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“秘策3バック”準備もコロナ続発で顔ぶれ一変…それでも首位に渡り合った岡山・木山監督「十分に勝つチャンスもあったので悔しいの一言」

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“緊急事態”岡山は首位の横浜FCに0-1で惜敗

[8.20 J2第32節 横浜FC 1-0 岡山 ニッパツ]

 首位相手に“緊急事態”を感じさせない奮闘を見せたファジアーノ岡山だったが、敵地で勝ち点を持ち帰ることはできなかった。試合後、記者会見に出席した木山隆之監督は「総括、悔しい。その一言」と切り出しつつ、「いろんな状態があったけど、選手たちは死力を尽くしてやった。横浜FCさんはいま首位で強いチームだけど、選手たちは立ち向かった。十分に勝つチャンスもあったと思うので悔しいの一言」と心境を語った。

 岡山はこの日の試合前、選手6人が新型コロナウイルスの陽性診断を受けたと発表。15日以降ではこれが8人目の陽性例となった。指揮官によると「(午後)1時までメンバーを決められず、準備が終わった後に選手が欠けたので、このメンバーでトレーニングすることもできなかった」という緊急事態。横浜FC対策として3-4-2-1の布陣で臨むことは「週の頭から決めていた」というが、その顔ぶれは想定と大きく異なるものだった。

 それでもピッチ上では、首位クラブに決して引けを取らない戦いを演じた。

 序盤こそ相手の迫力に押し込まれる場面もあったが、ペナルティエリア内に全員が入っての鬼気迫る守備で難局を切り抜けると、その後は締まった展開を継続。準備してきたプレッシングも十分に機能し、五分五分といえる戦況を続けた。指揮官にとっても「われわれとしては狙ったとおりのゲームができていた」と大きく手応えを得られる内容だった。

 後半も0-0のまま試合を進め、想定どおりに選手交代を実施。ところがセットプレーでゴールに迫った矢先の後半26分、カウンターから相手の交代選手に屈して先制点を与えてしまい、このゴールが決勝点となって0-1で敗れた。

「勝てると思った瞬間がたくさんあった」。

 試合後、指揮官は“緊急事態”を言い訳にすることなく、心底悔しそうな表情で会見場に立った。「前半ゼロで行けたことも、後半に自分たちのペースをつかんで、最後に勝負のところで2トップにするところプランも持っていて、そこまで行けたことで勝てる思いが強かったので、非常に悔しい」。その上で「選手たちのプレーは賞賛してもいい」と絞り出した。

 その悔しさは“代役出場”となった選手たちも同様だった。8試合ぶりにリーグ戦のピッチに立ったDF宮崎智彦は「いまいるメンバーでやるしかなかった」と振り返りつつも、「こういう時だからこそ、僕も久々のゲームだったし、結果をしっかり出さないといけない」と厳しい表情。「情けない結果になってしまった。力になれずに悔しい」と責任を感じていた。

 もっとも、この日は主戦場のボランチやサイドバックではなく3バックの左での出場。マッチアップ相手は14cmも身長差のあるFW伊藤翔というシチュエーションで、苦しい対応を迫られても仕方ないところだったが、空中戦でやられる場面はほとんどなかった。そんなパフォーマンスには木山監督も「今日プレーできる選手の中で、さすがだなと思ったのは宮崎。マッチアップで背の高さが違ったけどタイトに潰していたし、クロスも負けなかったので能力を出して対応してくれた」と称賛の言葉を送っていた。

 局面対応には「ボランチの経験もあるし、逆に中でやりたい欲もあるので、すごく違和感なくやれたんじゃないかと思う」と手応えものぞかせた宮崎智。象徴的だったのは前半途中、伊藤よりも先にハイジャンプを見せた宮崎の顎が、伊藤の頭部に当たるという珍しい接触プレーがあった。その後は包帯を巻きながらのプレーも強いられたが、「身長がないなりに自分で工夫してというところで、ネガティブな部分をプラスにしていけるようにはいままでトレーニングしてきて、自分なりに分析しながらやってきたので、相手の高い選手にも勝てる自信はある。ゴール前で相手に触られてしまった部分はあったけど、対応はできていたのかなと思う」(宮崎)という言葉どおりの凄みを見せつけていた。

 他にも圧巻の空中戦を続けたDF濱田水輝、攻撃参加を繰り返したDF成瀬竣平、今夏加入のデビュー戦で中盤を担ったMF輪笠祐士ら、これまで出場機会の少なかった選手も持ち味を発揮。現状のレギュレーションでは復帰まで時間がかかる主力選手が出てくる可能性もあるが、J1昇格レースは残り11試合、この機会をチーム力の底上げにつなげるしかないのが現実であり、その兆しが見えたのもたしかだった。

「ネガティブな部分だけでもなかったし、普段ゲームに絡めないメンバーだったり、久々にスタメンで出た選手もしっかりと自分の役割をチームとしてできていたんじゃないかというポジティブな面もあったので、これからもそこは続けながら、映像を振り返ったり、コミュニケーションを取ってこの結果を反省しながら、チームとしてもっと強くなっていきたい」(宮崎智)。“緊急事態”と向き合った一戦を経て、岡山は悲願の初昇格へラストスパートを仕掛けていく。

(取材・文 竹内達也)
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