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関東大学L得点王→名古屋加入から7年目…「ここまで這い上がってきた」甲府28歳FW松本孝平がJ2デビュー!

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ヴァンフォーレ甲府FW松本孝平

[3.5 J2第3節 東京V 0-0 甲府 味スタ]

 名古屋グランパスでプロ生活をスタートして7年目、異色のキャリアを過ごしてきた大型ストライカーが待ちに待ったJ2デビューを果たした。「僕はJ1を目指している最中なので小さな一歩だけど、その一歩を踏み出せたことがよかった」。ヴァンフォーレ甲府所属のFW松本孝平はJ2第3節・東京V戦の試合後、静かに感慨を口にした。

 ピッチに入ればひときわ目立つ186cm、85kgのスケール感。28歳の松本は激動のサッカー人生を過ごしてきた。

 小学生時代に股関節を負傷し、満足にサッカーのできなかった2年間を過ごした。中学2年時に再びプレーを再開し、藤沢清流高では関東大会出場にまでこぎつけたが、卒業後は消防士を目指して競技の第一線から離れた。それでも国士舘大1年次の11月、遅れてサッカー部に入部すると、2年次にIリーグ全国優勝と大会MVP、3年次に関東大学リーグ得点王と華々しい大活躍。同年には全日本大学選抜にも選ばれ、4年次の2016年夏に名古屋の内定を勝ち取った。

 名古屋は同年にJ2降格の憂き目に遭っていたとはいえ、国内屈指のビッグクラブでJリーガーとなった松本。ところが、そこからは怪我が運命を狂わせた。大学4年次の10月に右脛の開放性骨折、プロ1年目の終盤には左アキレス腱断裂の重傷。復帰後の18年にJ3のSC相模原に期限付き移籍したが、ブランクの影響は大きく、13試合ノーゴールの結果にとどまった。その結果、同年限りで名古屋と契約満了。翌年から3年間はFCマルヤス岡崎、FCティアモ枚方とJFLで過ごしてきた。

 しかし、そこから松本は這い上がってきた。21年にFCティアモ枚方で30試合12得点を記録すると、昨季はカマタマーレ讃岐に加入し、4年ぶりに戻ってきたJ3リーグで31試合9得点をマーク。今オフには昨季天皇杯王者の甲府からのオファーを受け、J2リーグの舞台へと帰ってきた。「怪我でコンディションが落ちていたことが一番の原因だったので、コンディションをどう戻すかというところで食事面をはじめ、メンタル面、練習の取り組み方、試合の取り組み方で差を埋めようと思ってやってきた」という成果だった。

 下部カテゴリでプレーしていた間も、上を目指すことはやめなかったという。「自分がどうしたら上に行けるかを日々考えてきた。それに伴う結果をどう出すか、プロセスを常に考えていたので、日々できることを毎日一生懸命にやってきて今があると感じている。自分が信じてやってきたことがこうして結果につながった」。その当時の経験は、久々のJ2挑戦というハードルと向き合う際にも活かされている。

「最初はみんな上手くて、そこに圧倒された部分も正直あった。ただ僕自身がこれまで続けてきたプロセスにもある。こんな経験をしてきた選手は他にいないし、実際にここまで這い上がってきた自信もあった。僕にしかできないこともある。僕にはできないことができる選手がいるのですごく勉強になるし、僕の特徴を活かしながら成長していける日々になっている」

 そうして目指すはJ2リーグで「20点取って、得点王を取りたい」。7年越しのJ2デビュー戦は後半29分からの約20分間で、チーム全体がなかなか攻撃を組み立てられなかった中でシュートはゼロ。ほろ苦い船出となったが、「一番良いのは甲府と共にJ1に昇格すること。個人としてもJ1から求められるような選手になりたい」と力強く語る。

 またFWピーター・ウタカ、FW三平和司らが並ぶ出番争いを制するべく、チームへの貢献度も高めていく構えだ。「僕の仕事は得点を重ねること。まずはそこを第一に持っているし、ピッチに立つからにはそこをトライしてプレーする。ただそれ以外でも守備の貢献度、体を張ってタメを作るところ、自分にできることを100%体現して結果につなげていきたい」。数々の苦難に向き合い、結果でキャリアを切り拓いてきた28歳はここからさらに上を目指す。

(取材・文 竹内達也)
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