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古巣戦で奮闘も…新潟MF伊藤涼太郎「浦和からまたプロの厳しさを教えられた」

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[3.18 J1リーグ第5節 浦和 2-1 新潟 浦和駒場]

「以前は試合に出られないことが多かった悔しさがあったが、きょうはまた違った悔しさがあった。自分の中ではプロになってから一番悔しい試合だった」。アルビレックス新潟の背番号13、MF伊藤涼太郎は自分に言い聞かせるようにハッキリとした口調で、そしてしっかりと前を見据えながら言った。

 トップ下で先発したが、浦和のMF伊藤敦樹の厳しいマークに四苦八苦した。高い位置で前を向いてボールを持てればプレーは自在。アイデアも豊富。しかし、タイトなマークで自由を与えてもらえない。「マークは想定内。マークされてもはがせる技術をもっともっとつけないと」と唇を噛みしめた。

 古巣との一戦に燃えていた。浦和は作陽高から2016年に入団し、2021年まで在籍したチーム。その間、水戸や大分への期限付き移籍を経験しながらもがくように力を蓄えたが、復帰するたびに跳ね返され、6年間でJ1リーグ戦の出場は大分時代を含め11試合にとどまった。

 それでも2022年に完全移籍で向かった新天地の新潟でレギュラーポジションを奪い、中心選手としてJ2優勝に貢献。闘いの舞台をJ1に移した今季もここまで2得点2アシストの大活躍を見せ、試合前の先発紹介では浦和サポーターからのブーイングを浴びた。

 伊藤自身、「今までお世話になったクラブでもあり、プロとしての厳しさを与えてくれたクラブ」との一戦に向け、気持ちを高ぶらせつつ、整えてきたという自信もあったはずだ。幸先良く前半10分に新潟が先制しながら、その後は攻勢に出た浦和に押し込まれ、前半のうちに逆転された。巻き返したい後半は反撃の一手が出なかった。

「このスタジアムは浦和の原点であり、伝統あるスタジアム。浦和サポーターが作り出す雰囲気に圧倒されたわけではないですけど、すごかった。その圧倒するような雰囲気を気持ちではなく技術でかわしていくというのが新潟のサッカーですが、それをピッチで出せなかった。また違った形で浦和からプロとしての厳しさを教えられた。J1は甘くないんだ、とこの90分間で突きつけられた」と素直な思いを口にした。

 それでも自身の成長には手応えを感じている。「去年も充実したシーズンを送れたし、今年も5試合しかやっていないけど、充実した日々を送っている。自分の得意としているプレーもこの4試合はできていた。ただ、今日みたいな試合でどれだけ自分の仕事ができるか。数少ない、ボールを受けたときに何ができるかを追求していかないと、これからもっと厳しい闘いがJ1で待っている」

 日本代表という目標もある。「今までの4試合では多くの得点に絡んでいますが、これを1年間続けないと意味がない。日本代表や海外で活躍している選手やワールドカップで結果を残している選手は活躍し続けている。たかが3、4試合ではなく、1シーズンすべての試合で活躍しないと代表は見えてこない。個人的にはまだまだ」。後半アディショナルタイムには絶好の位置でFKのチャンスを得たが、直接狙ったシュートは枠を外れた。

「この90分で自分にはチャンスがほとんどなくて、唯一あの最後のフリーキックだけがチャンスだったけど、壁も大きく感じましたし、プレッシャーが伝わった」。そして、何度も繰り返したのは「もっと練習しないと」という言葉。向上心に油が注がれた証拠だろう。「次はビッグスワンで勝つ」。9月にあるホームでの浦和戦でチームを勝たせることを誓った。

(取材・文 矢内由美子)

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