beacon

「全員抜いてゴールを決めてほしい」と真剣に思われる10番。新潟MF本間至恩はまだまだこんなものではない

このエントリーをはてなブックマークに追加

2アシストでチームに勝ち点1をもたらしたアルビレックス新潟MF本間至恩

[2.26 J2第2節 大宮 2-2 新潟 NACK]

 試合終了の瞬間。両ひざに手を突き、その場からしばらく動けない。後半の45分間で披露したプレーを見れば、その特別な才能は一目瞭然。誰もが認めるものだろう。だが、彼には常に高いハードルが課されている。アルビレックス新潟のナンバー10。本間至恩は、まだまだこんなものではないはずだ。

 先週末に開催されたJ2リーグの開幕戦。ベガルタ仙台と対峙したアウェイゲームのスタメンリストに、10番の名前は見当たらない。今シーズンから就任した松橋力蔵監督が敷く4-3-3という新システムの左ウイングには、新加入のイッペイ・シノヅカが起用されていた。

 本間がピッチに登場したのは試合終盤となった後半35分。アディショナルタイムには左サイドからカットインしながら、枠内へとシュートを打ち込んだものの、GKが難なくキャッチ。程なくしてタイムアップのホイッスルが鳴る。プロ4年目のシーズンは、10分余りの途中出場で幕を開けた。

 迎えた第2節。やはりアウェイゲームとなった大宮アルディージャ戦。チームは開始7分で先制を許し、以降は攻勢の時間を長く作ったものの、ゴールに迫り切れず。この日はスタメンでピッチに送り込まれた本間も、なかなか明確な違いを発揮するまでには至らない。後半19分には古巣対決に燃える河田篤秀に追加点を許し、スコアは0-2に。白いユニフォームを纏ったオレンジの炎は燻っていた。

 23分。突如として、左サイドの10番が発火する。星雄次とのワンツーは相手に奪われるも、ルーズボールを強引に奪い返すと、ファウル覚悟で激しく寄せてきたマーカーを逆に弾き飛ばし、ほとんど閉じかけていた2人のDFの“門”にチップキックでラストパスを通す。

「本当に至恩が良い形で運んできてくれて、ラストパスまでくれたので、僕は冷静に流し込むだけで、欲しいタイミングで、欲しいボールが来たなというところで、簡単なゴールでした」とは華麗なループでゴールを仕上げた高木善朗。シュート自体も簡単ではなかったが、狂気すら感じさせる本間の強さと上手さが融合したアシスト。点差が1点に縮まる。

 27分。今度は正確なクロスで魅せる。途中出場の伊藤涼太郎から左サイドでパスを受けると、少ないボールタッチでシンプルに中央へ。ゴール前にいた4人の相手DFを一瞬で無効化するような軌道が、中央で待っていたチームメイトの頭へドンピシャで届く。

「試合の前から至恩には『頼むぞ』『クロスを待っているから』ということは言っていたので、後半のああいう場面で凄く良いボールが来て、『絶対決めなきゃな』という気持ちでシュートしました。イメージ通りのゴールだったので、試合後も『至恩、ありがとう』ということは言いました」とは貴重な同点弾を叩き出したシノヅカ。本間はわずか4分間で2アシスト。アウェイゴール裏のオレンジが沸騰した。

 松橋監督は試合後の会見で、本間のパフォーマンスについてこう言及している。「少し前半はおとなしめな感じがありましたけど、後半には非常にタイトで、体力的にも厳しくなって、相手も苦しくなってきた時に、ああいうプレーを出せるのは凄く相手にダメージを与えられるので、非常に良いパフォーマンスを出してくれたと思っています」。

 あえて言及した“前半”に、本間へ寄せている大きな期待も滲む。コーチを務めていた昨シーズンから、トレーニングでもその圧倒的な才能を何度も目にしてきたに違いない指揮官が、もちろん誰よりもその真価を常に発揮してほしいと願っているはずだ。その想いは、この言葉に凝縮されている。「彼に期待していることは、極論を言えば全員抜いてゴールを決めてほしいなと思っています」。

 3月5日。いよいよ新潟にとってのホーム開幕戦だ。春の気配が芽吹くビッグスワンを埋めるであろうオレンジのサポーターも、もちろんみんな分かっている。期待と愛情を込めて、みんながそう思っている。

「全員抜いてゴールを決めてほしい」と真剣に思われる21歳。本間至恩。まだまだこんなものではない。

(取材・文 土屋雅史)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2022シーズンJリーグ特集ページ
●DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!! 

TOP