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横浜FCに初白星もたらす90+4分の大仕事! GKブローダーセンがヘッドギアを脱いでいた理由「自分はもう大丈夫」

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スーパーセーブを見せたGKスベンド・ブローダーセン

[5.3 J1第11節 横浜FC 1-0 新潟 ニッパツ]

 1-0で迎えた後半アディショナルタイム4分、今季初白星を目前にした横浜FCに絶体絶命のピンチが立ちはだかった。空中戦で立て続けに競り負け、流れたボールがゴール前に転がると、新潟MF三戸舜介がシュート体勢を整える——。それでも最後は頼れる守護神がチームを救ってみせた。

 ドイツ代表として東京五輪にも出場したGKスベンド・ブローダーセンは自身の左を狙ってきたシュートに対し、あたかも先読みしていたかのように左手で反応。かすかに触れたボールは鋭く軌道を変え、ゴールマウスの外に飛んでいった。

 このセーブが勝負を分け、横浜FCは昇格組対決に勝利。「自分だけでなく全てのGKに共通していることだが、今までの経験の中で判断した。彼の体の向きでボールが自分の左にくるのは予想できたし、一番手が出しやすい位置で準備をして、そこにボールが来たので触れることができた」。守護神の働きで開幕11試合目で待ちに待った初白星を手にした。

 開幕から10試合未勝利とあり、チーム内には大きな重圧が漂っていた。その重みは試合後のフラッシュインタビューで発露した。涙ながらにテレビカメラの前に立ったブローダーセンは「今日は感情的すぎる……。みんなのため、クラブのためにずっと勝ちたかった。クラブ全体で恩返しをしたかった」と流暢な日本語で喜びを爆発させた。

 またブローダーセン自身もこの一戦に大きな覚悟を持って臨んでいた。

 昨年9月24日のJ2第38節長崎戦で重い脳震盪を負った影響もあり、今季の序盤戦は出場機会がなかったブローダーセン。後遺症がなくなり、4月5日のルヴァン杯名古屋戦で復帰を果たしが、その後もヘッドギアを着用しながらのプレーを続けていた。

 しかしこの日、ブローダーセンはヘッドギアを外してプレー。完全復活をアピールするための決断だった。

「今日の試合に入るまで、いつも通りヘッドギアをつけるつもりでいたけど、この試合にかける思いがあった。後遺症はもうないけど、念のため今までは試合で着けていたし、これからも練習では着けるつもりでいる。でも今日はこの試合にかける思いがあった。周りのみんなに信頼してもらう意味でも、自分はもう大丈夫だと、何かインパクトを残さないといけないという思いがあった。ファイティングポーズを取って、ヘッドキャップを取って、戻ってきたんだというところを見せたかった。それがこの結果につながった」

 厳しい連戦の中で覚悟を固め、ついに掴んだ勝ち点3。「厳しい日程の中、札幌戦で負けた気持ちを深く考える暇がなく今日の試合ができたので、自分たちのやるべきことに集中できた。こういう時は練習を重ねるよりも気持ち一つでいろいろと変わる」と胸を張った守護神は次節、首位との神戸戦に向けて「この勝利でいい雰囲気ができたと思うので、勢いよく神戸戦に向かっていきたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
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