指揮官に直訴した長期離脱後初のフル出場…復活遂げた横浜FM小池龍太「これが基準。下回るのであれば僕はこのクラブにいらない」
[10.30 J1第35節 横浜FM 0-0 浦和 日産ス]
昨年1月の右膝蓋骨脱臼以降、1年半以上にわたって右膝の負傷に苦しんでいた横浜F・マリノスDF小池龍太がこの日、J1リーグ制覇を成し遂げた2022年11月5日のJ1第34節・神戸戦(○3-1)以来となる先発フル出場を果たした。「自分から90分やらせてくれという話をしていた」(小池)。チームがリーグ戦6試合勝ちなし、3日前に天皇杯準決勝敗退と大きな苦境に陥った中、志願のフル稼働で守備に安定感をもたらした。
小池は昨年1月の右膝蓋骨脱臼以降、右膝の痛みが続いており、4月には一時復帰を果たしたものの、その後再び戦線を離脱。8月21日の天皇杯4回戦・長崎戦(○3-2)で再びピッチに戻って以降も連戦を避けての起用が続き、先発した試合でもプレータイムは制限されており、慎重な復帰プログラムが設けられていた。
それでもこの日、小池は試合前の時点でジョン・ハッチンソン監督にフル出場を直訴していた。延長戦の末に敗れた27日の天皇杯準決勝・G大阪戦ではメンバー入りせず、フレッシュな状態で迎えた中2日の連戦。天皇杯敗退の影響を大きく意識することはなかったというが、チームを立て直す責任を強く抱いてピッチに立た。
「どの試合の後だからというわけではなく、マリノスとしてやらないといけないサッカー、クオリティーが欠けてはいけない部分で、それを表現できると思ったので、その意思を伝えた」(小池)
これまで慎重な起用を続けてきたハッチンソン監督もその思いを承諾し、途中交代は行わず。小池は「自分自身が90分間できるかどうかという点で、彼も不安が多かったと思う。自分ができるという意思を示したことで、僕への信頼を彼が表現してくれたんだと思う」と指揮官の配慮をくみ取っていた。
また実際、小池が示したパフォーマンスもその覚悟にふさわしいものだった。22日のACLEリーグステージ山東泰山戦(△2-2)に続き、スタートのポジションはボランチ。前半開始早々にDF加藤蓮が負傷交代したのを受けて右SBに回ったが、試合前にイメージしていたというプランはポジションを移して以降も継続させていた。
「僕がボランチに入ることで何かが変わるわけではないし、常にマリノスのサッカーを体現するところでは、より多く前線の選手にボールを預けること、その選手たちがクオリティーを示すこと、そこに対するサポート、切り替えの強度、質でマリノスのほうが上回らなきゃいけないという気持ちで入った」(小池)
相手のプレッシングを受ける場面では積極的な動き直しでビルドアップを助け、守備では常に先手を取るポジショニングで危険なシーンを作らせず、さらにMF喜田拓也が不在のチームはピッチ上の統制力に欠ける中、周囲への指示を通じた確固たるキャプテンシーでも存在感を発揮。その結果、J1残留に最低限の結果と言える0-0のドローに導いた。
試合後、報道陣の取材に応じた小池は「こういう疲れている時はどこか緩みが出てしまったりして、結果が出ないというのが自分たちにとって苦しいこと。そこの集中力をどれだけ保たせるかが僕の役割だと思っていた。そこは最後まで集中力を高めることで失点をゼロに抑えられた」と手応えを口にした。
もっともその一方、小池は「勝ち点3以外いらないという気持ちだし、勝てなかったのが全て。勝ちを求めて応援しにきてくれていると思うので、自分たちも勝ちで応えないといけないのが全て」とも口にしており、結果への満足はなかった。直近2試合で続いた複数失点に歯止めをかけたはしたが、マリノスらしい“アタッキングフットボール”の取り組みは停滞中。残る公式戦7試合での復権に意気込みを示した。
「勝つために失点をなくすのは当たり前で、その準備段階としてステップは踏めた。あとはどういう攻撃で相手を上回るか、どうやって勝っていくかをこの1週間かけて改善していけるか。やっとそういう緩みが守備で出なくなったけど、攻撃で相手陣地で不用意なミスもあったし、そういうところのクオリティーはマリノスらしくないし、マリノスであってはいけない。そこで勝ち点3につながらなかっただけなので、それを次に改善して、改善して、これがマリノスだよねという形で(シーズンを)終わりたい」(小池)
自身の約2年ぶりというフル出場にも「優勝した時に以来の90分間でしたね。感触としてはやっと戻ってきたかなと思う」と一定の感慨は口にしつつも、「やっと戻ってきたなという感触と、まだまだ戻さなきゃいけないところ。思ったよりメディカルスタッフ、コーチングスタッフが喜んでくれているという喜びが自分のことよりも大きかった」と冷静に語った小池。「これが基準だし、下回ってはいけない。下回るのであれば僕はこのクラブにいらない。それだけ。僕が出る理由はそこにしかない」。復活を印象付ける一戦でのパフォーマンスにも妥協を見せず、頼もしい表情で残りのシーズンを見据えていた。
(取材・文 竹内達也)
