beacon

涙の決意表明から1か月…鹿島FW鈴木優磨が5連勝導く怒りの決勝弾「腹が立ってたんで」

このエントリーをはてなブックマークに追加

FW鈴木優磨

[5.14 J1第13節 鹿島 2-0 名古屋 国立]

 鹿島アントラーズがJリーグ30周年記念メモリアルマッチを2-0で制し、オール完封での5連勝を果たした。国立決戦の主役となったのはFW鈴木優磨。前半29分、序盤の先制点がVARの介入によってノーゴールとされた怒りも込め、CKから“決め直し”のヘディングシュートで決勝点をもたらした。

 試合前からセットプレーは狙っていた。この日の名古屋はDF植田直通、DF関川郁万にマンマークをつけていたが、鈴木にはゾーンマークで対応する形。「自分についてくるだろうという予想はあった」という点は想定外だったが、ペナルティエリア内でのターゲットは明確だった。

「スカウティングで名古屋のセットプレーは非常に強いと思っていた。ただ昨日、植田くんと郁万と話していて、前は強いけど(キャスパー・)ユンカー選手のところで行けるんじゃないかと話していた」

 その想定が実ったのは前半12分だった。鈴木はMF樋口雄太の右CKでユンカーの背後に回り込むと、完璧なヘディングシュートをゴール左隅へ。ビッグマッチでの先制ゴールに約5万6000人の観衆が集まった国立が大きくどよめいた。

 ところが、この得点は認められなかった。樋口が蹴る直前、鈴木が名古屋MF稲垣祥を腰でブロックしたことがVARに見咎められ、木村博之主審がオンフィールドレビューを実施。鈴木のファウルが認定され、CKの蹴り直しが指示された。

「説明はあったけどよくわからなかったのが正直なところ。ブロックはサッカーをやっている選手からしたら当たり前のなので、あれがファウルを取られたら難しいというのが個人的な意見」(鈴木)

 試合再開は樋口のCKからとなった。インプレー前の出来事だったため、審判団の対応自体は正しいもの。ただ、VARの観測対象範囲がプレー外にも及ぶことに選手たちからは戸惑いの声も上がり、鈴木も不満を露わにしていた。

 それでも冷静さは失わなかった。幻の1点目から約15分後、同じく樋口の右CKに今度はスマートに反応すると、ヘディングシュートを今度はゴール右隅へ。「(ゴール取消しから)チームが流れを切らさず、同じように点を取られてよかった」(鈴木)。正真正銘の先制点を奪った。

 鈴木はゴールの直後に「腹が立ってたんで」と木村主審に詰め寄り、抗議も込めたゴールセレブレーションを披露。その後、幻の1点目と同様に国立の空に人差し指を突き上げた。「たくさんの人が俺に携わってくれて俺が成り立っているわけで、先祖に向けていつもやっている」。自らの感情を全面に表現するパフォーマンスで、国立の空気を鹿島ムードに持っていった。

 そんな鈴木は1-0で迎えた後半28分にピッチを退いたが、激しさと集中力を失わないチームはリードを守り続けると、最後はFW知念慶がダメ押し弾を沈めて2-0で勝利。同一シーズン内ではクラブ史上初めてとなる全試合無失点での5連勝を達成した。

「アントラーズに関わる人はわかると思うけど、アントラーズに特別な試合はあまりない。どの試合も同じモチベーションで臨むのが僕が知っているアントラーズで、僕が見てきた先輩たちの姿だった」国立決戦でも見せた伝統の勝負強さを誇った鈴木は「今日特別な日に限ってこういうパフォーマンスではなく、常にこのパフォーマンスを出していけるように頑張りたい」と力を込めた。

 この勝利で鹿島は5位に浮上。最後に敗れた4月15日の神戸戦(●1-5)後、鈴木はサポーターと涙ながらに向き合い、「ここから巻き返せる」と決意を述べたが、まさに有言実行の戦績に導いている。もっとも、鈴木はそう考えてはいない。「巻き返せたかはシーズンが終わってからしか総括できない。いまは目の前の1試合に集中して頑張ります」と静かに言い残し、取材エリアを後にした。

(取材・文 竹内達也)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2023シーズンJリーグ特集ページ
●[J1]第13節 スコア速報

TOP