J1開幕節のノーゴール誤審で異例の緊急会見「あってはいけないこと」今後の審判割り当て、GLTの導入可否、誹謗中傷問題にも言及
日本サッカー協会(JFA)の扇谷健司審判委員長が22日、臨時のメディアブリーフィングを行い、今月19日に行われたJ1開幕節のサンフレッチェ広島対北海道コンサドーレ札幌戦で得点に関わる誤審があったことを認めた。試合は0-0のドローで終わっていたが、再試合の対象となる「競技規則の適用ミス」ではないため、試合結果には変更はないという。
誤審が起きたのは後半29分のプレー。広島はMF野津田岳人の左CKをDF佐々木翔が頭でそらし、MF川村拓夢がヘディングシュートを放ったが、ゴールライン付近で札幌GK菅野孝憲が足でかき出した。リプレイ映像ではボールがゴールラインを越えているようにも見えたが、ピッチ上の主審・副審はゴールの判定を下さず、映像を確認したVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も判定を覆さなかった。
扇谷委員長は「審判委員会としては、本来であれば得点を認めるべき、ゴールインとすべき事象だったと結論づけた」と説明。判定に関わったVAR、AVARについては「もう少し教育が必要。基本的なことをもう一度改めて伝えていく必要がある。そのためには一定期間が必要」と述べ、当面の間、Jリーグの割り当てから外れる可能性を示唆した。
またピッチ上の主審・副審がゴールイン判定を行うのは難く、扇谷委員長は「ピッチ上の4人に関してはどうしようもないものだった」と述べたうえで、「彼らは非常に優秀な審判員だと思っている」と信頼を強調。一方で「現状だと精神的に厳しい状況なので、サポートしながら復帰を待たせていただければ」と述べ、こちらも復帰に時間がかかる可能性があると明かした。
扇谷委員長によると、誤審が起きた原因は「VARが決断できなかったこと」。VARが判定を覆すための基準としては、ピッチ上の判定に「明白かつはっきりとした誤り」があったというハードルが設けられていることもあり、「少し分かりにくいものは決断しないこともある」という制約が働くことがある。
だが、今回のケースは「あの映像を見た時には入っていると思われるし、私もそう思っている」と扇谷委員長。「今回はボールとゴールポストとの間に芝生の色が見えている。VARとして判断して、オンフィールドレビューではなく、VARオンリーレビューで主審に得点を認めるべきだと伝えるべきだった」と結論づけた。
判定時の手続きに際しては、映像の不鮮明さも一部で議論を呼んでいたが、扇谷委員長はDAZNの中継映像に比べてビデオオペレーションルームの映像は解像度が落ちる可能性があることを指摘しつつも、今回の例は「それをもってしても判断できたと考えている」と映像のクオリティーは影響しなかったという見解を示した。
さらに扇谷委員長は審判委員会の責任も自ら指摘。「これまで(ラインの内外やオフサイドなどの)ファクトはピクチャで止まったものを見てくださいとしていたが、コマ数の問題で必ずしもボールが一番奥に行っているときに止まるものではない。今回はループで(映像を繰り返して)見たほうが明確だった。VARの二人はベストを尽くしていたが、われわれが伝えきれていなかったことも大きな問題だった」と述べた。
またイングランドのプレミアリーグなど欧州各国リーグではこうした誤審を防ぐため、自動でゴールインの成否が主審に通知されるゴールラインテクノロジー(GLT)がVAR導入以前から採用されている。もっとも、国内ではスタジアムの形状などから導入が難しいのが現状だ。扇谷委員長は「今までもGLTは議論をしているが、日本のスタジアム環境でできない可能性が高い。ある会場だけやるのはアンフェアというのがあり、すぐというのは現状難しい」と話した。
すでに現役の審判員には今回の事例を共有したといい、再発防止策については「次の節から生かせるようにやっていくしかない」と説明。「全員の審判員が(別の本業を持っており、)プロではないので、すぐに集まることはできないが、ベストを尽くして、チームやサポーター、メディアの方から信頼が得られる審判になっていかないといけない」と話した。
審判委員会はこうしたレフェリーブリーフィングをシーズン開幕前から終了後にかけて定期的に行っているが、一つの判定で緊急に開くのは異例のこと。説明に踏み切った背景について扇谷委員長は「VARは透明性が求められている。今回の審判員が下した判定はあってはならない、われわれとしてはあってはいけないこと。VARは大変なことだと理解しているが、それをもってしてもサッカーを守るため、こうしたことをみなさんにお話ししていただいて、サッカーに関わる皆さんにお詫びをさせていただいて、信頼性のあるVARを目指していきたい」と説明した。
ブリーフィングの結びには扇谷委員長が「こうした判定になってしまったこと、審判委員会の委員長としてサッカーに関わる皆さんにお詫びしたい。申し訳ございませんでした」と謝罪。その上で「審判員はベストを尽くしてやってくれていると思う。彼らに対する誹謗中傷は避けていただきたいと思っている。いまこの状況で偉そうなことを言えるかはわからないが、彼らには生活がある。ぜひ彼らに対する誹謗中傷が起きないようにお願いできれば」と審判員への誹謗中傷を避けるよう訴えた。
