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神戸の背番号8が駆け抜けた5年間…イニエスタ16分半のロングスピーチ、現役への情熱衰えず

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家族で写真に収まるイニエスタ

「今日は長いスピーチになってしまうことをお許しください」。質疑応答の前に自らマイクを手に取ったMFアンドレス・イニエスタが行った通訳を介したスピーチは、16分半に及んだ。

 プレーヤーとしての情熱が衰えていないということだ。2018年にヴィッセル神戸に加入からJ1通算113試合(21得点)に出場してきたイニエスタだが、今季はここまで出場3試合。世界的名手といえど、今月11日で39歳を迎えた大ベテランにも世の流れに逆らえない逆風が吹いていた。

 もちろん34歳だった加入当初からキャリアの晩年をどう過ごすか、神戸が最後のクラブなるかもしれないと意識して過ごしてきた。「ここで引退する姿を想像してきました」。ただそれは今ではない。国やクラブ名に言及することはなかったが、イニエスタ自身が導き出した結論は、現役選手として新天地を求めることだった。

「まだまだピッチで戦い続けたい。この数か月も激しいトレーニングを重ね、チームに貢献するための準備は出来ている感覚でやってきた。しかしそれぞれの歩む道が分かれ始め、監督の優先順位も違うところにあると感じ始めました。ただリスペクトを持って、その現実を受け止めました。最終的には競技面での現実と、プレーし続けることに対して、情熱を掛け合わせた結果、ここを去ることがベストだとクラブとの話し合いで決めました」。

 契約満了を待たずに退団となるが、あくまでも両者合意の上でのこと。わだかまりがないことは、イニエスタの涙が証明する。声を詰まらせながら目頭を押さえたのは、神戸で関わった選手、スタッフ、ファン・サポーターへの感謝を語った時だった。「簡単な決断ではなかった。最も難しい決断のひとつだった。永遠の別れではない。今後は違った形で、サポートして行ければと思っています」。さらには日本サッカー界への貢献も約束した。

 会見を終えると、イニエスタはいつものにこやかな表情に戻っていた。2男3女の子供たちとの写真撮影にも応じた。「このクラブで達成できたことは大きい。クラブの認知度を上げることができた。掲げていたことは達成できたと思う。良い時も悪い時もあったが、大きなことを成し遂げた感覚を持っています」。背番号8が駆け抜けた神戸での5年間は、今後も伝説として語り継がれていくはずだ。

(取材・文 児玉幸洋)
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