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昨年1月の右膝蓋骨脱臼以降、1年半以上にわたって右膝の負傷に苦しんでいた横浜F・マリノスDF小池龍太がこの日、J1リーグ制覇を成し遂げた2022年11月5日のJ1第34節・神戸戦(○3-1)以来となる先発フル出場を果たした。「自分から90分やらせてくれという話をしていた」(小池)。チームがリーグ戦6試合勝ちなし、3日前に天皇杯準決勝敗退と大きな苦境に陥った中、志願のフル稼働で守備に安定感をもたらした。
小池は昨年1月の右膝蓋骨脱臼以降、右膝の痛みが続いており、4月には一時復帰を果たしたものの、その後再び戦線を離脱。8月21日の天皇杯4回戦・長崎戦(○3-2)で再びピッチに戻って以降も連戦を避けての起用が続き、先発した試合でもプレータイムは制限されており、慎重な復帰プログラムが設けられていた。
それでもこの日、小池は試合前の時点でジョン・ハッチンソン監督にフル出場を直訴していた。延長戦の末に敗れた27日の天皇杯準決勝・G大阪戦ではメンバー入りせず、フレッシュな状態で迎えた中2日の連戦。天皇杯敗退の影響を大きく意識することはなかったというが、チームを立て直す責任を強く抱いてピッチに立た。
「どの試合の後だからというわけではなく、マリノスとしてやらないといけないサッカー、クオリティーが欠けてはいけない部分で、それを表現できると思ったので、その意思を伝えた」(小池)
これまで慎重な起用を続けてきたハッチンソン監督もその思いを承諾し、途中交代は行わず。小池は「自分自身が90分間できるかどうかという点で、彼も不安が多かったと思う。自分ができるという意思を示したことで、僕への信頼を彼が表現してくれたんだと思う」と指揮官の配慮をくみ取っていた。
また実際、小池が示したパフォーマンスもその覚悟にふさわしいものだった。22日のACLEリーグステージ山東泰山戦(△2-2)に続き、スタートのポジションはボランチ。前半開始早々にDF加藤蓮が負傷交代したのを受けて右SBに回ったが、試合前にイメージしていたというプランはポジションを移して以降も継続させていた。
「僕がボランチに入ることで何かが変わるわけではないし、常にマリノスのサッカーを体現するところでは、より多く前線の選手にボールを預けること、その選手たちがクオリティーを示すこと、そこに対するサポート、切り替えの強度、質でマリノスのほうが上回らなきゃいけないという気持ちで入った」(小池)
相手のプレッシングを受ける場面では積極的な動き直しでビルドアップを助け、守備では常に先手を取るポジショニングで危険なシーンを作らせず、さらにMF喜田拓也が不在のチームはピッチ上の統制力に欠ける中、周囲への指示を通じた確固たるキャプテンシーでも存在感を発揮。その結果、J1残留に最低限の結果と言える0-0のドローに導いた。
試合後、報道陣の取材に応じた小池は「こういう疲れている時はどこか緩みが出てしまったりして、結果が出ないというのが自分たちにとって苦しいこと。そこの集中力をどれだけ保たせるかが僕の役割だと思っていた。そこは最後まで集中力を高めることで失点をゼロに抑えられた」と手応えを口にした。
もっともその一方、小池は「勝ち点3以外いらないという気持ちだし、勝てなかったのが全て。勝ちを求めて応援しにきてくれていると思うので、自分たちも勝ちで応えないといけないのが全て」とも口にしており、結果への満足はなかった。直近2試合で続いた複数失点に歯止めをかけたはしたが、マリノスらしい“アタッキングフットボール”の取り組みは停滞中。残る公式戦7試合での復権に意気込みを示した。
「勝つために失点をなくすのは当たり前で、その準備段階としてステップは踏めた。あとはどういう攻撃で相手を上回るか、どうやって勝っていくかをこの1週間かけて改善していけるか。やっとそういう緩みが守備で出なくなったけど、攻撃で相手陣地で不用意なミスもあったし、そういうところのクオリティーはマリノスらしくないし、マリノスであってはいけない。そこで勝ち点3につながらなかっただけなので、それを次に改善して、改善して、これがマリノスだよねという形で(シーズンを)終わりたい」(小池)
自身の約2年ぶりというフル出場にも「優勝した時に以来の90分間でしたね。感触としてはやっと戻ってきたかなと思う」と一定の感慨は口にしつつも、「やっと戻ってきたなという感触と、まだまだ戻さなきゃいけないところ。思ったよりメディカルスタッフ、コーチングスタッフが喜んでくれているという喜びが自分のことよりも大きかった」と冷静に語った小池。「これが基準だし、下回ってはいけない。下回るのであれば僕はこのクラブにいらない。それだけ。僕が出る理由はそこにしかない」。復活を印象付ける一戦でのパフォーマンスにも妥協を見せず、頼もしい表情で残りのシーズンを見据えていた。
(取材・文 竹内達也)
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