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“日本流VAR”の課題…名古屋vs湘南のオフサイド判定にJFA審判委「得点を認めても良いシーンだった」

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名古屋のゴールが取り消しとなった。

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は4月28日、メディア向けのレフェリーブリーフィングをオンラインで行い、J1リーグで導入されている2Dオフサイドラインテクノロジーについて説明した。第7節の名古屋グランパス湘南ベルマーレ戦では、テクノロジーの運用を巡って判定ミスが起きていたという。

 J1リーグでは一昨季から、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の運用が本格的にスタート。新型コロナウイルスの影響で一昨季は一時停止となったが、昨季からは全試合で導入が続いている。

 VARは国際的な統一ルールに基づいて使用されるため、基本的には“先行組”の欧州リーグと同様の運用がなされている。だが、オフサイドだけは一部ローカル仕様。プレミアリーグなどでおなじみとなった立体的に位置関係を見極められる「3Dラインテクノロジー」ではなく、ピッチ上にラインを引いて接地面でのみ判断する「2Dラインテクノロジー」を使用しているため、“センチ単位”の違いを見分けるのは難しい仕様となっているのだ。

 こうした理由から、Jリーグにおいては3Dオフサイドラインでないと見極められないような“センチ単位”の判断は副審の判定に従うことにし、2Dオフサイドラインによってフィールド上の審判をサポートする運用にとどめている。

 したがって、VARレビューを経て判定を覆すためには「映像として決定的な証拠がなければいけない」のが原則。2Dラインテクノロジーで接地面にラインを引いた上で、①身体の傾きはどうか、②比較する選手同士の距離感はどうか、③2Dオフサイドラインテクノロジーが使える)16mカメラのアングルはどうかといった、さまざまな状況を踏まえながらジャッジを行っている。

 ところが、この「決定的な証拠」というのが難しい。JFAの審判委員会によると、今季も2Dラインテクノロジーによる判定ミスが一つ起きていたという。

 今月6日に行われた第7節の名古屋対湘南戦。名古屋は前半21分、MF仙頭啓矢の折り返しを受けたFWマテウス・カストロがゴールを決めたが、直前にGKランゲラックからのロングボールが出ていた時点でオフサイドがあったとして、VARの介入によりゴールが取り消しとなっていた。

 ところが映像を見ると、オフサイドラインにあたる守備陣と抜け出そうとするFW酒井宣福の位置関係は微妙だといえる。

 両者の距離は遠く、カメラの角度が大きいため、一見して明らかではない。また2DラインテクノロジーによってCG生成されたピッチ上のラインでは、たしかに酒井の足はオフサイドポジションにあるが、湘南の守備陣はラインコントロールのため後傾姿勢を取っており、2Dラインで判断できない上半身も考慮しないといけないからだ。

 そうした場合は本来、映像で出されている場面が「決定的な証拠」にはあたらないため、ゴールを認めた副審の判定を尊重しなければならないはずだった。

 JFA審判委員会は「VOR(ビデオ・オペレーション・ルーム)のなかで非常に高いプレッシャーを感じながらVARとして適切なサポートをしようとしていることは十分に理解している。“オフサイド”とした今回の判断も尊重できるが、2Dラインの原則からはフィールド上の判定をフォローできる事象であったと考える」とし、「得点を認めても良いシーンだった」という見解を示した。

(取材・文 竹内達也)
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