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今季J1で“VAR待ち”が激減…JFA審判委が称える陰の立役者「“オペレーター”も含めて一つの審判チーム」

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東城穣Jリーグ審判デベロプメントシニアマネジャーが統計データを説明

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は28日、メディア向けのレフェリーブリーフィングをオンラインで行い、今季J1リーグ戦のビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に関する統計データを公表した。VARのチェックを待つ時間が大幅に短縮されており、陰の“立役者”の存在が浮かび上がった。

 元国際主審の東城穣Jリーグ審判デベロプメントシニアマネジャーによると、第1〜9節計81試合では判定訂正の手続きに必要な「レビュー」を16回実施。4.8試合に1回の割合でVARが介入する形となった。またそのうち7回がVARの助言のみによって判定が覆るVARオンリーレビューで、うち9回がピッチ脇のモニターで主審が映像確認をするオン・フィールド・レビューだった。

 レビュー以外でもVARはたえずピッチ上の事象に目を光らせており、VARルームの中で「チェック」が行われた回数は計640回(JFA算出)。内訳はゴールが216回、PKが112回、レッドカードが264回、人間違いが7回だった。なお、この数字には審判委員会にビデオクリップで挙げられた回数がすべて算入されており、本来VARの介入対象とはならないイエローカードや顕著な事例も「その他」として41回計上されている。したがって、VARが介入するためにチェックが行われた回数は619回だった。

■「VAR待ち時間」が大幅に短縮…

 VARによる手続きに費やされた時間は1試合平均49.5秒(前半22.8秒、後半26.7秒)だった。初の本格導入となった昨季同時期は80.9秒(前半33.4秒、後半47.5秒)、シーズン通算でも60.75秒(前半24.04秒、後半36.71秒)かかっていたといい、大幅に短縮される形となった。VARは導入当初から、サッカーの試合の流れを止めてしまうことが大きな懸念点とされていた。しかし、今季はそうした不満が大きく解消された格好だ。

 データに変化が見られた背景には「リプレー・オペレーター」の存在が大きく寄与しているようだ。

 リプレー・オペレーターはVARが作業を行うトラックの室内で、VAR・AVAR(アシスタントVAR)と並んで作業を行っている技術スタッフ。VARに定められたプロトコル(手続き)に合わせ、中継カメラから送られてきた映像を最適な形でVAR・AVARに見せるのが主な仕事だ。

 通常、リプレー・オペレーターはVARの指示に合わせ、求められた映像を提供すればよい。ところがVARとしての経験も豊富な東城氏によると、習熟したオペレーターは「こちらがリクエストする前に映像を見せてくださっている」のだという。

 この日、報道陣にはVARがチェックを行う際の音声が一部公開されたが、その中には「ポイント見ますか?」「インプレー続いています」「16mカメラで(CGのオフサイド)ライン引きます」など、積極的にVARをサポートするオペレーターとみられる声も入っていた。またゴールラインを割ったかどうか、オフサイドがあったかどうかではコンマ1秒単位のコマ送りが要求される中、ほとんど一瞬で“証拠”となるシーンが提示される場面もあった。

 東城氏はブリーフィングの場で「よりよく私たちをサポートするために毎週ミーティングしてくださっているとうかがっていて、もっとこうした方がよかった、ああした方がよかったとディスカッションをしているみたいなんです。われわれがこの映像を見たいという前に『これでいいですか?』と映像を入れ込んでくださっていて、そのおかげでチェックの時間がだいぶ短くなっています」とオペレーター陣の日々の努力を称賛。「まだVARにはいろいろと課題もあるが、オペレーターも含めて一つの審判チームとして今後も努力していきたい」と先を見据えた。

(取材・文 竹内達也)
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