(取材・文 竹内達也)
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誤審が起きたのは後半29分のプレー。広島はMF野津田岳人の左CKをDF佐々木翔が頭でそらし、MF川村拓夢がヘディングシュートを放ったが、ゴールライン付近で札幌GK菅野孝憲が足でかき出した。リプレイ映像ではボールがゴールラインを越えているようにも見えたが、ピッチ上の主審・副審はゴールの判定を下さず、映像を確認したVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も判定を覆さなかった。
扇谷委員長は「審判委員会としては、本来であれば得点を認めるべき、ゴールインとすべき事象だったと結論づけた」と説明。判定に関わったVAR、AVARについては「もう少し教育が必要。基本的なことをもう一度改めて伝えていく必要がある。そのためには一定期間が必要」と述べ、当面の間、Jリーグの割り当てから外れる可能性を示唆した。
またピッチ上の主審・副審がゴールイン判定を行うのは難く、扇谷委員長は「ピッチ上の4人に関してはどうしようもないものだった」と述べたうえで、「彼らは非常に優秀な審判員だと思っている」と信頼を強調。一方で「現状だと精神的に厳しい状況なので、サポートしながら復帰を待たせていただければ」と述べ、こちらも復帰に時間がかかる可能性があると明かした。
扇谷委員長によると、誤審が起きた原因は「VARが決断できなかったこと」。VARが判定を覆すための基準としては、ピッチ上の判定に「明白かつはっきりとした誤り」があったというハードルが設けられていることもあり、「少し分かりにくいものは決断しないこともある」という制約が働くことがある。
だが、今回のケースは「あの映像を見た時には入っていると思われるし、私もそう思っている」と扇谷委員長。「今回はボールとゴールポストとの間に芝生の色が見えている。VARとして判断して、オンフィールドレビューではなく、VARオンリーレビューで主審に得点を認めるべきだと伝えるべきだった」と結論づけた。
判定時の手続きに際しては、映像の不鮮明さも一部で議論を呼んでいたが、扇谷委員長はDAZNの中継映像に比べてビデオオペレーションルームの映像は解像度が落ちる可能性があることを指摘しつつも、今回の例は「それをもってしても判断できたと考えている」と映像のクオリティーは影響しなかったという見解を示した。
さらに扇谷委員長は審判委員会の責任も自ら指摘。「これまで(ラインの内外やオフサイドなどの)ファクトはピクチャで止まったものを見てくださいとしていたが、コマ数の問題で必ずしもボールが一番奥に行っているときに止まるものではない。今回はループで(映像を繰り返して)見たほうが明確だった。VARの二人はベストを尽くしていたが、われわれが伝えきれていなかったことも大きな問題だった」と述べた。
またイングランドのプレミアリーグなど欧州各国リーグではこうした誤審を防ぐため、自動でゴールインの成否が主審に通知されるゴールラインテクノロジー(GLT)がVAR導入以前から採用されている。もっとも、国内ではスタジアムの形状などから導入が難しいのが現状だ。扇谷委員長は「今までもGLTは議論をしているが、日本のスタジアム環境でできない可能性が高い。ある会場だけやるのはアンフェアというのがあり、すぐというのは現状難しい」と話した。
すでに現役の審判員には今回の事例を共有したといい、再発防止策については「次の節から生かせるようにやっていくしかない」と説明。「全員の審判員が(別の本業を持っており、)プロではないので、すぐに集まることはできないが、ベストを尽くして、チームやサポーター、メディアの方から信頼が得られる審判になっていかないといけない」と話した。
審判委員会はこうしたレフェリーブリーフィングをシーズン開幕前から終了後にかけて定期的に行っているが、一つの判定で緊急に開くのは異例のこと。説明に踏み切った背景について扇谷委員長は「VARは透明性が求められている。今回の審判員が下した判定はあってはならない、われわれとしてはあってはいけないこと。VARは大変なことだと理解しているが、それをもってしてもサッカーを守るため、こうしたことをみなさんにお話ししていただいて、サッカーに関わる皆さんにお詫びをさせていただいて、信頼性のあるVARを目指していきたい」と説明した。
ブリーフィングの結びには扇谷委員長が「こうした判定になってしまったこと、審判委員会の委員長としてサッカーに関わる皆さんにお詫びしたい。申し訳ございませんでした」と謝罪。その上で「審判員はベストを尽くしてやってくれていると思う。彼らに対する誹謗中傷は避けていただきたいと思っている。いまこの状況で偉そうなことを言えるかはわからないが、彼らには生活がある。ぜひ彼らに対する誹謗中傷が起きないようにお願いできれば」と審判員への誹謗中傷を避けるよう訴えた。
(取材・文 竹内達也)
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