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“鈴木優磨の得点取り消し”VAR事案は海外でも…複雑なシーンに各国で対応分かれる

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FW鈴木優磨の得点取り消しに似た事案が発生

 5月14日に行われたJ1リーグ第13節・名古屋グランパス戦における鹿島アントラーズの得点が取り消されるシーンが話題となった。類似事案は海外でも発生しているが、各国で対応に違いが生じている。

 鹿島の事象は、コーナーキックを頭で合わせたFW鈴木優磨が直前にファウルをしていたというもの。ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の介入を受けて木村博之主審が得点を取り消したが、当該ファウルはCKが蹴られる前に発生したため、CKのやり直しで再開される珍しい対応に。JFA審判委員会はVARの介入と再開方法について「適切だった」と結論づけている。

 スペインのラ・リーガではさらに複雑な判定が下されている。2019-20シーズンに行われたバレンシアとバルセロナの一戦だ。

 この試合ではバレンシアがCKからゴールネットを揺らすも、ゴールイン後に主審が笛を吹いてバレンシアのファウルと判定。そこにVARが介入し、ファウルの判定は正しいが接触はインプレー前だったと主審に伝えた。結果、再開方法はバルセロナのFKではなくバレンシアのCKをやり直すことで決定された。

 ノーゴール判定が正しいのにも関わらずもう一度得点のチャンスが与えられたため、この判定は当時物議を醸していた。VARの導入初期段階で審判員間にも細かい手順が浸透していなかったこともあり、過剰介入と思われるシーンだった。

 一方、アメリカの審判組織であるプロフェッショナル・レフェリー・オーガナイゼーション(PRO)は異なる見解を持っているようだ。PROは今月3日、メジャー・リーグ・サッカー(MLS)第15節のスポルティング・カンザスシティ対ポートランド・ティンバーズでのVAR介入について見解を発表している。

 この試合ではカンザスシティがCKからゴールネットを揺らすも、直前に攻撃側選手が相手選手を押す反則があったことが明らかに。VARが介入してノーゴールに判定が覆った。再開はファウルがあった地点から守備側・ティンバーズのFKとなったが、映像をよく見るとファウルはCKが行われる前に発生していた。

 状況としては鹿島対名古屋と全く同じ。しかし、PROは「反則がインプレーとなる前に起きたため、VARプロトコルの範囲外だった」と説明し、不適切な対応だったと明かした。もっとも得点した選手がオフサイドという反則もあったため「得点を取り消した最終判定は正しい」としているが、プッシングの反則にVARが介入したことはミスだと伝えている。

 PROの見解はVARプロトコルで規定されている「競技規則は一度プレーを再開したならば再開方法(コーナーキック、スローインなど)の変更を認めていないことから、プレー再開後のレビューは、できない」に基づくものと思われる。

 ただ、この条文は「インプレー①→アウトオブプレー→インプレー②」という際にインプレー②の途中でインプレー①の事象に巻き戻って判定を変えることはできないといったルールを示している。鈴木優磨の件や今回のMLSの件はアウトオブプレー中の反則であるため、VARが介入可能という解釈もできるだろう。

 インプレー前に反則が発生してから得点が生まれることは稀なため、国によって解釈に違いのある難しい事象だった。



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