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名古屋vs浦和のVAR機材トラブルはモニター電源が原因…JFA審判委が経緯と今後の運用方針を説明

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VAR機材トラブルについて説明が行われた

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は10日、都内でメディア向けレフェリーブリーフィングを開き、6月26日のJ1第20節・名古屋グランパス浦和レッズで発生したVAR機材のトラブルはピッチ脇モニターの電源が落ちたことによるものだと明らかにした。今後、同様のトラブルなどで主審が映像を確認できない事案が発生した場合、本来はオンフィールドレビュー(OFR)を行うべき主観に基づく事象でも、VARオンリーレビューで最終判定を下す対応を取るという。

 この試合では後半キックオフ前、池内明彦主審が両チームベンチに対して説明を行い、キックオフが遅延。後半開始後、場内ビジョンと中継映像に「現在機材トラブルが発生しており、VARは適用できません」と表示されてVARシステムに不具合が生じていることが明らかになり、VARシステムが一時停止したと思われた。

 ところがその直後の後半6分、浦和のDF佐藤瑶大がゴールネットを揺らした際、オフサイド判定に伴うVARチェックがスタート。その結果、オフサイドの判定は変わらなかった。続く同14分ごろに「VARの機材トラブルは解消しました。これよりVARを適用します」と場内ビジョンと中継映像に表示され、VARシステムの再開が明示された。それ以降は目立ったトラブルは起きず、浦和が1-0で勝利した。

 今回の事象ではVARシステムにトラブルが起きていたにもかかわらず、試合中にVARチェックが行われたという流れになっており、試合後にはファン・サポーターから疑問の声が噴出していた。この日、佐藤隆治JFA審判マネジャーも「何が起こったんだろう」というファン・サポーターの心情に理解を表明。続いて機材トラブルの経緯を以下のように説明した。

▽前半44分
・コミュニケーションシステム経由でVARオペレーションルームとピッチの交信ができないことにVARが気づいた。
・アシスタントVAR(AVAR)が「テクノロジープロバイダースタッフ」に呼びかけ、VARルームと主審や副審の間に第4審判員を経由するトランシーバーでの交信に変更した。

▽後半キックオフ直前
・主審がレビュー用のモニターに映像が映っていないことに気づき、VARと確認作業を行った。
・VARが主審に対して「VARシステムが使えない」と報告した。
・VARの報告を受けた主審はレビュー用モニターに映像が映らない事実を踏まえ、オフサイドポジションなど主審の映像確認を必要としない事象のみVARオンリーレビューで対応し、オンフィールドレビューを必要とするケースは介入しないという運用を決定した。
・以上の決定を両ベンチに説明し、了承を得て2分遅れでキックオフした。
・場内ビジョンに「現在機材トラブルが発生しており、VARは適用できません」と表示された。

▽後半10分
・レビュー用モニターが復活。ベンチに説明して通常のVAR運用を再開。場内ビジョンでも再開を報告した。

 佐藤マネジャーによると、今回のトラブルはレビュー用モニターの電源が落ちていたことが原因。コミュニケーションシステムもレビュー用モニターと同じ電源を使用しているため、同システムを通じたVARルームとピッチの交信もできなくなったという。バックアップ用のモニターも用意しているが、その電源も落ちていた。一方、ピッチ脇のモニターを使用しないVARオンリーレビューは問題なく行える環境だったため、後半6分のオフサイドチェックが行われたようだ。

 なお、機材トラブルの原因については審判委員会の管轄ではないため、請け負っているテクノロジープロバイダーが検証するという。佐藤マネジャーは「我々がどうだこうだというところではない」と話し、テクノロジープロバイダーやスタジアム側の調査が進んでいることを明かした。

 もっとも今後も同様のトラブルが発生した場合に備え、審判委員会でも運用方針を整理。ハンドやPK相当のファールなどオンフィールドレビューを行うべき事象が起きた際、VARの介入を行わないのではなく、通常時とは異なるVARオンリーレビューによって引き続き介入する運用を明確化した。

 なお、同様のトラブルの際にはVARオペレーションルーム内のモニターは作動していること、またVARと主審はトランシーバーを用いて交信できることから、映像を見ているVARが主審に対して細かく状況を説明し、その説明をもとに主審がPKやレッドカードといった最終判定を下すという。混乱を避けるため、「少なくともキャプテンや監督に事情をきっちり説明してジャッジをする」(佐藤マネジャー)ことを徹底する模様だ。

 佐藤マネジャーはこうしたトラブル時の運用について「プロトコル違反ではない」と強調。「与えられた環境でベストを尽くす」とした。実際、2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)のシャルケ対マンチェスター・シティで同様のトラブルが発生し、主審は映像を見ずにノーファウルからハンドの反則でPKに判定を変更したケースもあった。

 佐藤マネジャーは今回の緊急対応に理解を示した名古屋と浦和に感謝した上で、「なかなか起こり得ない」事案のなか「VARオンリーレビューの対象事象のみ介入可」とした審判団の判断にも一定の理解を示した。もっとも、今後は異なる運用法に一本化するため、「すぐまた週末に起こるかもしれない」とJリーグ担当審判員に対応法を伝えたという。

 また、VARシステムのすべてが使用不可ではない同様のトラブルでは、今後「VARは適用できません」と場内ビジョンなどに表示することはしない方針を決定。誤解が生じないようにするため、トラブル内容を細かく示す画像の準備も行わないという。

(取材・文 加藤直岐)

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加藤直岐
Text by 加藤直岐

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