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鮮やかトリックCK、当日朝のプレス修正決断、5バックも準備済み…盤石の首位奪還劇に町田・黒田剛監督「選手たちも学びと自信を持ったと思う」

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2ゴール1アシストのFW荒木駿太と抱き合う黒田剛監督

[4.16 J2第10節 町田 3-1 大分 Gスタ]

 今季初めて2試合続けて勝利がない状態で迎えたJ2頂上対決、FC町田ゼルビアは盤石の試合運びで首位の大分トリニータを破り、順位表の一番上に返り咲いた。試合後、黒田剛監督は「立場的には非常に苦しい状況だったが、選手たちが奮起し、一致団結して戦うことでこうした結果をもたらせるということで選手たちも学びと自信を持ったと思う」と手応えを口にした。

 立ち上がりこそ大分に攻め込まれる場面もあったが、前半10分以降はほぼ一方的な試合展開に持ち込み、ハーフタイムのスコアは3-0。指揮官も「前半はほとんどプラン通り」と手放しで称えるほどの内容だった。

 まずは前半23分、先制点はデザインされたセットプレーから決まった。MF高江麗央が右CKをショートで出し、これをDF翁長聖がつなぐと、直前にフェイク気味にサイドに流れていたMF平河悠がニアゾーンを突破して折り返し、MF荒木駿太が右足ダイレクトでネットを揺らすという美しい流れ。これは黒田監督が準備していたものだという。

「大分はリスタートからの得点が多いチームだったのでそこについての警戒、マークの付き方も確認もしてきていたが、こちらも流れの中よりリスタートで1点取りたいということで、私も高校30年やっている中で、ロングスロー含めてかなりトリックもやってきた。その中で彼らのクオリティーなら絶対にできる、これなら絶対にいけるというのをチョイスし、先制点に繋がったので良かった……というかビックリしました(笑)」(黒田監督)

 このトリックは「プレッシングが続いているうちに先制点を取りたいので、右のCKの1本目は必ずやろうと決めていた。またトリックはスタートのメンバーで練習するので、出ているうちにやっておかないといけないので」とタイミングを決めていたという指揮官。鮮やかな先制劇には大分の下平隆宏監督も「デザインしているであろうトリッキーなセットプレーで、“やられた感”がすごくあった。あれがすごく大きかった。セットプレーはかなり警戒していて、警戒していた中でやられてしまったので精神的にもきつかった」としてやられた様子だった。

 また敵将が続けて「少しそのショックがあったような立ち上がりの前半となった」と話したように、この1点がその後の試合展開をも分けた。大分が原点に立ち戻るようなビルドアップで反撃を狙っていく中、町田は果敢なハイプレスを敢行。すると前半33分、MF高橋大悟との連動したプレッシングから荒木がパスカットし、そのままエリア内に駆け上がって2点目となるシュートを叩き込んだ。

 そうしたプレッシングへの姿勢は、選手たちのトレーニングの様子を踏まえ、試合直前まで修正を重ねてきた入念さ準備の賜物だったという。「怖がらずに、牽制とか規制を加えるということより、前からプレッシングに行って、相手のミスを誘っていこうというところが功を奏した得点だった」。そう選手たちを称えた指揮官は、前節の磐田戦(△1-1)以降の練習を次のように振り返った。

「昨日までの練習の中でダブルボランチ、シャドーにボールが入ることをあまりにも怖がりすぎて、前からボールを取りに行けない状況、要するに中央を締めることが優先されて、ボールになかなか寄せられない場面が出てきて、いいイメージで終わっていなかった」。その背景には「ミーティングの中で作った映像が大分の良い場面ばかりをチョイスしすぎたものですから、選手たちが『こんなにクオリティーが高いなら……』と、臆病ではないが規制することに重きを置いたトレーニングになってしまっていた」という事情もあった。

 そこで指揮官は、大分戦直前の午前に行ったミーティングで「あくまでもボールを取ることが優先だ」という姿勢を強調。「前からどんどんプレスをかけていき、それも背中で消しながらかけていこうと。そして前からボールを奪う、相手のミスを誘うというところを、ビビっってもしょうがないから前からどんどん行こうというのを共有できた。それが立ち上がりからいい循環を生んだのかなと思う」と胸を張った。

 また前半のうちにさらに1点を追加して迎えた後半は大分が4-3-3にシステムを変更してきたことで、劣勢の時間もつくられ、「3-0のまま終わらせるプランを描いていた」という通りの展開とはならなかった。それでも黒田監督は失点直後、5-4-1の布陣変更を実施。「最悪1点取られても2点、3点取られないようにと、3バックのプランもハーフタイムにきちっと確認しながら後半を迎えた」というすでに準備していた次善策で、大分の追撃をシャットアウトした。

 3試合連続で失点したことについては「学習する材料として次に繋げていきたい。あの1点を重く捉えて次の試合にいい準備をしていけるようにしたい」と教訓にしていく構えだが、リバウンドメンタリティーが問われる3連戦の最終戦で首位を撃破したのは上出来の結果。試合直前まで続けた入念な準備、試合展開を見越したプランの準備、戦況に合わせた戦い方の修正と要所要所で流れを手繰り寄せ、あらためて“黒田ゼルビア”の強さを示す結果となった。

(取材・文 竹内達也)
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