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鹿島帰還の昌子&植田に拍手鳴り止まず…「生で姿を見ると涙が」と声詰まらせるサポーターも

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DF昌子源とDF植田直通

 15日に有観客で行われた鹿島アントラーズの新体制発表会。今季の新加入選手が数人ごとに挨拶を行う中、一際がっしりした体躯の2人が壇上に上がると、会場からの拍手はしばらく鳴り止まなかった。DF昌子源(←G大阪)とDF植田直通(←ニーム)。過去6年間も遠ざかったタイトルの味を知るCBコンビの帰還に、「生で姿を見ると涙が出そうで……」と声を詰まらせるファン・サポーターの姿もあった。

 2011〜18年に鹿島に在籍した昌子はトゥールーズとG大阪でのプレーを経て5年ぶり、13〜18年に在籍の植田はセルクル・ブルージュとニームでの海外経験を経て4年半ぶりの復帰。おなじみのユニフォーム姿でかつて慣れ親しだサポーターの前に立った2人は、それぞれ照れ笑いを浮かべながら「ただいま」と第一声を発した。

 昌子は昨季までの3年間、G大阪の選手としてカシマ凱旋を経験。「帰ってこいとずっと言っていただいていて、『帰ります!』とは絶対に言えない状態で手を振っていたけど、こうしてそれが実現したことをうれしく思います」。そうサポーターに感謝を述べつつ、「日本一タイトルを取っているクラブで、育ててもらったクラブなのでこのユニフォームとこのエンブレムは特別」と復帰の喜びを語った。

 そんな先輩に続いてマイクを握った植田は「まさか源くんと同じタイミングになるとは思っていなかったのでビックリ」と言いながらも、「このユニフォームを着てプレーしたい思いがずっとあった」と明かし、「ただ帰ってきただけでなく、帰ってきた理由はタイトルを取ることだけ。結果を届けられるようにしたい」とタイトル奪還への決意を語った。

 2018年のロシアW杯を経て、欧州挑戦に羽ばたいていった2人。いずれにとってもこの4年間余りは順風満帆な日々ではなかった。昌子は移籍先のトゥールーズで怪我に苦しみ、日本復帰後のG大阪でもコンディション調整に苦慮。植田も欧州2クラブ目のニームで出場機会が限られ、今季前半戦はわずか1試合の出場にとどまった。

 その結果、いずれもカタールW杯のメンバー入りも叶わなかった。なかでも植田はアジア最終予選まで招集されていたが、直前の序列変更でメンバー外。新体制発表会後の取材対応では「一緒にやってきた選手がたくさんいて、入れない悔しさはもちろんあった。今まで一緒にやってきた選手が頑張っている姿を見てかなり刺激を受けたし、この場に立てない悔しさをより感じる大会だった」と悔しさもあらわにした。

 もっとも、この4年間で苦しんだのはチームを離れた2人だけでなかった。鹿島自体も2人が最後に在籍していた2018年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制して以降、国内外で無冠のまま。その後、欧州基準のサッカースタイルを構築すべく、2人の外国人指揮官を招聘したが、いずれの挑戦も道半ばで失敗に終わった。

 昨季途中からはレジェンドの岩政大樹氏を指揮官に据え、“新しい鹿島”の創造に取り組んでいる。そこで呼び戻されたのがCBとしても岩政氏の薫陶を受けてきた2人。託される役割は大きく、それぞれの立場から経験や能力を落とし込んでいくつもりだ。

 昌子はクラブ幹部が求める「鹿島を体現できる選手」としての振る舞いに自身の使命を見出している。所属当時を振り返りながら「一番変わったのは年齢。スンテを除けば最年長でフィールド最年長。まさか30歳でその立場になるとは思っていなかった」と冗談めかしつつ、「でも特に変わることはなく、昔と同じような振る舞いをしていければ」ときっぱりと語った。

 一方、植田は4年半の欧州挑戦で培ったものも還元したい構えだ。「いろんなことを経験したし、その中でもハングリー精神はついた。人間として少し大きくなれたかなと思う部分がある」とメンタル面の成長を実感したといい、「うまくいかないことが海外ではたくさんあって、それが当たり前。徐々に慣れていく自分に自分でびっくりした部分はあるし、乗り越えてきて日本に帰ってきたので、かなり余裕を持ってやれるんじゃないかと思う。そういう経験を活かして頑張っていければ」と前向きに語った。

 個人としてもチームとしても心機一転の新シーズン。2人はCBコンビとしてもその先頭に立って引っ張っていくことが期待されていたものの、昌子が始動直後のトレーニングで右膝内側側副靭帯損傷の怪我をしたため、フォールドに2人が揃うのは開幕後のことになりそうだ。それでも昌子は4人が任命されたキャプテンの一員を担当することが決定。「できるだけ早く治して頑張りたい」とまずはリハビリに取り組んでいく姿勢を強調するものの、しばらくはピッチ外での仕事に集中していくことになる。

 そうした役割はサポーターから求められているものでもある。この日のイベントでは来場者からの質問コーナーも設けられたが、「生で姿を見ると涙が出そうで……」と声を詰まらせながら立ち上がった男性から「いまの鹿島に一番もたらしたいものは何か」というリーダーシップに期待する問いも向けられていた。

 これに対して昌子は「いろいろと自分自身も考えている。『鹿島とは』と言われても全てがわかっているわけではない」と謙虚に返答しつつも、小笠原満男氏(アカデミーのテクニカルアドバイザー)、曽ヶ端準氏(ユースGKコーチ)、中田浩二氏(クラブ・リレーションズ・オフィサー)の名前を挙げ、「鹿島の黄金期を支えてきてくれた方から学んだ練習への姿勢、練習の一つ一つのプレー、勝負にこだわるところ」と力強い言葉。「戦っていく姿勢を見せていきたい」と力を込めた。

 そうした振る舞いは後輩の植田も示そうとしている。「日頃の練習が一番大事だと感じている。そこでどれだけ自分が厳しさを持ってやれるか。厳しさを持ってやれれば周りに伝わっていく」。黄金期の最終ラインを支えた岩政監督のもと、7年ぶりのタイトル奪還が至上命題となる新シーズン。常勝の看板を取り戻していくための挑戦は、栄冠の味を知る2人の貢献なしには成し遂げられない。

イチゴの日(1月15日)モチーフの被り物で登場した名良橋晃氏に苦笑いの昌子、植田

昌子はかつての背番号3、植田はおなじみの5番を二つ並べた

イベント終了後、取材に応じた2人

(取材・文 竹内達也)
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