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立正大MF榊原杏太、清水でユース昇格逃すも名古屋で才能開花、大学経由で帰還…山口GM「戦力としてみている」

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24シーズンの名古屋グランパス入団を内定させた榊原杏太(右)と山口素弘GM

 緊張した表情が崩れることはほとんどなかったが、グランパスレッドに再び袖を通すことが出来る達成感、そして喜びを言葉の端端に感じさせた。「ユースの時からお世話になっていたクラブですし、そのクラブで(プロ生活を)スタートできることを嬉しく思います」。榊原杏太は大学3年生の春に、名古屋グランパスへの帰還を確定させた。

 静岡県静岡市出身の榊原は中学時代を清水エスパルスジュニアユースで過ごした。当時の同チームはFW川本梨誉主将(現岡山)を中心とした世代最強チームで、史上2チーム目となるジュニアユース3冠を達成。しかしレギュラーを掴み切れていなかった榊原に、ユース昇格の声がかかることはなかった。

 そんな榊原に目を付けたのがグランパスだった。東海リーグでプレーしていた姿が、元監督でスカウトを務めていた故三浦哲郎氏の目に留まった。「高体連の中で進学先を決めようと思ったけど、『グランパスから声がかかっているよ』と親から聞いたときにすぐに行きたいという気持ちになったのは覚えています」。プロ生活まで繋がる名古屋との縁はこうして生まれた。


■エリートリーグで能力再確認

 名古屋U-18でも世代最強世代の一角を担った。高校3年生で迎えた日本クラブユース選手権、Jユースカップで2冠を達成すると、プレミアリーグWESTを優勝するなど、プレミアチャンピオンシップでは惜しくも敗れたが、話題を総なめにした。

 個にも秀でたチームで、トップ昇格は石田凌太郎と三井大輝(現沼津)の2人だけだったが、そのほかの選手も強豪大学で1年生からレギュラーポジションを掴む実力を持った選手が多数いた。

 そんな選手たちをクラブも追いかけ続けていた。大学リーグの試合会場に山口素弘ゼネラルマネジャー(GM)が自ら足を運ぶこともあった。また昨年から新設されたエリートリーグに参加する名古屋は、大学に進学した“OB”らを積極的に招集。榊原も昨年8月に参戦した。

 山口GMによると、そのエリートリーグでのプレーに驚きがあったという。「ほかのユースの選手を引っ張るメンタルというか、その時に正直一人だけ違いをみせていた。ひょっとしたら思っていたより早く呼び戻すべきかなと思いました」。


■“最強世代”同期にも一目置かれる存在

 榊原は今春のキャンプに中央大に進学したDF牛澤健、専修大に進学したFW村上千歩、関西学院大に進学したMF倍井謙とともに参加した。名古屋に戻ってからの練習にも帯同すると、磐田との練習試合にも出場。そこで榊原は現場スタッフを納得させるだけのプレーをみせた。「自信はつきました」。手ごたえ十分の期間を過ごした榊原の元に吉報が届くことは必然だった。

 左足を武器とした正確なキックを特徴とする榊原のプレースタイルは、当時のチームメイトの中でも一目置かれている様子だ。中央大に進学し、今月8日のエリートリーグの横浜FM戦にも出場して得点を決めたMF田邉光平が、「榊原に関しては別格だと思っている」と話していたことがあった。

 ただライバル心が人一倍強いのもこの世代の特長だ。山口GMは「アカデミーの時からこの代はギラギラしている。昇格できなかったことを悔しそうにしていたのが印象的だった」と明かすと、「他の選手がどう思っているかが楽しみ」と相乗効果を期待。榊原も「一番最初が自分だっただけ。ここから続くこともある」とエールを送る。


■グランパスの勝利のために

 12日には日本サッカー協会(JFA)から特別指定選手として承認されたことが発表になった。現在は内定選手にのみ与えられる権利となっているが、これで24シーズンの正式加入を前のJリーグデビューが可能となった。

 今後についてはまずは大学でのプレーが優先されることになりそうだが、参加できるタイミングが合えば、積極的にチームに帯同していきたいという思いも持つ。山口GMも「特別指定にしたので、戦力としてもみている」とキッパリ。「グランパスの勝利のために全力を尽くしたい」。現在15位と低迷するチームの起爆剤として必要になる日も、そう遠くはないかもしれない。
 
「いち早く戻りたいという気持ちはあった。それが今のタイミングで良かった。まずは立正大が2部なので、1部に上げたいけど、グランパスでの試合は呼ばれたりしたら、自分の全力で臨みたいと思います」

(取材・文 児玉幸洋)
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