今年で30歳を迎える。シンガポールからスタートしたプロキャリアを着実に積み上げてきたが、そこに必要以上の気負いはない。「まずサッカーが大好きだからやるというのが根本にあるので、単純にここまでやれているのは嬉しいですし、大学を卒業してシンガポールで2年間やっていた時期に、凄くハングリーな気持ちでやっていたので、そこが大きいんじゃないかなと感じています。冷静に考えて、サッカー選手はなかなか厳しい世界で、そこで30歳までやれていることはよく考えると凄くありがたいなと考えますけど、普段は年齢がどうというのは特に考えていないです」。

 周囲へ感謝を示すため。自らの存在を証明するため。そして何より、チームの勝利のため。河田が考えている自分の“仕事”は、昔から決まっている。「まずは試合に出続けることが最低条件ですけど、試合に出続けたのなら、二桁得点は獲りたいですね。チームとしてのやり方も含めて、フォワードの選手が点を獲るという形を作っていると思うので、20点は目標にして頑張りたいです。チームの目標がJ1昇格で、それを達成するなら、やっぱりフォワードが得点王になるというのは、どのチームでも一番の強みになると思うので、その得点王を目指して頑張ります」。

 得点こそ、すべて。生粋のストライカー。河田のぶち込むゴールは、これからも見る者を熱狂に巻き込み、歓喜に踊らせる。

(取材・文 土屋雅史)
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